第5話

「シャドー!これに行くよー!」

「お、おう」


若干気持ちが下がり気味を俺は、フランが持ってきた依頼書を確認した。


-- 北東に4キロの場所にゴブリン村を発見。

-- 規模はおそらく50匹程度 報酬

-- 1,000,000$

-- 推奨ランク C


「おい」

「なに?」

「いきなりランクCのなんて持ってくるなよ。自殺願望持ちかよ」

「えっ?だってゴブリンだよ?瞬殺じゃん?」


俺はハンマーで打ち抜かれたような衝撃を受けた。だめだ。この脳筋女をなんとかしなければ……


「戻してきなさい。いやいいから。ここに50匹って書いてあるでしょ?いや無理。マリさんだって困ってるでしょ?いいね。戻すの!えっ?ちょっとフランはなんでずっと小首傾げてるの?いや可愛いけど……こら!喜ばない!あーー!もうっ!……マリさーん!この娘にこの依頼のこと教えたげてー」


結局、受けることになってしまった。


マリさんは難易度について詳しく教えてくれた。そもそもCランクの依頼はFランクの俺らには受けれないことも力説してくれた。優秀な受付嬢としてしっかり務めは果たしていると思われる。


しかし詰めが甘かった。


「シャドーね、えげつない魔法使うのよ!すっごいの!マジヤバだから!さくっと片付けらたマリさんのポイントもゲットでしょ?」


そんな言葉にほだされて「そうね」と許可を出しやがった。いや出してしまわれた。ポイントってなんですかね?やっぱりノルマとかあったりしてお給料とかにも反映されるのですかね?フランは何でそんな裏事情っぽいことも知ってるんですかね?脳筋じゃなかったんですかね?そしてマリさんは俺らの安全より自分の給料なんですかね?


先ほどから死んだ目をしながらネガティブシンキングをしている俺を、半ば引きずるように依頼の場所へと歩く二人。


「よし!見えてきたね」


深い森が目の前には広がっている。そして明らかにゴブリンが木陰からチラチラとこちらを警戒してみている。

警備員っすかね?ごくろーさんです。このまま待機していただいてよいっすかね?僕ら帰るんで。


「よし!こっそり帰るよ?」

「なんで?」

「いや見ろよ。あの期から様子窺ってるのだけで30匹ぐらいいるだろ?奥にもデカイ家っぽいやつ建ってるだろ?あれどう考えても倍以上いるだろ。ほらっ!家からワラワラ出てきた!お願いだからさー、たまには俺の言う事も聞いてほしいんだわ」

「ほんとだ!出てきた!これは逃げられないね!やっちゃおう!」


なんでだ。さっきはマリさんに効果的なプレゼンして説き伏せてただろ。なんで俺に対しては全部雑なんだ。そして突っ込むことしか考えないんだ……信頼の証か?

いやいーよ!そういうのは!仕方なく俺は、目の前に盾を構え守ろうとしてくれているフランの後ろで、魔力を高める儀式に取り掛かった。


「はぁ……『闇の死者よ……俺の怒りの波動に応えその姿を示せ!怒りの爆風アンガーテンペスト』……あっやばっ……」


体内の魔力が高まり、何かがごっそり抜け落ちる。

手元に集まったその力を一気に開放する。そして放たれたのは巨大な竜巻。俺の怒りに任せたその攻撃により、その巨大な森が全て切り刻まれていく。

そして残ったのはもう見るも無残な木々とゴブリンの惨殺死体であった。


見渡す範囲、取りこぼしは無いようだ。そりゃそうだろう。

そして俺はよろよろと力なく倒れそうになる。意識が朦朧としてきた俺はフランに引きずられながらギルドへと帰っていった。


そして俺は、『ゴブリン殺しの中二病使い』という不名誉な二つ名がついたのであった。


まあ当面はフランと折半したこの金でゆっくりした。

そんな冒険者生活一日目であった。

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