第2話
「OKOK。自分を見つめなおそう」
教会から意識が戻ってきた俺は、後ろに並んでいたフランにその場を譲り、近くの森まで歩いてきた。ここは俺が一人になりたい時の癒しスポットだ。邪魔は入らないだろう。
まずは現状把握が大事だ。
俺は農家の次男。田中次郎。でも死んだ。ここまではいいだろう。
そして転生して孤児として孤児院『ゆとりのゆりかご』……なんだよこの名前……ゆとりなんて無かっただろ常にジリ貧だっただろ。まあいい、そこに転がり込んだ。シャドー・テンペ……くっ……シャドー・テンペスト・ドラゴンとして生まれ変わったと……
どうしよう。もう死にたい……
「いや、また死んでたまるか!せっかく新しい生を受けたんだ!全うしてやる!」
とりあえず14になったからには孤児院は出なきゃならん。すると俺は冒険者としてやってくぐらいしか思いつかん。
孤児院出身だったらよっぽどのレア職業(ジョブ)を貰えない限り兵士とかにはなれないからな……いや待てよ!意外にこのの『中二病』なんてのもレアですごい職業(ジョブ)なのかも……ないな。ワンチャンもないな。
まあどの道、実はレアで便利な職業(ジョブ)でしたってんなら冒険者としても食っていけるだろう。
次にスキルだ。『
「まずは……ためすしかないね……」
そして俺は、周りに誰もいないのを確認し、ぼそりとつぶやいた。
「『俺の中の魔力がー』うーん」
何も起きなかった……
「もう一度『俺の中の邪悪なる力よ!』……うむ」
今度は両手を上げてポーズを決めてみた。がやはり何もならなかった。
これは繰り返し練習しなくちゃならんパターンか?それとも、ピンチの時とかに発動するとか?
きっとそうに違いない!そう思って俺は森の奥へと入っていった。
途中で枝を折って武器にすることも忘れない。この先にはゴブリンが少しだけウロウロしているのは知っていた。
計画通りに一匹のゴブリン。はぐれゴブリンと遭遇した。
何時もなら逃げる俺であるが、今日は違う。何が違うかは分からないが違う。
「よし!『俺の中の魔力が目覚めお前は爆死』」
枝を振り回してポーズを決める。
そしてその俺に向かってゴブリンは躊躇なく襲い掛かってきた。
「ギャーーー!!!」
ボロボロであった。なんとか逃げ帰った俺は、先ほどの安全な森の中で泣きながらセリフとポーズを繰り返すのであった。
◆◇◆◇◆
あれから一時間。俺は、ただひたすらに研鑽を積んでいた。
セリフに力を籠め、指先にも神経を尖らせたポーズを全身全霊で繰り返していた。
しかし、一向に変化はなくただただ恥ずかしさに顔が上気するだけであった。一瞬この顔に集まる熱は魔力!と思ったが何も起きないところを見れば魔力ではないことは明らかであった。
それでも俺はくじけない。後がない。孤児院を追い出されれば冒険者としてやってく以外は、浮浪者としてさまようぐらいしかないのだ!
ゆえに・・・
「『俺に力を!すべてをなぎ倒す漆黒のマナの僕(しもべ)達よ!』おお!」
これは!
叫びながらポーズを決めると、初めて俺の中で内なる何かが込みあがってくる。恥ずかしさとはまた異質の何か。これは……さらに闇ワードを叫べば人生初の魔法を……
そう思って
恥ずかしいのだが一応は初魔法。できればそれなりに納得したワードで決めたい!やはり修練の賜物で身につけた俺の新たな力!
そう思って俺は、「ぷぷ」っという音に反応して何気に辺りを見渡す……見渡す……
「ピャーーーー!!!」
俺は気絶しそうになる意識をこらえながら腰が砕けて尻餅をついた。
「や、やあ……何をしてるのかな?」
木の影から出てきたのは顔を真っ赤にしながら目に涙を浮かべてフランがこちらへ歩いてきたのだ。
俺は思った……誰か俺を優しく殺してくれ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます