仮説
美夏は老刑事か何かのように「現場百遍!」と言って聞かなかった。だから、私たちは今現場――二階のトイレにいる。
「うーん。普通に詰まっただけっぽいね」
「まあ、そりゃそうでしょ」
「でも、ここに何かあるはずなの!」
「ただただここが詰まりやすいっていうだけじゃない?」
美夏は私の素っ気ない返事を気にすることなくスマホで写真を取り出した。
「そんなことしてもぜったい無駄なのに……」
「おー! 私は気づいてしまったのだ!」
「え?」
突然叫び声をあげた美夏は私にスマホで撮った写真を突きつけた。
「いや、近すぎて何も見えないし」
「ふっふっふ。この名探偵美夏さんが説明してあげよう」
「わー、すごーい。ぜひ教えてー」
私は全く心のこもっていない声で続きを促した。
「ほら、ここ見て。床にトイレットペーパーの袋があるのに、ホルダーには芯しかないの!」
「うん。それで?」
「これってさ、トイレットペーパー1ロール分を全部使ったから詰まったってことにならない?」
「いやいや、さすがにそれはないでしょ。ただずっと前に補充した時の袋が捨てられてないだけじゃないの?」
「ううん。知ってるでしょ? 『トイレットペーパーの使い切りにご協力お願いします』の張り紙。あれってさ、捉えようによっては一度で全部使えってことにならない?」
「どんな非常識よ、その解釈する人」
「まあまあ見てなさい。明日には犯人見つけて、あの張り紙の文言も書き直させとくから!」
美夏はそう言って胸を張った。
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