貧乏くさいとフラれた俺、大金持ちになり元カノからヨリ戻そうと言われたがもう遅い。〜助けて?フッたのはお前だろ?〜

ごまだれ

第1話

「あんたみたいなオタク、前からキライだったの!金輪際近づかないでよね!」


「じゃ、そゆことでカレシ君、あっ元カレかw俺のエリカにもう近づくんじゃねーぞ!w」


「ま、待てよエリカ!どういうことなんだ!?」


どしゃ降りの午後。


映画館デートする予定だった俺はいきなり暴言吐かれた。彼女の葉月エリカに。


それも衆人環視の中。


全くワケが分からない。今日は彼女のエリカとデートの約束だったはずだ!


付き合ってはや2年、今日の記念日のためにバイトに明け暮れ、欲しいフィギュアとか買いたいラノベとかもうここ最近ずっと我慢してきた。


それなのに肩には金髪のやたら痩せ細ってる長身男の手が置かれてる。


「え、エリカ…俺の何が悪かったんだ…?も、もし悪いところがあったんだったら改善するからさ、まだ俺たちやりなおせるよ…な?」


「今時アンタみたいなオタクでおまけにお金もない彼氏なんてごめんなのよ!デートは映画館やゲーセンばっかり!女子なら高級イタリアンでも連れてって欲しいものなの!でもその点、彼氏の海斗君は週に1回は高級レストランに連れてってくれるし、レクサスも持ってるのよ!分かる?住んでる世界が違うのよ!私たち今日限りで別れたいの!」


「エリカ、もう行こうぜ。じゃあな地味男君w」


一方的に暴言吐かれて立ち去ろうとした2人だったが金髪男のほうから去り際に


「彼女さん譲ってくれてサンキューなw超美味かったぜw」


っとボソッと耳打ちされる。




美味かったって…。エリカ、あんな軽薄そうな男と寝たって言うのかよ…。


いやだ…自分の知らないところで彼女が股を開いていたなんて…。


知りたくなんてなかった。



そんな筈は無いって思いたかったけどでもここ最近エリカの様子がおかしかったことにも合点がいく。


デート中も楽しそうに誰かとやり取りしてたり、お泊まりに来た時は彼女の衣服からキッツい甘ったるそうな匂いがしたり。エリカは金髪ギャルって感じだけど意外にも香水とかはダメなんだ。


振り返れば気づく場面はいくらでもあったんだ。それを見て見ぬふりしたのは自分のせい。湧いた疑問に蓋をしてたのは自分。全部自分が悪いんだ。


2人はもうすでにいなかった。



よし!


デートは無くなったんだ。自由時間が増えた!


午後からだけど何しようか。


最近発売された新作のゲームも買いたいし、あぁ、あのラノベ作家さん新作出したってTwitterで言ってたしそれ買って読むのもアリだな!


…。


…。


……………………………………。



「…忘れられるわけないだろぉぉぉぉォォォォォォォォォォォォ!!!」


なんだよ彼氏の海斗君って!


「畜生…オタクなんかよりやっぱり金があるヤツがいいのかよ…」


エリカも付き合う時はあんな感じじゃなかった。コミケで出会って何回か話すうちに好きになって自分から告白してなんとか付き合えたのだが、もともと黒髪のロングだったし静謐な令嬢を思わせる雰囲気を漂わせていたのに…。


数ヶ月前からイメチェンとか言ってちょっとずつギャルっぽい感じになっていたけどもしかしたらその時には海斗君とやらの好みの姿になっていったのかもしれない。


…これ以上勘繰りはやめよう。自分が惨めになる。


今は周りの幸せそうな奴らが憎くてしょうがない。


…なんだよ、スマホなんか向けて。そんなに大勢の前でフラれて叫んだ俺が面白いかよ。


「…どいてください」


「キャー!触られた!」

「ねぇねぇどんな気持ちですか?w」

「ちょっアンタやめなってw」

「えぇー良いじゃんw」


挙句には赤の他人にまでダル絡みされるし。


夜はバイトもあるけど完全にそんな気分じゃない。気分のドン底の今ならクビになっても良いとすら思える。ハハッ、なんでだろ?失うものが無くなった人は強いってよく言うけど多分こういう時を指すんじゃないか?


大勢の好奇の目から逃げるようにどしゃ降りの雨を傘もささずに濡れて帰った俺はさぞ滑稽に映ったのかもしれない。通行人に二度見、三度見はされた。


半ばヤケ状態で帰っていた時、ふと宝くじの店舗に目が行く。


「…サマージャンボ7億円。…7億ねぇ…」


今は梅雨の真っ最中。梅雨が明けたら1年で1番嫌いな夏が来る。もうそういう時季なのか。


1口300円。


エリカと付き合って2年の記念デートで今日使うはずだった金額に比べたらめちゃくちゃ安く見えるな。


これなんとか現象ってなかったけ?微妙に思い出せない。


…多分ヤケになってたからだと思う。


「…この財布の金、全部使うか…」


この日、俺は財布に入れていた10万円を全てサマージャンボに突っ込んだ。












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