プロローグ
「先生、ちゃんと話を聞いてください!」
「今はちょっとなぁ……」
「ちょ、ちょっと!」
逃がすわけにはいかない。私は先生の進行方向に立ち
「自分のクラスのこと、もっとちゃんと考えてください!」
吉田先生は、先程までとは違い、私の目をしっかり見て、ゆっくりと確実に聞き取れるように言った。
「気持ちは分かるがな? 頼むから後日にしてくれ。それにちょっと、
少し気圧されてしまった。吉田先生は普段の適当な態度からは、想像しがたいシリアスな雰囲気を纏うことがたまにある。
そんなことは関係ない。問題なのは、
「後回し、ですか……」
先生のことは信頼できる先生だと思っていたが、勘違いだったようだ。苦しんでいるかもしれない自分のクラスの生徒を、見て見ぬふりするなんて。
「もういいです、私が一人でどうにかしますから」
そう言い捨て、吉田先生に背を向けて、歩きだす。
アピールでやってるわけではない。本当に失望したのだ。
吉田先生が私の後ろ姿に向けて何かを言ったようだが、もう知らない。
先生は知らないのだ。誰からも見ていてもらえないことの苦しみを。
私が彼を救う。
救うなんて大げさかもしれないけれど、手助けくらいなら私にだって出来るはずだ。
その為なら多少の無茶だってしてみせる。
覚悟は決まった。あとは行動だ。
何をすればいいか、計画を考えながらその日は家に帰った。
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