君がいてくれたから(第二章)

ラグランジュ

第1話 海

 思ったようにならないのが恋。双方の思いのズレはやがて大きな歪に。生きてきた環境は人の数だけある。合わせようと多少の無理は必要だ。


 ただ、思いのズレは最初はとても小さく気にならない…はずだった。


 なれているから、気軽に付き合えるからこそ、お互いの思いやる気持ちが必要だったはず。


 付き合いはじめは簡単、楽しい、ドキドキワクワク。別れは疲れる。とんでもなく疲れる。


 別れには理由がある。りなとの別れは、違和感を感じ始め、それが徐々に大きくなり、塞ぐことの出来ない大きなものになってしまった。


 今はとにかく、りなの幸せを願う。遠い場所で頑張ってるりなを本当に応援したい。


 夢を持って生きている人は、そのエネルギーに驚かさせる。若いから出来るってのもあるが、今後悔しないで夢を追えるなら追ったほうがいい。


 最後にしておけば良かったなど、これほどの後悔はない。例え失敗しても自分が選んだなら…それは最高の人生ではないか?価値のある失敗ではないか?


………………………目覚め………………………


【はると、出発だよ!まさか、寝てるなんて、ありえないよね?ほんと寝てたの?】 


さきさんだ。今何時?早すぎないか?五時ってのは。


【さきさん…おはよう…ございます】


【今日行くって言ったよね!準備は?水着は?】


【あの、用意してあります…すみません】


【だろうね。してなかったらぶっ飛ばしていた!】


母が出てきた。


【さきさん、はるとを迎えにわざわざありがとうございます。はると、運転慣れてないから、ご迷惑おかけしてしまうかもしれませんが】


【お母さん、ご心配なく。私が運転します】


【上司さんに運転なんて、ほんと申し訳ございません。はると、横で寝たりしないでよ】


【大丈夫だよ、行ってきます…ふぁ~】


【では、お母さん、はるとさんお預りします】


【よろしくお願いします】


………………………道中………………………


【さきさん、みさは直接向かってるんですよね?】


【そうだよ、はると、みさとあれから話した?】


【いえ。何も…会うの抵抗あって…】


 あの出来事以来、何も話していない。でも、今日来てくれるってことは、話を出来るかな?


【さきさん、泳ぐつもりですか?この炎天下で】


【炎天下だから泳ぐんじゃん。何、泳がないの?】


【アクティビティはしますけど、泳ぐってのは】


【どの道水着になるんでしょ?】


【なりますけど、この歳でがむしゃらに泳ぐのは、抵抗ありますよ】


【私なんか、ほら、水着来てきたよ】


 わっ、さきさん、いきなり👕めくらないで!焦ったよ!水着だから良かったけど、前の車の人もびっくりしたと思うよ。


【はると、純情過ぎだよ。このくらいで】


おかしいよ。何で水着来てきてるの?しかも運転中に危ないなーもう。ドキッとしたよ。ほんとに。


………………………海辺………………………


【さあ、着いたよ!泳ぐぞ、遊ぶぞ、飲むぞ?、はると?さては寝たな!人に運転させといて!】


【さきさん、すみません。あまりにも快適で】


【私のドライビングテクニックか…それなら仕方ないね。水着は?】


【持ってます、海の家で着替えて来ます】


【ここで着替えちゃいないよ!面倒だから。後ろのシート倒すからさ】


 ここで!もう勘弁してよ。それにさきさん、いるじゃん。やだよ。それにシート倒し方解らない。海の家に行ってきまーす!


【はると、不器用!ほらどいて!このレバーを引くの、それでシート押して。もう覚えて!これからも乗るんだからさ】


【はい、すみません。このレバー…引けませけど?こんなに固いですか?】


【どれ?ちょっと見てて。このレバーを…ってか実際にやらないの解らないよ、やってみて。詳しく教えるからさ。ほらこれを引きながら】


【ムズいな…これを引いて合ってます?おわっ!】


 なんだ、シート押して無いけど、倒れたぞ…

ちょっと、これは?ヤバいな…さきさんも一緒に。


【はると、私も押し倒してどうするの?】


【ごめんなさい、そんなつもりは決して!間違いです。誤解です。もうとうそんな気はありません!】


【何、全力で否定してるんだよ!はると!ムカつく!】


ふ~、疲れるよ。海に入る前から。


【あれ、はると?なにしてんの?】


みさ!久々に会ったけど、何でこのタイミング?


誤解だからね。ほんとに。もう、さきさん勘弁…


【みさ、久しぶり!はるとに押し倒されちゃった!

てへっ!】


こら~、さきさん!ふざけるな!


 

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