夏の迷子と秋の山
ぶらボー
総合案内所
夕方くらいになるといつもその子が泣きじゃくる迷子を連れてきた。
私がショッピングモールの総合案内所で働き始めてから二回目の夏。子供や外国からの旅行者など、かなりのお客さんが来ていた。一度経験しているといっても、この季節のドタバタ具合にはまだ
最初にその子が迷子を連れてきたのは七月に入って少ししてから。ツンツンした
その時は普通に感心したので、女の子を両親に帰した後、沢山
以降、二、三日ごとに男の子は迷子を連れてくるようになった。一日に二人以上連れてくることもあった。不気味に感じてもおかしくないような話だが、彼の明るい性格と迷子が親と再会して喜ぶ姿のせいか、そんな気持ちは
「君はいつも一人で来てるの? お母さんとかは?」
「今の時間は仕事してるで。食べ物が少なくてな」
マズいこと聞いたかなと思う。そういうコトで大変な思いをしている家庭なのかもしれない。
「家の近くは結構暇なところでな。
いい意味でも悪い意味でも大人びた子だなあ、と感じた。別に怒られることなんてないのに。そんな歳で他人の視線をそんなに気にして。
いつでもおいで、迷子がいない日でも全然構わないから、と私は目線を男の子の高さに合わせて伝えた。まあ四六時中付きまとわれると実際は困るのだが、この子にはそれぐらい言った方がいいだろう。
お
「お姉ちゃん、このショッピングモール
別の日、男の子は突然そんなコトを聞いてきた。
「ヤダ、顔に出てた?」
「一日だけやったらまだしも、最近ずっとそんな顔や」
「うーん、ここが嫌いってわけじゃないんだけど。毎日毎日これだけ
「ああ、そういうコトか」
男の子はわざとらしく、うんうんと
「俺なあ、姉ちゃんと逆や」
「逆?」
「俺の家の周りは誰もおらんのや、家族以外。毎日毎日だーれもおらん暇なところで過ごしてやな。静かすぎてアカン。せやから、ショッピングモール来るねん。ここは人がいっぱいいて
なるほど、と私はすぐに納得して返事した。でも学校とかあるんじゃ? と聞きそうになったが、先日のコトもあったので口に出さなかった。
「足して二で割ったらちょうどええんかな?」
「うーん、どうだろう」
「このショッピングモールの半分くらい」
「だいぶ楽だろうね」
男の子は両手で指を
「それに俺、あれや。
「あー私もかなぁ」
「怖いんや。全部、同じもんで
男の子は初めて、明らかに暗い表情を見せた。私は慌ててこのショッピングモールで好きな店を聞いてみた。話の
夏の間、男の子が迷子を連れてくるか、一人でぶらぶら立ち寄りに来るたびに、
子供は
新しく総合案内所で働くことになった
(おわり)
夏の迷子と秋の山 ぶらボー @L3R4V0
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