吾輩が猫だった時

鈴木魚(幌宵さかな)

吾輩が猫だった時

「我輩が猫だったとき」

 叔父は、幼かった僕にそう言った。

「それはそれは幸福だった」

「人間は幸せじゃないの?」

 僕が聞くと叔父は、猫よりも立派な口ひげを撫でながら、

「人間は楽しいが、なかなか苦しみも多い」

 叔父さんは遠くを見つめた。

「ただ、マグロの刺身をたらふく食べられることは大きな幸せだ」

 叔父が涎を飲み込むと、喉が猫のようにグルルと鳴った。

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吾輩が猫だった時 鈴木魚(幌宵さかな) @horoyoisakana

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