第三部
ひたすらダンジョン配信!
1. [配信回] 高千穂ダンジョン に入る前に
「こんにちは! 槍杉救です!」
"こんにちは!"
"良い笑顔"
"ニッコニコでREC"
"よっぽど入りたかったんだなぁ"
"無茶したらまた会議だぞ"
"もっと見たいから無茶しないで!"
"ようやく他の最難関ダンジョンが見られる"
探索者の育成がかなり進んで奥多摩ダンジョンの中層以降にチャレンジ出来る人が増えて来たので、他の最難関ダンジョンも挑戦できるようにまずはボクが説明することになったんだ。
もちろんボク一人で入るのは危ないから今日は仲間がいるよ。
その一人はいつものあのお方です。
「私もいるぜ。よろしくな!」
"すでに狂化モードで草"
"テンション高!"
"救様と一緒のダンジョンアタック久しぶりだからかな"
"しかも肩を並べて戦えるくらい強くなったから嬉しくてしょうがないんだろ"
"いいな~いいな~"
"俺もいつかあそこに……!"
京香さんが楽しそうでボクも嬉しいや。
"あれ、これって最難関ダンジョンの攻略配信だよな"
"遠足に行く直前みたいな雰囲気だぞ"
"救様にとっては遠足みたいなものだから……"
"おやつはいくらまでですか!"
"現 地 調 達"
"普通にアリなんだよなぁ"
"鳥取の芋煮を思い出しちゃった。また食べたい"
"あれに参加してただと!"
"うらやましけい"
コメントが活発なところ申し訳ないけれど、話を進めないと。
今日はもう一人同行者がいるんだ。
「あれ?」
"どうした?"
"いきなり問題発生?"
"まだダンジョンの入り口だろ"
"最難関ダンジョンなら入り口から罠があってもおかしくない気がする"
"こわぁ"
「それは北海道ダンジョンってそうじゃなくて、もう一人紹介するつもりだったんだけど……あ、いた」
どうして全力で気配を消してるのさ。
まるで少し前までのボクみたいだ。
「はい、挨拶して」
「わ、わわわわ、私の事は居ない者として扱ってくださいー!」
「えぇ……」
物凄い距離取られちゃった。
でもかのんが着実に捉えてるから配信されちゃってるよ。
"ぴなこ!?"
"え、マジで!?"
"悲劇の配信者"
"日本人の手のひらがねじ切れた元凶"
"スライム戦での活躍がマジ格好良かった"
"でもぴなこってもう配信しないって言ってなかったっけ?"
「救様にお願いされたんです……」
誘った時に嫌なら断って良いんだよって言ったのに、決死の覚悟みたいな表情になりながら一緒に行くって言い出したんだ。あまりにも悲壮感が漂っていたから止めようとしたのに、決意を変えられなかった。
"お願いされたら断れないよな"
"迷惑をかけた大恩人からのお願い=強制"
"ワイらはもう平気だから気にするなよー"
"むしろ今までごめんな"
"知らなかったとは言え本当にごめん"
"ぴなこは被害者だからあまり気にするなよ"
"そうそう、罪悪感で必死に探索者やってるって聞いたぜ"
"無理したら悲しむ人がいることを忘れんな"
「皆さん……」
ボクからのお願いが強制ってのは納得できないけれど、コメントが特に荒れるようなことは無くて、むしろぴなこさんの味方の雰囲気になってくれたのは良かったよ。
「そうだよ。昔の事は気にしないで楽しくやろうよ」
「ひゃっ!? そ、そそ、そんなことは出来ません! 私はモブおぶモブで結構ですから、救様とは一定の距離を取りますから燃やさないで!」
「ぷぎゃっ!?」
燃やすわけないでしょ!
"あ~これはトラウマになってますな"
"嵌められたとはいえ恋愛トラブルが原因だったからしゃーない"
"救様と一緒に探索だなんて羨ましい!"
"あんな奴が一緒だなんてありえない!"
"なんてことを恐れてるんだろうねw"
"ぶっちゃけ羨ましいとは思うけれど、炎上はありえないって"
"そういうことしちゃダメだって俺らはもう分かってるしな"
「皆さんのお気持ちは大変ありがたいですが、せっかくの楽しい救様の配信を汚すわけには参りませんのでやっぱり私はひっそりと存在感を消しますので忘れて下さーい!」
「忘れないで。ぴなこさんにもやってもらいたいことあるんだから。あ、スキルで存在感消さないの! 隠れないの!」
「止めて―! 私はモブで良いんですー!」
ぴなこさん向きのダンジョンだから誘ったのに、何もしないなら誘った意味が無いんだって。
"誰だこの子"
"昔はもっとあざとかったよな"
"見た目めっちゃ地味だし消えようとするし、本当に元アイドル系ダンチューバーなのかw"
"こっちの方が素なのは草"
"陰キャ系スキル極めまくってるらしいし、生粋の陰キャが無理してたんだろう"
"そりゃあ騙されるわw"
全くもう、どうしよう。
「ぴなこ」
「はいぃ!」
困っていたら京香さんが助け舟を出してくれた。
「救が働けって言ってるんだから」
「何でもやります! さぁ、ご命令を!」
「えぇ……」
ボクが言うのもなんだけど、キャラクターが濃すぎない?
"滲み出る下っ端臭"
"こんな卑屈な娘が無理してアイドルしてたと思うと泣けてくるわ"
"俺は胸が痛くなる"
"共感性羞恥かな"
"やめろ!"
"友達枠じゃなくて信者枠だなこりゃ"
"こんな自己肯定感が低い娘が救様の友達になるだなんて考えられるわけないだろ! いい加減にしろ!"
"それマジで俺にも効くからやめろ!"
"吐きそう"
やる気になってくれたのならまぁ良いか。
とりあえず進めよう。
「それじゃあぴなこさんもちゃんと参加してくれるということで、今日の話をするよ」
今日は宮崎県の高千穂ダンジョンを紹介する配信だ。
最奥ボスは倒さずに、それ以外について攻略ポイントを説明する。
ボスを倒さないのは隠しボスが出てくる可能性があるからだけれど、実はそっちもそろそろ解禁しようかなと思っている。いつまでも避けていたらラストダンジョン攻略なんて出来ないからね。
"高千穂ダンジョンかぁ"
"アクセス悪すぎるんだよ"
"富士山ダンジョンと比べれば楽だろw"
"というより最難関ダンジョンって全般的にアクセス悪い所多くて移動がめんどそう"
"上級ダンジョンは都心に多いのにどうしてなんだろうか"
"山奥とか海とか移動するとかほんひで"
確かに場所は悪いけれど、最難関ダンジョンに挑戦できるほどに強くなればかなり早く走れるから移動にあまり時間かからないよ。それに飛べるようになったらもっと時間短縮になるし。
「高千穂ダンジョンの特徴はトラップだよ」
"トラップ?"
"だからぴなこがいるのか"
"斥候が必要なのね"
"救様だと力業で突破しそうなんだけどw"
もちろんボクならトラップなんて無視して強引に進められるけれど、怪我する可能性があるし他の人の参考にならないから今回は真っ当に攻略して説明するよ。
"あれ、でも粟島ダンジョンもトラップがメインじゃなかったっけ?"
おっと、そう勘違いされちゃうのか。
「粟島ダンジョンは性格が悪いだけでトラップがメインなわけじゃないよ。高千穂ダンジョンはトラップが主役みたいな作りになってるから全然違うんだ。いつか粟島ダンジョンも紹介したいけれど、もうちょっと皆が強くならないと危険だから待っててね」
ボクの感覚的に粟島ダンジョンは国内の最難関ダンジョンの中で一番重傷を負いやすいダンジョンだから、もう少し皆を鍛えないと挑戦させられないんだ。
"前々から粟島ダンジョンに対する救様のヘイトの高さが気になってた"
"どれだけ酷いダンジョンなんだ"
"めっちゃ気になるから早く紹介してもらいたいw"
"早く皆強くなってくれ―!"
それは今後のお楽しみってことで、今日は高千穂ダンジョンを楽しんでよね。
「それで高千穂ダンジョンのトラップだけれど、最難関ダンジョンだけあって即死トラップが沢山あるんだ。絶対に油断しちゃダメなダンジョンだからね」
"油断して良いダンジョンなんてありません!"
"即死トラップだらけって怖すぎ!"
"そんなところを探索するなんて大丈夫なの?"
"ちょっとしたミスで死んじゃうかもしれないなんて止めた方が良いよ!"
"もっと安全なところを選んだ方が良くない?"
「不安にさせちゃったよね。ごめんなさい。でも実はここって最難関ダンジョンの中で一番安全とも言えるんだよ。トラップさえちゃんと判別できれば、魔物の強さが他のダンジョンよりも弱めだから安全に進められるんだ」
そしてもちろんボクはこの中のトラップを完全に把握している。
万が一の確率でミスすることはあるかもしれないけれど、それは他のダンジョン攻略でも同じ話だもん。
それに斥候タイプのぴなこさんを連れて来たから、ボクと彼女の二重チェックでより正確にトラップを見分けられる。
ということを京香さんとか他の人にちゃんと説明して納得してもらってこの配信を始めているんだ。
「早速上層の説明をするね。上層は洞窟型ダンジョンで、ワープ迷路なんだ」
小部屋が沢山あって、その中に他の場所に転移するワープポータルが複数置かれていて、正しい順番でワープしないとゴールにたどり着けない仕組みになっている。
「ワープの中には罠がいくつかあって、その中に転移先が壁の中に指定されていて即死するものがあるんだ」
"いしのなかにいる"
"いしのなかにいる"
"いしのなかにいる"
"いしのなかにいる"
"いしのなかにいる"
ええ、皆どうしちゃったの。
もしかして有名なトラップなのかな?
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