4. 吸収スライムVS日本のトップ探索者達
「よりにもよってこんな日に授与式だなんてな~」
「しょ~がない、勲章の方が別日で良かったって思おうよ」
内閣総理大臣官邸、その外で多くの探索者達が警護をしていた。
守るのはもちろん総理大臣、ではなくて救の授与式だ。
「この日を楽しみにしてたのに……」
「あたしだってそうだよ。わ~救様やっぱりかわいい~」
「家のシアタールームで見たかった」
「え? あんた金持ちなの?」
「いやいや、救様ほどじゃないよ」
「比べる対象がおかしいから」
警備と言えば直立したまま微動だにしないイメージがあるかもしれないが、探索者達は各々スマホで救のぷぎゃ……雄姿を見て楽しんでいた。かといって別に気を抜いているわけではない。命がけのダンジョン探索、常に気を張り続けていたら直ぐに疲れ果ててしまうため、適度にリラックスしながら警戒する術を彼らは身に着けているのだ。
「それにしても、ここら辺一帯を覆う結界とか凄いな」
「シルバ〇アファ〇リーの幹部クラスの人が使っているらしいよ。広い分だけ効果が薄いらしいけれど、それでもこの広さは凄いよね」
ひとえに結界と言っても効果は様々だ。
ダメージを減らすもの、魔物を遠ざけるもの、特殊効果を生み出すもの。今回は効果が薄めの魔物避け結界を広い範囲に張っている。
その理由は敵の『転移』を防ぐため。
探索者が使う転移スキルでは結界が張られている場所には移動できないのだ。某隠しボスのような反則レベルの強さの魔物であればそのルールを破ることもあるが、今回の敵である吸収スライムは探索者のスキルを活用しているらしく、結界で防げることがイギリスの勇者からの情報で分かっている。
では、もし結界が張られた場所に魔物が転移しようと試みたらどうなるのか。
「ターゲット襲来!」
結界に弾かれて、その外側に押し出されるようにして出現することになる。
「きもっ」
「それにでかい。三メートルはあるか?」
事前情報ではスライムの高さは二メートルくらいとされていたが、日本に来るまでの間に成長したのだろう。体積も禍々しさも格段に上昇していた。
「さぁ頼むぜ。悲劇の配信者様!」
「信じてるからね!」
スライムに対峙することになった二人の探索者。
その後ろからもの凄い勢いで小さな影が飛び込んで来た。
「うん、任せて」
今回の対スライム戦で重要な役割を任された女性探索者、ぴなこである。
姿を隠しての急襲は、この場にやってきたばかりのスライムにとっても予想外だったのか、彼女の接近に気付くのが遅れた。その隙にぴなこはあるスキルの有効範囲まで距離を縮めることに成功した。
「ぴいいいいなああああこおおおお!」
ぴなこがそのスキルを放つ直前、スライムはぴなこのことに気が付き、悪田の意志が表に出て来たのか、どす黒い憎悪のオーラのようなものが目に見えてスライムの体を覆い始めた。だがスライムはぴなこを強く意識することなく最速の攻撃で迎撃するすべきだった。ぴなこを意識してしまったが故に間が生じ、ぴなこのスキルが間に合ったのだ。
「集団転移!」
転移よりも遥かに高度なスキル。集団転移。
その名の通り、二人以上の存在を同時に転移させるスキルだ。
たった一人での短距離転移ですら魔力を膨大に使うのだから、二人以上ともなると当然更に多くの魔力を必要とする。
「やった、成功した!」
ぴなことスライムは内陸部にある官邸から海岸沿いの埋め立て地へと転移した。
つまりは長距離転移。
救ですら困難なこの転移を何故ぴなこが成し得たのか。
「たった一回で私のこれまでが無くなっちゃった」
手の平には真っ黒な灰と化し、さらさらと海風に乗って散って行く元宝石があった。
それは魔力を吸収して溜めておく魔力タンクの効果を持つ宝石。
ぴなこはそれに毎日コツコツと魔力を溜め、いざという時に転移で逃げるためにと準備していたのだ。
そしてその宝石をこれまた誰にも言わずに隠しておいたアイテムボックスのスキルを使って異空間に隠しておいた。だからこそ悪田達や中国政府に価値ある宝石を持っていることをバレずにいられた。
もしもぴなこが中国から逃げるためにこの宝石を使っていたら、今日のこの作戦は使えなかっただろう。仮に転移したとしても、転移先で捕まってしまうかもしれないという恐れにより使わなかっただけなのだが、その慎重さがここで役立った。
「後はお願いします!」
ぴなこのひとまずの役割はここまでだ。
この埋め立て地はスライムとの決戦の地として、用意された場所。
多くの探索者がスライムを狩るためにずらりと囲っている。
ここから探索者達の怒涛の攻撃が幕を開ける。
「結界!」
まずは結界を張ってスライムが転移で逃げられないようにする。
「地爆陣!」
「地氷陣!」
「地炎陣!」
地面に設置する地雷系スキル。
それをスライムの転移先の地面にこれでもかと言うほど大量に設置しておいたのだ。
そもそもこのスライムはあらゆる攻撃を無効化するのではなく、あらゆる物を吸収するスライムであると勇者の情報から明らかになっている。
だがそれなら何故このスライムは地面を吸収しないのか。
足元だけは吸収出来ないという弱点があるのではないかという推測の元に考案された作戦だ。
スライムの足元に無数の魔法陣らしきものが浮かび上がり、今にも派手な攻撃が発動しそうな気配がある。
「ダメです効果ありません!」
「こっちもダメだ!」
「発動はしてますので、おそらく吸収されているのかと!」
だが残念ながら足元からの攻撃は全てスライムに吸収されてしまった。
「次!」
このスライムを倒すにあたり、温水を始めとした探索者達はいくつかの作戦を考えて準備して来た。どれか一つでも成功すれば御の字。一つ効かなかったからと言って、ここで怯むことなどあり得ない。
「跳ねろ!」
スライムの足元が急激に隆起し、同時にすさまじい上昇気流が生み出されてスライムの体が高く舞い上がる。
「
そしてスライムを地面に思いっきり叩きつける。
『……!』
スライムのものか、吸収された者達のものか、声にならない叫びをあげる。
僅かながらこのスライムについにダメージを与えたのだ。
だがそのことでスライムの様子が激変した。
「おいおい、マジかよ」
「分かってはいたけれどこれは……」
「この世の終わりかっての」
大地が揺れ、雷鳴が轟き、竜巻が発生し、炎の壁が聳え立ち、氷の杭が降り注ぐ。
これまで吸収した探索者達のスキルの大盤振る舞い。
しかも魔力量やステータスが元の探索者よりも大幅に向上しているため威力が段違いだ。
もちろん攻撃だけではなくて、守備も固めている。それどころか隠蔽系スキルを使って隠れようとするなど、斥候スキルまでも使い始めた。
「臆するな!」
ここにいるのは日本の探索者の中でトップクラスの実力を持つ者達ばかり。
自主的に地獄のぷぎゃみ式ブートキャンプをこなし続けた猛者にとって、
「パーフェクトガード!」
大盾使いの男が完全防御スキルを発動したかと思えば、
「エクスパンドスキル!」
補助魔法使いがその効果を弱めて周辺まで伝搬させる。
効果が弱まってしまったせいでスライムの攻撃をガードするには心許なく、しかも効果を打ち消すタイプのスキルで消される可能性が高い。
「パーフェクトガード!」
「エクスパンドスキル!」
だがその問題は同じ組み合わせを何組も用意することで力づくで解決させた。
「ウィークンマジック!」
「ウィークンスキル!」
スライムへ効果的な攻撃手段を持たない者は、魔法とスキルの効果を弱めるスキルを付与した武器を使い荒れ狂う攻撃そのものへと攻撃を加えて弱体化させる。
「これでも喰らいなさい! この程度なのかしら! ほらほらどうしたの?」
例えば鞭使いのぴゅあな女性がハイテンションで竜巻などに鞭を振るい、その姿が後に拡散されて後悔することとなる。
攻撃側もどうにかしてダメージを与えられないか工夫を重ねている。
「きたきたきた、かっきーん!」
例えばスライムが投擲スキルで投げつけて来た弾丸を金属バット風武器で打ち返してみる。
攻撃の反射でダメージが通るかを検証するためだ。
「あちゃーダメだったみたい。後はよろしく!」
「戻る前にこれ打ち込んで貰えない?」
「りょー」
爆破魔法が大好きな少女から真っ赤な魔力が篭められた鉱石を渡された金属バット少女は、仲間達がスライムの防御スキルを解除するタイミングを狙ってそれを打ち込んだ。
「ホームラーン!」
狙い通りにスライムの体に吸収されたその鉱石は……
「んで、何が起きるの?」
「ダメだったみたい。逃げよ」
「あはは、りょー!」
爆破魔法が付与された鉱石は、上手く行けばスライムの体内で爆発する予定だったのだが、スライムに吸収された時点で効果を失ってしまったらしい。作戦が失敗した二人は、他の人達の邪魔にならないようにと後ろに退避する。
「うお!やべぇ!」
その途中で、スライムの巨大なカマイタチ攻撃により左腕をスパッと斬られた男性探索者がいた。
「うわー痛そう」
「フォローいります?」
「いや、大丈夫だ」
だがその男性は涼し気な顔で後方まで下がると、回復部隊からエリクサーを貰って全回復。
腕が吹き飛ぶことなど、ブートキャンプの中ではありふれたことで今更動揺するまでもない。
地獄のブートキャンプの経験が、猛攻を仕掛けてくるスライム相手に間違いなく生きていた。
「隊長、どうします?」
状況は拮抗状態。
スライムの攻撃を防げてはいるが、有効な攻撃手段がまだ見つかっていない。
現場の指揮官として選ばれた男性は考える。
「(どうして俺が指揮官なんだよ……)」
元々陰キャタイプであり指揮官なんてガラではないと思っていたのに、強さと救との交流回数からか強制的に選ばれてしまった。それならせめて仲間である大盾使いの男性の方が向いているのにと何度も反論したのだが、双剣使いの男は決定を覆すことは出来なかった。
「俺が試してみます。それでダメだったら作戦
本当なら真っ先に行きたかったのだが、指揮官ということで状況が安定するまでは動けなかった。今ならば全員がこの戦いに慣れているので、副官に任せて戦闘に参加することが出来る。
「おっ、ようやく行くんだ」
「おう」
突入のタイミングを見計らっていたら、休憩中の爆破魔法使いの少女から声を掛けられた。
「骨は爆破してあげるから思い切って行っちゃえ」
「拾えよ!」
「え、なんで。爆破してもらった方が嬉しいでしょ」
「それはお前だけだ」
パーティーメンバーということもあり緊張を解すためにこんな状況でもふざけた会話をしているように見えるのだが、それにしては二人の距離が物理的に近すぎる。それに良く見ると爆破少女はそっと双剣使いの左手に触れている。二人の関係に何か変化があったのは間違いなく、爆音轟く戦場にて多くの探索者達は思っていた。マジで爆発しろと。
そしてこれ以上イチャつかれてたまるかと、双剣使いが突入する状況を急いで整えた。スライムのガードが剥がれ、攻撃も全体的に弱まっている。
「よし!」
双剣使いは一直線にスライムの元へと駆け出した。
仲間達を信じて躊躇うことなく真っすぐに。
「!?」
しかしスライムは仲間達の妨害をものともせずに、向かってくる双剣使いをロックオンしてしまった。
『……!』
その途端、スライムがまばゆい光を発し、その光が収束してビームのような形で双剣使いに真正面からぶつけて来た。
イギリスの勇者の聖属性魔法。
ホーリーエクスターミネーション。
極太の聖属性ビームで周囲の魔物を殲滅する。
「うしたああああああああ!」
爆破少女の悲痛な叫びが響くが、ビームはもう
「この程度!」
どうってことない。
ここ最近、これ以上の修羅場を何度も潜って強くなってきたのだ。死の気配はまだまだ遥か彼方。
むしろ自分よりもこのビームによる他の探索者の被害の方が心配だ。
「魔双剣・斬撃網」
双剣に魔力を纏わせ、超高速の連撃でビームを斬った。
その軌跡が目の細かい網のような形になり、ビームはその網にひっかかり大幅に威力が弱まる。だがあくまでも弱まっただけであり双剣使いの全身にビームが襲い掛かる。
「おおおおおおおお!」
仲間からかけてもらったバフを貫通してダメージを受けるが、連撃の手を止めずにむしろ強引にビームの中を突破しようと前に進む。
「どおりゃああああああああ!」
そしてついにはビームを全て受け斬ってしまった。しかもビームの威力は大幅に弱まり後方に被害は無い。
そのまま双剣使いは特攻し、ついにスライムの真正面まで辿り着いた。
「双剣・次元斬」
両手に持つ一組の剣が僅かに振動を始める。
そしてシンプルに一閃ずつ。
『……!』
たったそれだけなのに、スライムの体が明らかに『斬れた』。
あらゆる攻撃を吸収するスライムに初めて攻撃が通ったのだ。
「よし、いける!」
そのまま激しい連撃を、とはいかずに双剣使いは踵を返して全力で逃げた。
「皆さん、しばらく耐えてください」
『はい!』
後方まで戻った双剣使いは、探索者達に指示を出してから受けたダメージを回復してもらう。
「また無茶して……」
「あのくらい無茶じゃないって」
「馬鹿」
「お前がいるのに死ぬわけないだろ」
「~~~~っ!」
不幸にも彼の回復を担当した探索者は、普段とは違う甘い雰囲気の二人の様子を浴びてしまい吐きそうになってしまったとかなんとか。
回復が終わった双剣使いは、全体が一番良く見える場所に移動した。
スライムは聖属性魔法を使うようになってきたが、それでも状況は膠着している。
探索者達が奮闘している結果だ。
また、効果的な攻撃をほとんど与えられていないにも関わらずモチベーションが下がらず奮闘し続けられているのにも理由がある。
「後は二心さんが来るのを待つだけだな」
ここで耐えることが後の勝利につながると分かっているからだ。
「私はもういるぜ」
「え?」
双剣使いが横を見ると、いつの間にか大剣を構えた狂化モードの京香が立っていた。
「待たせたな」
「いえ、むしろ俺達で倒せなくて申し訳ありません」
本当ならば京香の力を借りずにスライムを倒したかった。結果を出して堂々と救と肩を並べて戦えるようになったと言いたかった。彼らの意を汲んで京香は最初からは参加しないと決めていた。
「この状況を生み出しているだけでもすげぇと思うがな」
上級ダンジョンを探索出来る程度の実力者であればあっさりとこの世からご退場頂くような攻撃の嵐の中で、誰一人として死なずにスライムを抑えこめていることが驚異的なのだ。救だって強いと認めるに違いないと京香は本気で思っていた。
「それに君がアレが通じると確認してくれたのがかなり大きい。吸収作戦は多分意味なかっただろうからな」
双剣使いのお試し特攻が意味をなさなかった場合、彼らは吸収系魔物を倒す王道のやり方、吸収しきれなくなるまで吸収させる、をやるつもりだった。だが魔物の吸収容量は不明であり、元は最難関ダンジョンの魔物ということもあり、そのような単純な攻略法が通じるとは京香は思っていなかった。
「さて、それじゃあ終わらせようか」
京香は肩に担いだ大剣を構える。
「おおおおおおおお!」
そして何らかの力を籠めると大剣が激しく振動し始めた。
双剣使いが自らの剣を振るわせたものと比べると明らかに京香の方が迫力がある。それもそのはず、元々この技は京香が編み出し、それを双剣使いが教えてもらったものなのだから。
京香はソロで最難関ダンジョンを攻略している時に、どうしても硬くて倒せない敵が出て来て悩んだことがあった。その解決策として考えたのが、防御力とか無視して空間ごと斬ってしまえば良いのでは、というとんでも理論だった。
だが物理法則を無視する魔法やスキルが存在するダンジョンでは、いかなるとんでも理論でも実現できる可能性がある。京香はそれをなしとげるスキルを発見し、使いこなせるようになったのだ。
それこそが次元斬。
空間を斬ることで、対象を強引に斬り飛ばすとんでも技。
スライムを斬るのではなく、スライムの周囲の空間を斬っているため吸収出来ないのだろう。
「いくぜ!」
先程の双剣使いと同じく、スライムに向かって真正面から突撃する。
『……!』
京香の剣の危険性を察知しているのか、スライムは完全に京香だけをターゲットにして近づかせないようにと攻撃を集中させる。
「チッ、これは面倒だな」
京香レベルであれば避けられるしある程度のダメージは無効化出来る。しかも仲間達からバフをかけてもらっているから大ダメージを受けるということはまずない。
だがいかんせん数が多すぎる。
強引に突破しようものなら小さなダメージが積み重なってそれなりに大きなダメージとなってしまうだろう。その状態でスライムに全力攻撃をあてられるかと言われると不安が残る。
強引な特攻を止めてスライムの攻撃にダンスのように合わせて軽やかに避けながら、仲間のサポートを頼りに攻撃チャンスを待つ。
だがスライムは京香をあまりにも警戒していて、隙が見当たらない。
京香が来れば大丈夫。
そう思っていた探索者達の胸に、ここに来て初めて不安がよぎった。
その不安が僅かな歪みとなり、これまで綺麗に決まっていた連携が崩れ始めて行く。
「(これはマズい。どこかで無茶するしかないな)」
このままでは押されて潰されるだけだと判断した京香は、強引にでも特攻して状況を打破する判断をしようとした。
「(死ななきゃエリクサーでなんとかなる、なんて救の事を言えないな)」
この戦いではエリクサーをふんだんに使っているが、それはあくまでもエリクサーに頼らなければならない状況になった場合に使うだけであり、エリクサーがあるから無茶をして良いなどと考えての行動はご法度となっている。双剣使いも回復はエリクサーを使っていない。
しかしここでの特攻はエリクサーありきの特攻になる可能性が高く、それでは救とやっていることが同じであり叱る資格を失ってしまうというのが京香の考えだ。
だがこのままでは状況は悪化する一方だ。
仕方なく京香が突撃を決意したその瞬間。
「悪田ああああああああ!」
その声にスライムは大きく反応した。
そして京香から意識を逸らした。
これまで徹底して姿を隠してフォローに徹していたぴなこが決死の覚悟で姿を現して囮となったのだ。
「ぴいいいいなああああこおおおお!」
「どこみてんだよ」
このチャンスを逃す京香では無い。
素早く距離を縮め、大剣を振りかぶる。
「(
京香の戦闘勘がそう告げていた。
この一撃は間違いなくスライムを一刀両断するだろう。そしてそのまま連撃へと持ち込み、細切れになるまで斬り刻み核を潰す。
それでこの戦いは終了だ。
日本の探索者達の勝利だ。
その確信があった。
「え?」
魔物との戦闘中に何があっても動揺などしてはならない。
それは探索者としての鉄則だった。
日本最強の探索者として成長し、数々の修羅場をくぐって来た京香がそれを分かっていない訳が無い。
だがそれでも京香は動揺してしまった。
驚きのあまり目を見開いてしまった。
その光景が信じられなかった。
「それじゃあダメだよ。京香さん」
何故ならばスライムに振り下ろしたはずの攻撃を槍杉救が受け止めていたのだから。
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