第32話 あの大ヒットアニメの?
そして他の三人と、それから参考までにジルベールの鑑定結果は、こんな感じだった。順番に、ジルベール、黒木、新田、大高だ。
・ジルベール
【種族】ヒト
【ジョブ】騎士
【体力】31/31
【魔力】7/7
【スキル】強斬 連突き 打撃耐性 剣 盾
【スタミナ】 43
【筋力】 41
【精神力】15
【敏捷性】5
【直感】3
【器用さ】1
・黒木
【種族】マレビト
【ジョブ】農術師
【体力】11/11
【魔力】12/12
【スキル】栽培
【スタミナ】9
【筋力】9
【精神力】12
【敏捷性】4
【直感】1
【器用さ】4
・新田
【種族】マレビト
【ジョブ】格闘家
【体力】15/15
【魔力】6/6
【スキル】格闘術
【スタミナ】13
【筋力】14
【精神力】5
【敏捷性】7
【直感】3
【器用さ】2
・大高
【種族】マレビト
【ジョブ】魔術師
【体力】8/8
【魔力】13/13
【スキル】土魔法
【スタミナ】6
【筋力】8
【精神力】13
【敏捷性】2
【直感】2
【器用さ】4
ぼくは内心、うなってしまった。
数値が、ぜんぜん変わっていない。
ぼくはまあ、いいとしよう。ある程度のステータスになってしまっているから、もうゴブリン程度では、数値が上がったりスキルを覚えたりはしないんだろう。それでも、ジルベールと比べると、かなり見劣りするけど。
だけど、黒木たちのステータスまで変わっていないのは、どうなんだろう。
三人がどんな数値だったかなんて、正確には覚えていないんだけど、少なくともスキルのほうは、初期値のままだ。他のステータスも、けっこうな数の魔物を倒したのに、たいして目を引くものにはなっていない。新田だけは体力や筋力が高めだけど、これはたぶん、格闘家というジョブのおかげだよな。
どうやらこの世界は、「魔物を倒すと経験値がたまってレベルアップ」と言う、ゲームみたいなシステムにはなっていないらしい。
となると、残るは「鍛錬すればステータスアップ」になるのかなあ。この三人、それなりに鍛錬はしてきたけれど、チャンスがあれば手を抜いていたのも間違いないからね。数字に動きがないのは、その手抜きの成果かもしれない。
どちらにしろ、ステータスというものは、そんなに簡単に上がるものではないんだろうな。とっても現実的な結論だけど。
ただ、だとすると不思議なことがあった。
「じゃあ、どうしてぼくのステータスは上がったんだ?」
スキルはびっくりするほど増えている(その内容には偏りがあるような気もするけど)し、体力などの数値も、最初のころと比べたら、倍近くになっているものもある。どうしてこうなったんだろう。最初は訓練の成果が出たのかと思ったけど、黒木たちの鑑定結果を見る限り、そう言うわけではなさそうだ。
でも、実際にステータスは上がっているんだ。いったい、なぜ?
これについては、ぼくには一つ、考えていることがあった。
といっても、アイデアというか思いつきレベルの話で、確信を持ってこれだ、と言いきれるわけじゃない。でも、この三人とぼくとの違いというと、あれくらいしかないと思う。格好をつけていえば、消去法による推理、ってやつかな。
もしもぼくの考えがあっていれば、これはぼくにとって、逆転のチャンスになるかもしれないんだけど……。
ヒントは、子供のころに夢中になった、あの大ヒットアニメだ。
そんな、ちょっとうわつき気味のテンションでシュタールに戻ってみると、なんだか様子が変だった。
「北門」と呼ばれている北側の出入り口が、昼間なのに閉じられていて、その両脇には、村の若者二人が立っていた。二人とも、手にお手製の槍のような武器をを持っている。いつもなら門番や見張りなどは立てていない、単なる入り口なのに。
もちろん、ぼくたちは門を通してもらえたけど、村の中の雰囲気も、なんとなくあわただしかった。いったい何があったんだろう。いったん、村長宅の離れに戻って待機していると、しばらくしてジルベールが訪ねてきた。開口一番、彼は言った。
「おれたちの留守中、村がゴブリンに襲われた」
ぼくたちはびっくりして、ジルベールの顔を見つめた。
「大きな群れが侵入したわけではない。十匹程度の小グループが、開けたたままになっていた北門から侵入して、村人と鉢合わせになっただけだ。
だが、十匹程度と言っても、こっちは満足な武器も持たず、戦闘の訓練も受けていない村人だ。簡単な相手ではなかった。戦闘で三人の男性が負傷し、女性一人が逃げるところを襲われて、大きな傷を負ってしまった。
これはオレのミスだ。異常事態と知りながら、十分な注意喚起をしなかった」
「しかしジルベール殿は、門を閉めておくように、と村長に言っておられたではないですか」
大高が反論したが、ジルベールは、
「それでも、もっと強く言っておくべきだった。オレも、もちろん村長も、危機意識が足りていなかった。十分すぎるほどに、兆しはあったんだからな。
先ほど、この状況を団長へ報告するために、村から人を出してもらったところだ。おそらく、なんらかの応援がくると思うが、それまでは、おれたちだけで対応しなければならん。そこで、明日からの訓練の方針を、変更することにする。
主眼はゴブリン駆除ではなく、村の防衛だ。オオタカたちは今までどおり、村の周囲や森の中を巡回してくれ。ただし、森の奥深くに行く必要はない。直接、村の脅威になりそうな、村に近い場所を重点的に警戒してくれ。
それから、オレは村に残ることにする」
え、と黒木が声を上げた。
「しばらくは、ゴブリンどもの警戒をしつつ、村の若いものを集めて、訓練を行うつもりだ。訓練と言ってもごく簡単な、武器の扱い方を教える程度のものになるだろうが、それでも、しないよりはましだろう」
「ジルベールさんが残るのなら、ぼくらも一緒に残った方がいいんじゃないですか?」
ぼくが提案したけど、ジルベールは首を振って、
「いや、やはり森の中がどうなっているのか、情報はつかんでおきたい。そういう意味では、おまえたちの任務はゴブリンの退治ではなく、やつらの動きをつかむことがメインになる。くれぐれも、無理はするな。生きて帰って、オレに情報を届けろ。わかったな」
「って事は、明日からはおれたちだけでやる、ってことですよね……」と黒木。
「そうだ。実戦では、危なくなったら出てきて助けてくれる、そんな便利な助っ人などいない。これも訓練の一つ、いや、これからが本物の訓練だ思って、気を引き締めて臨め」
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