A−3
A
目を覚ますと、というか、視界が明るくなると、星都が大男の手首を捻っているところだった。大男は、やはり見覚えがある。裏社会の人間だ。しかし、星都にも限界があるみたいで、逆に倒し返される。そして、どこからか声が聞こえた。
「抵抗は無駄だし、無理ですよ。星紙恒翔はこれでも一応、喧嘩は無比な強さですから。」
日本一イケメン、と謳われている星紙恒翔が目の前に現れる。
大男の足を払い、鳩尾に拳を入れる。転んだ相手の背中に乗り上げると、右腕を掴んで拘束した。
少女は私を見ると、
「ああ、無遠慮にも、全てわかりました」
大男が暴れようとするが、何かが刺さり、動きを止めた。コンパスだ。
「まあ、算数は得意だから」
ああ、彼女も学園の中で有名な方だ。たしか、私と、
「ああ、そういうことか」
うん、多分そうだ。
「同姓同名だ」
「絵馬ってもっと無二だと思ってました」
「そういや私たち、同じ名だね」
どうやら、彼女たちは私の噂を聞いて、自分のことだと覚悟を決めたらしい。
「いやあ、ごめんなさい」
「いえ、謝罪は無用です」
星都が、星紙恒翔に歪みついている。が、星紙恒翔は全く意に介していない。どころか、こちらに寄ってきて、
「本当に、絵馬ちゃんが無事で良かったよ」
と泣きそうな声で言うと、抱きついた。はあ、そう言う矢印なのだな。
「別に、無傷です」
抱きつかれながら体を硬直させ、少しだけ頰を赤く染めた。ああ、そういう矢印だったか。
「いやもう」
と言いかけて、やめる。代わりに星都の方に歩み寄る。王に教えてやろう。
「かっこよかったじゃん、星都」
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