書きかけの地図

松井みのり

書きかけの地図

その子供は書きかけの地図だった。


書きかけの地図には未来と現在と過去。その全てが記されていた。


黒と白の狭間を往来しており、

秩序と混沌の狭間に遍在していた。


世界は子供が創造することを望み、

子供は世界によって創造されることを望んだ。


子供が知っている唯一のことは、

子供が何も知っていないことの証明だった。

子供が持っている唯一のものは、

子供が何も持っていないということの証明だった。

しかし、子供は自身の存在を証明していた。



だがそれも、全て消失した。



子供は母親の胎内に存在していたが、

母親が一人の通り魔のナイフにより殺害された。


子供は地球上で

たった一つの美しい言葉を告げる未来が決定していたはずだった。

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書きかけの地図 松井みのり @mnr_matsui

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