北辺の紅い果実

@suzukichi444

第1話

 こことは異なる世界


 その北辺と言われる土地に小さな村があった


 村の内と外をさえぎる柵


 そのすぐ近くの外側で少年は「敵」と戦っていた。


 敵は人ではない人型の異形。小鬼と呼ばれる下級の魔物だ。


 小鬼の身長は1mほど。小さいからといって俊敏なわけでもなく、筋力が強いわけでもない。凶暴だが頭が悪く気が弱い。先手を取って仲間の首をはねると状況を理解できず動きが完全に止まり、ようやく理解すると仲間の死に動揺し数匹なら一人でも全滅させるのは難しくない。


 このような特徴さえ理解できていれば戦闘訓練を受けたことのないような人間でも低リスクで駆除できるのが小鬼という魔物だ


 立っている小鬼は3体、小鬼の死骸が2体


 少年にそのうちの一体が向かってくるとそれをかわし、まだ動揺から立ち直っていない2匹の首をはねる。


 残り1匹


 少年の武器は両刃の長剣、その長さを活かすように切っ先を残った小鬼に向ける。

 対する小鬼の武器は主に爪と牙なのだが、どこかで拾ってきた棒や手頃な石などを使うものもいる。

 そして今、少年と対峙小鬼はどこで手に入れたのか錆びた手斧を右手に持っている。

 リーチの面では少年に分があるのだが小鬼にも武器を投げるという一発逆転の手段がある。

 この小鬼を他のモノより優秀な個体と認識した少年はその一手に警戒しつつ、切っ先を近づける。

 魔物との戦いの基本はまずリーチの有利をとること。次に突く事を主とした戦い方を心がけるというもの。

 少年の育った国では幼い頃から魔物との戦い方を学ぶことが義務とされ、これらはその過程で身につけたものである。

 ジリジリと後退する小鬼。

 その小鬼の背後には仲間の死骸あることを少年からは見えていた。

 

「ギッ!」


 と短い鳴き声をあげて仲間につまずき体制を崩す小鬼。

 その小鬼に向かって剣を突き刺し、決着をつける。

 

 少年は小鬼5匹の首を袋に詰め立ち去ろうとする。 

 が、少年の目に紅い実をつけた腰の高さほどの木が入ってくる。


「これか……」


 忌々しそうに言うと紅い実を回収し、その木を切り倒す。







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