謝る人

葦原さとし

 

駅のエレベーターに乗り、「▶◀」ボタンを押した。

ドアの閉まり際、外から駆け寄って来た人が、慌ててボタンを押した。

ほぼ閉まりかけたドアがゆっくり開く。外の人と目が合った。

「…すみません、すみません」外の人は一瞬立ち止まり、頭を下げる。

わたしは軽く会釈し、道をあけた。

「すみません、ホントすみません、」その人はエレベーターに乗ってからも、謝り続ける。

「…どうか、お気になさらずに、」

わたしは軽く振り向いて声をかけ、そのまま開いたドアから外に出た。


些細な事かも知れないが、初めての体験だった。

あの人は余程エレベーターで怖い体験でもあったのだろうか。


それとも、私の顔がそんなに怖かったのか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

謝る人 葦原さとし @satoshi_ashihara

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る