夏のひととき

勝利だギューちゃん

第1話

「久しぶりだな」


何年ぶりだろう?

外の世界に出るのは?


決して引きこもっていたわけではない。

わけがあって、ずっと陽の光を浴びる事のない生活をしていた。


まあ、それなりに楽しかったと、今は思う。


「さてと、これからが本題だ」


いつまでも、このままではいられない。

外の世界に出た以上、やるべきことがある。


もう、わかっているとは思うが、僕はセミだ。

セミの幼虫。

これから羽化をして、大人のセミになる。


まずは、そのための木に登らないといけないが、安心はできない。

敵はいつでも、襲ってくるのだ。


野生の動物の結婚は、基本はナンパだ。

その求愛方法は、種により異なるが、僕たちは鳴き声だ。


外見は関係ない。

魅力的に鳴いた方が勝ちなのだ。


でも、「やっぱり、あんた嫌い」というのもある。

セミの世界も男は辛いのだ。


僕たちセミは、2週間の命。

でも、少し違う。

たいていのセミは、2週間で結婚が出来て、お役御免。


でも、そんなにモテるセミばかりではない。

もてないセミは、もう少しだけ時間が与えらる。


「ねえ、あなた。なかなかかっこいいじゃない」

「セミの世界にも逆ナンってあるのか?」

「まってるばかりじゃ、子孫は残せないわよ」

「まあ、いつ敵がおそってくるかわからんしな」

「鳴いてみてよ」


思いっきり鳴く。


「合格。結婚しましょう」

「喜んで」


あっけなかった。

これでお役御免かな。

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夏のひととき 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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