言の葉と番の花。feat雪の花は夢を見る
蒼井瑠水
みじめな呪い。
あなたは緘黙症を知ってますか?これはボクの喋れない病気と戦いながら、好きな人の側に寄り添う、そんな物語です。
キーンコーンカーンコーンーー
学校のチャイムがなって一気に騒がしくなる教室内。次の体育の授業の準備で女子は教室を抜け、更衣室。残った男子は体育着に着替えていく。
そんな中、制服のブレザーをこっそり隅っこで脱いでるボクは、どこか女々しい格好だった。
下着はタンクトップで、華奢ななで肩が露わになって下はブリーフ。やけに太ももに脂肪が乗っていて程よくむちむちして、なのにふくらはぎは細いので女子で言うX体型に近いからか。
加えて、髪をショートなボブにしているのでなおさらややこしい見た目をしてるだろう。
だから、男にからかわれる事もしばしば。
「おお、今日も可愛いな六花」
「たしかに遥斗の言う通りだな。なあ六花、キスしようぜ」
「!?(ぷいぷい)」
ボクは思いっきり首を振る。やめてくれ気持ち悪い。
ボクはそうそうに着替えて教室を出ていった。
「相変わらず喋らないよな、あいつ」
「だな」
ぼーーーっ。
授業が、終わってクラスのみんなはそうそうに準備をしてる。下校の準備。部活の準備。
ざわざわ、わさわさ。人の声に物音がたてる不規則の発声。
ボクは、だらんと机に突っ伏していた。腕を枕に顎で支点。机と一体化。
ああ、だるい。一夏が過ぎて初秋。紅葉のさす季節なのは窓から見える遠くの山が教えている。
もうすぐ、冬……か。
ボクは雪野六花。どこにでもいる、普通の高校生。……だと思いたいけど、周りからは一言も喋らない不気味な変なやつ、に見えてるだろう。
ボクは喋らない、正確には喋れない病気の持ち主。
それは、緘黙症というコミュニケーション障害。ある意味一種の呪いのようなものだ。
いつ課せられたのかも分からない禁忌を破る者に罰が与えられるかの如く、それは、とても無慈悲な呪いだった。
声を紡ごうとするだけで喉が締め付けられ、呼吸が苦しくなる。抗えば抗おうとするだけで全身を拘束される。
この症状、緘動は幼い頃はよく出たが、今はない。
しかし、今でもあの感覚が蘇るような瞬間は何度も覚えた。それは錯覚でしかないのだけれど、でも、それは今でも怖い。恨み深い死霊のように付き纏ってくる。
だから呪いなんだ。これは。
いつかこの呪縛から開放されたい。それは罪なのだろうか。
いつも、思う。でも。――――でも。
未来の自分は知っていた。いつ課せられたのかは覚えてなくともそれを施したのは正真正銘自分自身なのだと。
ただ、可哀想に見られたくて、それを理由に自分を偽っているだけなのだと。
誰かが側にいてほしいだけなのだと。
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