山の神の狼むすめ〜寂しがり屋でドジっ子のロリ神様とずーっと一緒〜

髙 文緒

第1話 山中での目覚め

//SE 風に揺れる葉っぱの音


■すこし離れたところから少女の声

 

「起きろ、人の子よ。起きぬか?」


//SE 草を踏んで近づいてくる足音。 


■近距離

 

「ふむそれならば……」


■右側に移動 


「ふぅーっ」


(息を吹きかける) 

  

「お、起きたか。ふふ、人の子は耳に風を受けると、皆おなじように身を震わせるから愉快だの」


「ん? 風と吐息は違う? フン、わらわの吐息は山の風、山の風は妾の吐息。分からぬか、よいよい、そのうちに……」


■正面近距離


「分かるようになるぞ」


「うむ? ああ、目隠しが気になるか? 外してはならぬぞ。わらわの姿はそれはおぞましいものでな。人の身で見たら狂ってしまう。今宵は月が明るい。気まぐれに拾ったとはいえ、狂わせるのも忍びない」


「なに? 周りが見えぬのが、恐ろしいか? 大丈夫だ、もうじき外してやれる。うん? 妾を見ても狂わぬかと? そうさね、そのころには、」(声を低めて、脅すように)


「……うふふふ、震えているな。いつの世も、可愛いな人の子は」


//SE 主人公が後ずさる草の音

 

「逃げずともよいではないか、いけずだの」

 

「何が起こったか? なるほど、何も覚えていないと見える。

 それならば、語ってやろう。

 しかし……人の子と呼び続けるのも億劫だな。そうだ!」


 //SE 手を小さく打つ音

 

「名付けるか! そのうちに人の子でも無くなるしな」


「うん? なに、こちらの話だ」(喉の奥で笑いながら)


「そうさね、月の夜に拾ったから、『月読つくよみ』でよいか。

 なに? 不満と? 単純? よいではないか、分かりやすいぞ。

 ねえみんぐせんすが無い? 何のことか分からぬが、侮られていることは分かるぞ」(可愛らしく怒る)

 

「先程まで震えていた癖に、さては月読よ、お前は心臓に毛が生えているようだな」(すねた声)


「ああ、ああ、煩いこと。

 それならば名を申してみよ。…………ほら、覚えていないだろう? 術を受けたものは皆そうなのじゃ」


//SE 衣擦れの音、彼女がすぐ近くに迫る


■左側、吐息が聞こえるほど近く

 

「煩くした罰じゃ、耳にまたいたずらしてやろう」(吐息まじりで)

 

(左の耳を舐める)

 

「うふふふ、弱いの、耳が。体が跳ねたぞ」(楽しそうな声)


■右側に移動、また吐息が聞こえる


「ほうら、次はこっちじゃ」


(右の耳を舐める)


//SE 衣擦れの音。主人公が体をよじって悶える。

 

「おや、やめて欲しいとね。うむうむ、そうだ、そうして妾にひれ伏すがよい。まあ、生意気を言っても、またお仕置きが出来るから構わぬぞ。ふふ……」(吐息混じりで囁きかける)


■正面近距離


「なに? 『変態ロリ』だと? だあれが変態じゃ! あとその『ロリ』とかいう言葉、何かは知らぬが妾を敬っておらぬのは分かるぞ?」


「な、何を言うのだ! 妾は可愛くなどない! 恐ろしい山の神なのじゃ! ひれ伏すのじゃ!

 全く、お前は本当に人の子風情で妾を可愛いなどと……どこまで生意気なのじゃ? 

 いや、人の子というものは皆、身の程を知らぬものだったかもしれぬな」

(さみしげに、声が小さくなっていく)


「いやな、懐かしいと思ってしまった。妾のもとにもかつては、沢山の人の子がやってきたのだから。今となっては……」


//SE 衣擦れの音、主人公の方から少女の腕を掴もうとする

■正面さらに近距離 


「ええい腕を掴もうとするでない! なに? 腕が上手く動かない? それは、そのう、さっきまで倒れていたからではないか?」(焦った声)


「うまく立てない? それも、ほれ、目覚めたばかりで体がうまく動かないのではないかな〜と、思うぞ。うむ。安心しろ、多分そのうち慣れる、多分」

 

「え? これじゃあ抱きしめられない? だーかーら、なぜ抱きしめる必要があるのじゃ! 妾を慰めたいから?」(驚いた様子)

 

「う、煩い煩い! 人の子風情に慰められる筋合いは無いわ! フン、お前の体も運命も、すべて妾のものぞ。妾の機嫌を損ねるとどうなるか、分かっておらぬのか!」


「なに? どうなるか分からんから、やってみて欲しいと!? おかしな奴じゃ。ただではおかぬぞ。え? 何をするか? だ、だから、耳をいたずらするだけでは済まぬと言うておるのじゃ!」


「しつこいのう。何をするかって? ええと、ほら、あ! あれだ!」(いたずらな子どものような声で)


■顔の周りを左右に動きながら


「……食ってしまうぞ〜! どうだ怖いだろう、ほれほれ、食うぞ、食ってしまうぞ〜!」(低い声を頑張って作りながら)(右に行ったり左に行ったりと落ち着きがない)


//SE 衣擦れ、主人公が少女を抱きしめる音。

 

「あ、なにをする! 妾の肩を抱くなど、お前は礼儀というものを知らぬのか!?」(焦った声、恥ずかしそうに)


「やはり上手く抱けない? それは気のせいじゃ。うん。妾の術は失敗なんかしていないぞ」

 

「だ〜か〜ら! 妾は山の神ぞ? お前は妾に名前と命を与えられた下僕ぞ? ええい離せ! 離さぬ……か!」


 強く抱きしめられて少女の声が籠もる。

 もみ合いのなかで主人公の目隠しが外れる。


「あ、目隠しが……!」(焦った声)


「見てしまったか。……フン、笑いたければ笑うが良い。おぞましい姿でいられたらまだ良かったものを、か弱き姿になってしまった。こんなの山の神と誰が認めようか」(落ち込んだ声)


「なんじゃ? 妹みたいで可愛い? 口をとがらせるのがたまらぬ? 『妹が欲しかった』とかお前、なにを言っておるのじゃ? 『のじゃロリのうえに犬耳っ娘なんて最高』? お前、なにやら気持ちが悪いぞ! ええい近づくな! 息が荒い!」


「尻尾をもふもふするでない! ああ、尻尾だめ、……クゥン! だめじゃ! 付け根はやめろ! い、言っておくが、妾は犬ではないからな!」


「フフン、聞いて驚け。妾は山の神、狼である。万年の年月を生きた狼じゃ、敬え敬え。キャゥン! だから尻尾はぁ、もふもふ、するでない……! えいっ」

 

//SE 少女が主人公をゲシゲシと蹴る

■すこし距離を置いて、会話が途切れる

 

「あー、その、人の子……? 己の姿も見てしまったか。少々、もしかしたら、ないとは思うが、間違いがあるかもしれぬが。人の子に術を施すのは久々でな、おかしくない……じゃろ? え? 手と足の付く場所が違う? 逆?」


「ははは、どうりで抱きしめられたときに、前脚の長い生き物じゃと思ったんじゃ。ははは、すまぬすまぬ。いや笑って誤魔化しているわけでは無いぞ、ははは。はは、ははは」(焦ったような棒読み)

 

「……怒ったか? 怒ってない? 『ドジっ子』とは何なのだ? いや、言わなくていい。絶対に褒められていないことだけは分かるからな」


「怒ってないなら良いのだ。妾は怒られるのは好かぬ……うん? その代わりにもふもふしたい? う、うむ。仕方ないな。やさしく、するのじゃぞ?」

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