/// 12.元クラスメートの近況
サフィさんベットにうつ伏せで寝転がり、足をバタバタさせて布団に顔をうずめていた。
そして僕はベットの近くに椅子を置くと、ベットに座る柏木さんに話しかけた。
「じゃあ・・・気を取り直して、色々ききたいんだけどいいかな?」
「はい!柏木加奈(かしわぎかな)!17歳です!趣味は恋愛小説を読むこと!仕事は占い師やってます!それなりに稼いでます!上から88、65、89です!経験はありませんが、どうぞよろしくお願いいたします!」
どうしよう・・・頭いたい・・・まるでエッチなビデオの導入部分のような返答をされた。あ、見たことないけどね?イメージです。
「ごめんね。聞きたいのは、あっ柏木さんの近況とか一部聞きたいことも聞けたけど・・・そうだよね。僕も詳しく話してなかったもんね。先に話しておくべきだったよね・・・」
「私なにかやっちゃいました?」
僕はまず話を聞くよりも、自分の事から話した方が早かったことに気が付いた。
簡単にではあるが、自分の事やサフィさんのことを柏木さんに説明した。
「・・・で、今の事情がわかってないから、まずは僕がどのような感じに伝えられているのかと、勇者パーティやクラスメートがどうなってるかを聞きたいかな?」
「な、なるほどですね・・・」
柏木さんは自分の見当違いの返答をしたことに顔を真っ赤にさせつつも、分かる範囲での近況を話してくれた。
世間に流れている話では、僕は、勇者パーティと火竜の激闘のさなか、傷ついた面々を癒すように僕の力が覚醒して傷を治したと思ったら、火竜に八つ裂きにされ死んだ英雄という扱いになっているらしい。
その後、奮起した面々が火竜を打ち取り、国に戻ったという流れのようだ。
暫くは僕は英雄視されていたようだが、1年近く経った今では誰も覚えてないとか・・・なんでも旅の途中は性格がひどかったとか、最後に奇跡を起こしたのは偶然だったとか、依頼にも一緒に行かずに娼館に行っていたとか、そのお金を無心していたとか・・・
とにかく僕の素行が悪かったような噂がでまわっており、それを勇者がそんなことはない!と否定する三文芝居があったらしい。
それで勇者の好感度がぐんぐん上昇していって今や次期国王様というのが現状で。。
なんだそれ・・・呆れたがまあやりそうではあった。サフィさんは「ちょっと勇者殺してくる!」というので必死でとめた。というか抱きしめて宥(なだ)めた。
柏木さんは泣きながら「大川くんはそんなことしないのにね」と言ってくれたので、僕はかなりキュンときてしまった。僕も実はチョロいのかも・・・
とにかく勇者はもうすぐ姫と婚約、半年後には結婚して王様になると。
他の元勇者パーティメンバーも、それぞれが希望に合ったギルドのトップになったりなど、良い暮らしが確約されているといったところのようだ。
元クラスメートについては、当然のようにバラバラで能力にあった職についているらしい。
あの朝倉については、今や神官長として教会トップで聖女扱いされてるとか・・・そのことを話す柏木さんはちょっと怖かった。
肝心の佳苗(かなえ)であるが、錬金術ギルドにスカウトされるも拒否、勇者から妾にと打診があったがそれも拒否。おかげで半ば追放のような冷遇対応をされていたようだ。
結局、王都内の外れにあるさびれた孤児院で子供の面倒を見ているようで、援助も少なくやりくりが大変という話は聞いているとのこと。
他にも何人かの女子がその孤児院で一緒に子供たちの面倒もみながら、金策をしてなんとか生活しているとか・・・これは、一度様子を見に行かなくてはと思い、その問題解決が当面の僕の目標となっていた。
その後、精神的にも疲れた僕はお風呂に入るのだが、いつものようにサフィさんの追撃と、柏木さんまで乱入してきて、その大人しそうな顔に似つかわしくない凶暴な胸から目を離せず、僕はあっさりと一線を越えてしまった。夜は夜で3人で頑張ることになったけどね・・・
◆◇◆◇◆
その日、遅く起きた僕は、隣に全裸で寝ている二人を眺めていた。
いそいそとベットを降り、身支度をした。その音で目が覚めてしまったのか、サフィさんは体を起こした。
そして、柏木さんも体を起こすが、胸元は布団で隠していた。どちらも素晴らしく目の保養となった。
「おはようタケル!」
「おはようございます。タケルさん」
「うん。おはよう。サフィさん、加奈」
二人は照れているようだ。昨日の夜、いたしている際に、柏木さんから名前で呼んでとお願いがあった。「加奈」と呼びかけると顔を真っ赤にしていた。当然僕も真っ赤になってしまう。恥ずかしいよね。
もちろんサフィさんも黙っているはずもなく「俺もいつまでもさん付けで呼んでんじゃねー!」と言われ「サフィ」と呼んでみたら予想以上に顔を赤くしていた。その表情に僕はさらに頑張ってしまったのは仕方のないことであろう。
結局サフィさんは普段はさん付けしてくれとお願いされた。やはり照れるらしい。
「タケル!今日はどうする?」
「あ、防具買いに行かなきゃね」
「え、あ、ごめんねタケルくん。昨日私が邪魔しちゃったよね」
加奈が謝ってくるので「大丈夫、時間はたっぷりあるからね」と慰めたら危うくまた時間をロスしてしまいそうになったので、二人に身支度をするように伝えた。
堂々と着替えるサフィさんと、恥ずかしそうに着替える加奈が対照的でまた良かった。
とりあえず、と宿の1階の食堂で軽く朝食を頂いてから『王都総合魔道センター・南出moreー瑠』の2階にやってきた三人は、男女に分かれてほしいものを物色していった。
加奈は特にほしいものは無いようで、サフィさんと一緒に、友好を深めるといっていた。今度何かプレゼントしなきゃな。と思っていた。
そして昨日も見ていた全魔法体制(強)のローブを手に取って見た。それは黒いローブに金の刺繍が施された僕の心に何かが響く、そんなローブであった。
値札を見ると400万エルザということで、全魔法体制(強)がついている割には安いかな?と思っていた。
念のため【完全鑑定】を発動してその効果を確かめる。
魔防ローブ(黒)
守り +5%
付与 全魔法耐性(強)
防御としてはいまいちではある。だがそもそも防御を必要としない僕には、魔法耐性の方が重要である。
本当は何着か買う予定だったけど・・・買っちゃおうかな。他のはまた稼いだ時でいいだろう。
そう思ってそのローブを手に持ったのだが・・・
「おい!それは俺が先に見つけたんだぞ!勝手に持ってくなよ!お前には似合わねーよ!」
「そーだそーだ!もったいねー!」
あー僕やっぱり呪われてたりするんだろうか・・・そう思って嫌でも覚えてしまった声の主に振り返る。
当然のごとく前川&稲賀のカップルである。
「相変わらずラブラブですね」
「おいこら!」「ふひっ」
今度は意識して言ってみた。そして稲賀・・・反応がおかしいよ。
あと二人して魔法使わないだろ・・・剣持ってローブとか似合わないよ・・・あー嫌がらせなのか・・・
ツカツカとそばまで近づいてきた前川は「よこせっ!」と乱暴にローブを奪い取る。
流れるような動きで値札をみて・・・おや?前川の様子が・・・おかしいぞ?
「よ、よく見たら・・・俺はこんな安物じゃ満足できない体だったわ!精々こんな安物で頑張れよ!おい!行くぞ直人!」
「あ、義男さん待ってくださいよー♪」
あーうん・・・会計行くか・・・
今度こそ無事黒のローブを手に入れた僕は、前方からゆっくりと近づいてくる、ゆるふわピンクコーデに変身させられた加奈と、満面の笑みでサムズアップしているサフィさんと合流するのだった。
◆◇◆◇◆
一旦、元の服に着替えた加奈を含む三人は、店内をぶらぶらしつつ時間をつぶし、夕食を食べてから宿へ戻った。
そして今、再びサフィさんに着せ替えられた加奈が、恥ずかしそうにこちらをチラ見ている。
「サフィさん・・・これ恥ずかしいです・・・」
「いいじゃん!これでもっとタケルに可愛がってもらえるぞきっと!」
「そ・・・そうですか?それなら、嬉しいな・・・にゃん♪・・・やっぱり恥ずかしいです~!」
僕は何を見せられているのだろうか・・・なにやら女の子の秘密の趣味を覗き見ているような、背徳感にもにた感覚に陥っている。
お風呂には少し時間が早いので少しだけ椅子にすわって一休みしようとしていたら、突然着替え始めた二人。
せめてこちらに確認を取ってから着替えてほしい。
百歩譲って「どうですか?」とか感想を聞いてきてほしい。
先ほどからチラチラとこちらを窺いながら様子を見ている。
にゃん♪・・・だと・・・
こちらを横目で見ながら顔を赤く高揚させ、放ったその一言に、僕はもう我慢することはできなかった。
結局、早めのお風呂と早めの就寝になってしまった。
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