第6話 伝説級を通り越して神話級の冒険者?

「まずは武器ね♡ アクア様は双剣に強いこだわりがある?」


 強いこだわりかあ。


「そこまではとくに。手数が多くて素早い攻撃がしたいなって思って選んだくらいで」


「OK♡ じゃあ、武器はこれかな♡」


 もえきゅん☆がアイテムボックスから取り出した武器を手渡してくる。


「双剣? 形がなんだか特殊」


 双剣ではあるんだけど、今使っている直刀型ではなく、曲刀型になっている。柄のところがフェニックスの羽根みたいな飾りがついていてオシャレ。


「前にとあるダンジョンの深層でフェニックスを倒した時のレアドロップ品なの。≪エンタープライズ≫には双剣使いがいないから、モエが大事にしまっておいたんだぞ♡」


「え、これって……」


 アイテム情報を確認する。『鳳凰の双剣』レアリティ5って。神器の1つ手前じゃないですか……。

 特殊能力として『投擲時、フェニックスの加護を発動。投擲レベルに応じて、使用者に攻撃速度+30%(最大レベル時)、状態異常耐性+50%(最大レベル時)を10~30秒間(最大レベル時)継続。双剣レベル10・投擲レベル10の時、フェニックスの意思を常時発動』と書かれている。


「フェニックスの加護・意思?」


「フェニックスの加護は、投擲してもアイテムロストがなくて、≪rebirth≫で登録者の手元に復活する加護だぞ♡」


「やばっ」


 使い捨てじゃない投擲武器。それだけでも価値がある。さらに投げると速度が上がって状態異常の確率も上がるのかあ。遠距離攻撃強くなるなあ。


「フェニックスの意思は、使用者がフェニックスと仲良くなって言うことを聞いてくれるってことだぞ♡」


「つまりそれは?」


「右に飛べ~って願えば右に飛んで~、あの敵を捕捉して~って願えば必ず当たるまで追尾するんだぞ♡」


 投擲の概念を覆してるんじゃ……。そんな性能あって良いの?


「あ、でも、双剣レベルも投擲レベルもマスタークラスじゃないとダメかあ」


 だいぶ特訓しないとその域に達するのには時間がかかりそう。いつかフェニックスの意思が使えるようにがんばろう。


「そこはモエに秘策があるんだぞ♡」


 もえきゅん☆が腕を組んで高笑いをする。


「いよいよ『アクア様の人体改造計画』をスタートさせるんだぞ♡」


 もえきゅん☆が悪い顔をしながらにじり寄ってくる。

 わたし、とうとう改造されてしまうのね。痛いのはイヤですよ……。


「モエと組むので、補助魔法も攻撃魔法もモエの担当で~す。魔法系のスキルは一切不要になるので消しちゃうんだぞ♡」


 スキルを消す?

 もえきゅん☆は何を言っているんだろう。


「物理系のスキルも中途半端に伸びている長剣や大剣、その他いろいろは全部無駄なので消しちゃお♡」


 いったい何が始まるんです?


「集めたポイントを双剣と投擲に集中させて、あとは触ってみないとわからないけど、≪Order change≫のレベルがあげられたら上げちゃおっかな♡」


「もえきゅん☆は、さっきから何を言っているの? スキルを消す? レベルを上げる?」


「モエはね。ユニークスキル≪Black Hole≫で相手からスキルを吸収できちゃうんだぞ♡」


 ≪Black Hole≫の力はすごい。たしか『1個体につき1回だけ相手からスキルを奪えて自分のものにできる』だったかな?。


「それでわたしの魔法系スキルを奪って消す?」


「そうだぞ♡ でも消すって言っても、消滅させるわけじゃなくて、モエの中に吸収する時にポイント化して保管するんだぞ♡」


「スキルをポイント化ってどういうことなんですか?」


「スキルレベルはスキル使用やその他の行動で、見えない経験値が少しずつたまっていって、レベルアップ条件を満たすと勝手にレベルアップする仕組みなんだぞ♡」


 知らなかった。

 なんとなくスキルを使っているとレベルが上がることくらいしかわかってなかったかも。


「モエがスキルを吸収した時、そのままスキルとして手に入れるのと、スキルをつぶしてポイント化して保管するのを選べるんだぞ♡ スキルポイントは好きなスキルのレベルアップに使えるんだぞ♡」


 なにそれ、神スキル⁉

 全スキルオールマックスレベルみたいな恐ろしいことが起きちゃうの⁉


「たぶん今アクア様が想像していることについて解説すると、人はそれぞれもともとの資質によって差はあるんだけど、1人が蓄積できるスキル習得数・スキルレベルには限界値があるから、全スキル全属性魔法10のような変態は生まれないんだぞ♡」


 なるほどー。それはまあ、良かった……のかな。


「モエは≪Black Hole≫と≪Give You≫を使って、≪エンタープライズ≫のマッチョたちの中身を細マッチョにしてきたんだぞ♡」


「まさか、手に入れたスキルポイントを≪Give You≫で付与ってことですか……」


「正解! アクア様、頭良い~! スキルポイントにして≪Give You≫で付与して、すぐにその人がスキルにポイント消費しちゃえば、一時的付与から恒久的付与に変化するし、その先ずっと消えたりしないんだぞ♡」


「もえきゅん☆を通して、スキル変更が自由自在に……」


 まさに神の触媒。

 スキルレベル・魔法レベルはその人の人生を表すとよく表現される。

 つまり何を見て、何を聞いて、何に興味を持って、何に時間や力を割くか、それは人それぞれでスキルの型も人ぞれぞれ。

 

 スキル習得は人生のようにやり直しはきかない。

 それが一般常識だ。


 それをもえきゅん☆はあっさりと覆したのだ。

 もえきゅん☆って、伝説級を通り越して神話級の冒険者なんじゃ……。


「スキルを吸い取れるのは1人につき1回だけだから、この先は無駄なスキルを習得しないように気をつけないとね」


 ああ、その制約があるから、こまめに微調整みたいなことはできないのかあ。


「まとめて吸い取れば1回のカウントになるから、全部一気にやっちゃうんだぞ♡ さっそく『アクア様改造計画』スタート♡ ≪Black Hole≫ skill ――」

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