6. [配信回] ボクがやりたいこと

【罰ゲームは】某所で雑談質問配信【もう嫌です】


「救くんちゃんのぷぎゃぷぎゃタイム。はっじまっるよ~」


 "ぷぎゃああああああああ!"

 "ぷぎゃああああああああ!"

 "ぷぎゃああああああああ!"

 "ぷぎゃああああああああ!"

 "ぷぎゃああああああああ!"

 "ぷぎゃああああああああ!"

 "ぷぎゃああああああああ!"

 "本当にやってて草"

 "羞恥配信たすかる"

 "これで明日からも頑張れる"

 "はすはす"


「いっそ殺して」


 どうしてボクがこんなおかしなことをやってしまったのかと言うと、前回の配信の罰ゲームだ。

 友達とテレビゲームをやったんだけれど、運ゲーで負けちゃった。


 でも今思い返してみると何か変だった気がする。

 ボクの素の運が悪いのは知っていたけれど、そうだとしてもツキが無さすぎた。テレビゲームだから純粋な運任せだと思い込んでたけれど、もしかして騙されてたんじゃないかな。だってボクに悟られずにゲーム状況を操れそうな人が一人だけいるじゃないか。


 後でかのんを問い詰めないと。


「罰ゲームはもう終わり、いつも通りやるからね」


 "ええええええええ!"

 "ええええええええ!"

 "ええええええええ!"

 "ええええええええ!"

 "もっとクレメンス"

 "最後まで続けようよ"

 "かわいいよ!"

 "ぷぎゃぷぎゃタイムやりなさい(真顔)"


「やらないったらやらないの!」


 誰に何を言われようともこれ以上は絶対にやってやるもんか。

 精神的に本当に死んでしまいかねない。


「今日は雑談配信だよ。でもどうせ皆罰ゲームの話しかしないだろうから、これまでに沢山もらった質問の中から答えることにするね」


 ラストダンジョンを攻略してからもボクは配信を続けていた。


 やって欲しいっていう希望が多かったからっていうのもあるけれど、ボク自身がいつの間にか配信するのをかなり楽しくなっちゃってて、配信していないとなんとなく物足りなかったから。コミュニケーションが苦手だったはずなのに、皆の前に出たいだなんて思えるようになったのが不思議な感じ。もちろん対面はまだまだ恥ずかしいけどね。


 "はいはいはーい! その前に質問! 救様が今いるところって何処?"


 やっぱり聞かれちゃうかぁ。

 言いたくないな。


「言わなきゃダメ?」


 "えっ"

 "言えないような場所なん?"

 "かわいいぬいぐるみすげぇ量あるし、友1の家とか"

 "言えない……お泊り……これは!!!"

 "匂わせ(ド直球)"

 "救くんちゃんにもついにそういう話が"


 何を勘違いしてるんだろう?


 "これ素で分かってないですね"

 "ピュアか(ピュアです)"

 "この手の話を誰も教えないからアカン"

 "救くんちゃんも触れちゃダメってことだけは察してるのかいつもスルーだもんな"

 "そろそろ手取り足取り教えなきゃ(ゲス顔)"

 "救くんちゃんが恋人の家にお泊りしてるって思われてるんですよ~"


「ぷぎゃっ!? ボク恋人なんていないよ!」


 どうしてそういう話になっちゃうのさ。

 確かにこの部屋はぬいぐるみ沢山で可愛らしい感じだけれど、ボクのせいじゃないんだよ……


「ここはボクの部屋だよ。あのぬいぐるみはおねえちゃんが勝手に置いてくるの」


 "おねえさま!?"

 "自室!?"

 "ここが救くんちゃんのお部屋なの!?"

 "かわいい"

 "でもこれおねえさまに魔改造されてるっぽいな"

 "[シルバー姉] 自信作"

 "あねwww"

 "救様ってほとんど外出してるし、姉の部屋みたいなもんじゃんwww"

 "もしかして近くにご家族が?"

 "おねえさまもいるの!?"

 "[シルバー姉] いるよー"

 "ちょっwww"

 "おいwww"

 "手だけチラ見www"


「おねえちゃん、邪魔しないでって言ったでしょ」


 この部屋で配信するって言ったらおねえちゃんが絶対に近くで見てるって譲らなかったんだ。

 家族に間近で見られながら配信するなんてとても恥ずかしい。


「おねえちゃんの話を始めるとそれだけで配信終わっちゃいそうだから、質問の回答を始めちゃうね」


 これまでも悪ふざけのせいで予定していたことを何もやらずに配信が終わっちゃったことがあって申し訳なかった。だってその予定していたことを楽しみに配信を見ようと思ってくれていた人がいるはずだからね。

 だから今回はおねえちゃんネタを引っ張らずに無理やりにでも当初の予定だった質問回答に流れを戻しちゃった。おねえちゃんネタはまた今度ね。


「じゃあ最初の質問はこれ」


 あらかじめどの質問に答えるかは決めてあったので、それらを順番に回答して行く。


「ダンジョンの外でスキルが沢山使えるようになってから救さん・・は何か新しい事をやりましたか?」


 ラスボスクリア後の変化した世界についての質問がそこそこ来ていたので、その中から一つピックアップしてみた。


 "はいダウトー"

 "質問内容を改変するのは良くないと思います!"

 "救さんだなんて呼ぶ人がいるはずないんだよなぁ"

 "救くんちゃんか救様かぷ神様のどれかでそ"

 "自分が読みたくないからって想いの籠った質問を変えるなんて"

 "救様はそんなことをする人じゃないって信じてたのに"


「ぷぎゃ!? か、かか、変えてなんか無いよ!」


 "わかりやすい"

 "このポンコツ具合ホントかわいい"

 "相変わらず素の感じで反応してくれて嬉しい"

 "動揺を全く表に出さないようにも出来るはずなのにな"

 "ある意味あざとい"

 "でもわざとじゃないところが良い"

 "コミュ障が完全に治るにはまだまだ時間がかかるか……"


 だって自分の名前をそんな変な風になんて呼ぶの恥ずかしいもん。

 そのくらいは許してよ。


 この話は慌てて弁解とかしようとするとドツボにはまって大変なことになるってもう知っているからスルー推奨だ。

 なので気にせず回答することにする。


「答えだけど、何もやってないよ。元々使えるスキルだけで十分だからね。そもそも外で攻撃スキルとか使う機会無いよね?」


 建物を壊すとか、道路の汚れを水で流すとか、使えるシーンなんて限定的だと思う。

 空を飛べたり高速移動したり認識阻害でこっそり移動したりくらいで十分だよ。


 "たしかに"

 "『攻撃』スキルだもんな。攻撃したいやつなんて犯罪者くらいだろ"

 "色々と有効活用は出来ているらしいけれど、普通に生活してたら要らないわな"

 "それより救様には元々使えるスキルの方で大きな問題があると思う"

 "外での利用を禁止するスキルって奴だろ"

 "犯罪に繋がりやすいからって免許制にするとかって法律を作ろうとしているとかなんとか"

 "どうして救様に問題があるの?"

 "認識阻害もその中に入ってるから"

 "あ~ストーキングとかし放題だもんな"

 "女性視点だと滅茶苦茶怖いな"

 "気付いたら自分の家の中にまでついて来られてるかもしれないんだろ"

 "ヤバすぎ"

 "じゃあ救様も自由に隠れられなくなる?"

 "外出歩けないじゃん"


「本当だよ……ボクひきこもりになっちゃう」


 人から隠れずに外を歩くなんてとんでもない!

 そんなことしたら大騒ぎになって皆がボクのところに寄って来て感謝してくるんだ。地獄だもん。


 "ダンジョン引きこもり禁止法案も作って貰おう"

 "それだ!"

 "救様特別法"

 "救様以外に適用しても良いだろwww"

 "長期間のダンジョンアタックはメンタルに支障をきたすって言われてるし、アリだと思う"

 "【悲報】救様逃げ場所無くなる"

 "自宅ひきこもりニートになっちゃう"

 "大丈夫大丈夫。自宅にはあの人がいるから"

 "【シルバー姉】お散歩わくわく"

 "家にも逃げ場所無くて草"

 "さぁ救くんちゃん、外に出るんだ!"


「嫌だよ! だったら免許ちゃんともらって隠れて外に出るもん! だからおねえちゃんも手をわきわきさせないで!」


 これでもボク、騒ぎにならないように時々頑張って皆からお礼を受け取ってるんだよ。

 それなのにいざ姿を現しながら街に出ようとするとパニックになっちゃうんだもん。

 だから恥ずかしいのもあるけれど、危険だから出られないってのもあるんだ。


 どれだけお礼を受け取れば皆満足してくれるのだろう……


「これ以上続けてもボクを無理矢理外に出す方法の話にしかならなそうだから次の質問に移るね」


 次は皆が気になっているあの話だ。


「芙魏野村の国王になる予定はありますか?」


 ボクが買い取ったラストダンジョンが存在する村のこと。

 歴史的にも実用的にも価値が高い土地を買い取って管理するっていうのは良いお金の使い方だと思ったんだ。管理は他の人に任せているけどね。

 でも完全に任せっぱなしってのはマズかったようで、名前をつけるのも任せちゃったら酷い事になっちゃった。


「国王って意味が分からないんだけど。せめて村長じゃない? それでもなる予定は無いけれど」


 何をどう考えたらボクに政治的な話が出来ると思うのかな。

 コミュ障が政治家とか絶対に向いて無いよ。


 "国として独立するんじゃないかって言われてるんだよ"

 "救様の功績を考えたらありえる"

 "ぷぎゃ王国"

 "ぷ神教の聖地"

 "移住希望者だらけで土地が足り無さそうw"

 "でもぷ神様が王様やってるのはどうなのさ"

 "兼任でええんやない?(適当)"


「全く皆ったら冗談ばっかり、ボクが国王だなんてあり得ないよ」


 そんな簡単に国なんて作れないことくらい知ってるんだからね。


 "[キング・シーカー] 大統領が合衆国の土地を譲るから建国しないかって言ってるぞ"


「ぷぎゃ!?」


 "[キョーシャ] 女王陛下からもお誘いあり。是非来てくれないか"

 "[パッド] そういえばオーストラリア連邦議会からも似たような相談受けてたわ"

 "[ミタ] あら、それなら南米においでよ。あなたが近くにいると便利なのよね"


「ぷぎゃぎゃ!?」


 え、ちょっと待って。

 いきなり色々なところからお誘いが来たんだけど。

 ボクが関係してない国々からもコメント来てるけど冗談だよね!?

 国ごと丸々譲るとか言ってるコメントあるけれど絶対に嘘だよね!


 いつもみたいに皆が結託してボクを揶揄おうとしているに違いない。

 そうとでも思わなければ怖すぎる。


 国王だなんてありえないもん!


「ええと、怖すぎるからこの話はまた後でね。あ、ボクは村長にも国王になるつもりなんて本当に無いから!」


 これだけはちゃんと言っておかないと後で大変なことになりそうな予感があったので明言しておいた。


 これすらも感謝の流れの一つだとすると、感謝ってカルヴァよりも遥かに怖い。


「じゃあ次! 次の質問! なんか怖くなったからこれで最後!」


 皆は不服そうだけれど、今日は早めに終わらせてもらおう。

 さっきからスマホがひっきりなしに鳴ってるし寒気がするしで忘れたいんだもん。


「これから何をして生きていきますか?」


 実は今回の雑談質問配信はこれを伝えるために開催したんだ。


 ラストダンジョンをクリアして以降、ボクはパレードに参加したり芙魏野村の買い取り作業をしたり挨拶回りをしたりと、後作業に奔走していた。それがひと段落つきそうになったから、これまでボクを応援してくれて支えてくれた皆に、今後のお話をしておこうと思ったんだ。


「まず、配信はずっと続けるよ」


 これはもうすでに皆に伝えてあることだから、特に驚きなく受け止めて貰えた。


「そして学校に通おうと思うんだ」


 ボクは高校三年生の間だけ姿を現して学校に通っていた。

 でもそれも、ダンジョンに籠っている合間に通っているといったレベルの話で真っ当に通っていない。


 学校ってコミュニケーション能力を育める場所だと思うんだ。


 ボクは分身を使って授業だけは聞いて覚えてそれなりの成績を残せたけれど、一番大事な社会性を学べてない。それを一から学ぶために、今度はしっかりと学校に通いたい。


 "学校ってことは大学に行くのか"

 "良いじゃん良いじゃん。ダンジョン漬けよりよっぽどマシだよ"

 "またダンジョンに引きこもりますって話じゃなくて良かった~"

 "救くんちゃん大学デビュー"

 "そうか……大学生なのか……(見た目は良くて中学生)"

 "飛び級かな?"

 "救くんちゃんってどの分野が好きなのかね"

 "文系?理系?"

 "やっぱり帝王学?"

 "国王になる気満々じゃねーかwww"


「あはは、まだ具体的に決めてないんだ。これからゆっくりと考えるつもり」


 でも考える前に、まずは色々なところにお願いしなきゃならないことがあるんだ。


「色々な人にお願いするつもりなんだけれど、ボク変装して通わせてもらいたいなって思ってるの。騒ぎになりすぎちゃうと普通の学生生活じゃなくなっちゃうからさ」


 "あ~それは確かに"

 "救くんちゃんがいる大学なんて倍率えぐいことになりそうだし"

 "救様が人気すぎてまともな授業にならなそう"

 "マスコミとかも集まって来そうだし、色々なところに迷惑かかりそうだもんな"

 "だから他人として入学してこっそり通いたいってことか"

 "そっちの方が自然にコミュニケーションの練習できるだろうし良さそう"

 "そのくらい特例で許してもらえるんじゃね?"

 "んだんだ"

 "でも救くんちゃん、ポンコツだからバレそう"

 "一か月保たない気がするw"

 "ぷぎゃっちゃダメだよ?"

 "その瞬間確定するよなw"

 "新入生をぷぎゃらせるのが流行りそう"

 "口癖ぷぎゃをブームにすれば紛れるさ!"

 "もうブームになりかけてるもんなw"


 確かにボクは失敗して正体バレするかもしれない。

 だから実は皆には敢えてぼかして伝えたんだ。


 ボクは別に大学に入るなんて一言も言ってないからね。


 偉い人にお願いして身分を隠してもう一度学生生活を送りたい。

 家族にそれを相談したら、小学校を勧められそうになって怒ったりもしたけれど、やりたいのはそういうこと。


 ボクが普通になるために。

 もう一度人生をやり直す。


 それがボクがこの先やってみたいことなんだ。

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