「犬を飼いたい」と言ったら、世話焼き幼馴染が犬の鳴き真似をして甘えてくるようになった

第3話 美味しいご飯！

「じゃあ、犬はいったんやめて……ここからはあなたのペットじゃなくて、幼馴染！」

「片瀬さんなんかと違って、幼馴染しかできないことをしてあげる」

「あなたと一緒に住んでいるのはわたしだもの」

「ね？　お風呂にする、夜ご飯にする、それとも、わ・た・し？」

「わ、わたしを選ばれても困っちゃうけどね？」

「でも、あなたが選びたいなら、『わたし』でもいいけど……」

「うん。そうだよね。やっぱり夜ご飯だよね」

「お腹、空いてる？　そっか。良かった」

「実はもうできているの。今日の料理は……あなたの大好きなカレーライス！」

「ふふっ。先にテーブルに座ってて？」

「すぐに持っていくから。楽しみにしていてよね？」

（歩いていく。鍋が開き、湯気が出る音）

「うん！　よくできた！」

（近づいてくる音）

「はいっ！　どうぞ！」

（テーブルに皿を置く）

「いただきます」

（……咀嚼音）

「美味しい……」

「ふふっ、自分が作った料理なんだけどね。でも、あなたと食べるともっと美味しいの」

「どうどう？　玉ねぎはあめ色になるまで煮込んだし、ルーもいつものより高いのを使っているの」

「それにね、隠し味も入れてあるし」

「何だと思う？」

「ふふっ、実はインスタントコーヒーを入れているの」

「ほんのりと苦さと香ばしさが加わって、ブイヤベース風になるんだって！」

「入れすぎると苦くなっちゃうけどね」

「でもいい感じにできたと思うの」

「……どう、かな？」

「そっか、美味しいんだ。あなたの好みも、わたしはバッチリ把握しているものね」

（ガツガツと食べる音）

「あっ、もうっ！　そんなにガツガツと急いで食べなくてもいいのに」

「美味しいと思ってくれるのは嬉しいけどね」

「いくらでもルーとご飯のおかわりはあるよ？　お肉はここにあるのでおしまいだけど」

「あっ、お肉。あたしの方が一個多い」

「食べたい？　お肉好きだもんね？」

「育ち盛りの男の子だし。あなたってけっこうたくさん食べるほうだもんね？」

「じゃあ、はいっ。あーん」

（スプーンですくった肉をぱくっと加える音）

「えへへ、ちょっと恥ずかしいね」

（しばらく食べる音）

「ごちそうさま」

「食後の飲み物も用意してあるの」

「暑い夏にぴったりのマンゴーラッシー」

「至れり尽くせり、でしょ？」

「幼馴染としてもペットとしても……いっぱいあなたのために奉仕するんだから」

「片瀬さんにはこんなこと、できないでしょ？」

（唇を耳元に近づけて、至近距離で）

「覚悟しておいてね」