【SS】 〜酩酊混浴〜 ②




   ◇◇◇◇◇




「ご主人様……。さぁ、手を挙げて下さい」


 

 アルトは「んんー……?」と寝ぼけたように目を覚まし、従順に言葉に従った。


(……脱衣所か?)


 未だはっきりとしない意識の中、アルトはぼんやりとそんな事を考えた。



「はぁ、はぁ……」



 呼吸を荒くしながらアルトの服を1枚ずつ丁寧に脱がしていくレイラリーゼだが、本人も初めてのお酒で思考がまともではない。


 ポワポワと身体が熱く、ただ大好きな人の匂いに下腹部がキュンッと締め付けられるような感覚が続いている。



「ふぅ〜……お前も早く脱げ……。約束を果たすんだろ?」


 アルコールに顔を赤くしているアルトは、髪を掻き上げるようして、レイラをからかうように顔を覗き込むと…、



「仕方ないな……俺が脱がしてやるよ」



 服のボタンに手をかけた。



「ご、ご主人様? ……はぁ、はぁ……んっ」


 レイラリーゼにとって、アルトに服を脱がされるのは初めての経験だ。いつもは自ら脱ぎ捨て執拗に迫っている。裸なんて何度もアルトに見せている。


 ……だが、どうだろう?


 レイラリーゼはピシッと固まり、耳まで真っ赤にしているだけだ。脱がせようとする手が少し触れるだけで、身体の奥が疼いて、恥ずかしさが湧き上がってくる。




 パサッ……



 下着姿になったレイラリーゼに「ふっ」とイタズラに笑ったアルト。


「レイラ、後ろを向けよ」


「……ま、前から外して下さい……」


「……? 手元が見えないだろ?」


「時間がかかっても、い、いいです……」


「まあ、いいが……」



 アルトはレイラリーゼに背中に手を回す。しかし、より匂いが濃くなった事にレイラリーゼはもう限界だ。



「ご、ご主人様!」



 強く強く抱きしめ、「はぁ、はぁ」と匂いを嗅ぐ。

 むず痒いところを押し付けるようにして「んっ……はぁ、ぁっ」と疼きを鎮めようと試みる。



「……っ、レ、レイラ。ちょっと、待、」



 ふにっ……!!



 レイラリーゼはアルトの言葉を遮るように唇を押し当てる。「おい」と口を開こうとしたアルトに舌を差し込み、口内で絡ませる。


(ご主人様の……カタイ……です)


 腹部に当たっている“モノ”の感触とクチュクチュと唾液が交わる水音。



「はぁ、んっ、んんっ、はぁ、ご主人様っ、んんっ」


「はぁ、こら。おい。いい加減に、」


「んんっ、ぁっ、ぁんっ、んんッ」



 トンッ……



 アルトはレイラリーゼを軽く突き放し、「はぁ、はぁ……」と息を荒くする。


 交わった唾液は糸を引き、それをペロリと舐め取りゴクリと飲み込むレイラリーゼにアルトは息を呑み、その妖艶な姿にドクンッドクンッと心臓が鳴る。



「……ご主人様。では、一緒にお風呂に入りましょう……」



 パサッ……



 下着を自ら脱ぎ捨て、アルトの手を引き風呂場へ。ポーっとする頭の中、必死に理性を取り戻そうと努めるアルトだが、アルコールによる思考鈍化。


 先ほどの深いキスとレイラリーゼが押し付けて来た柔らかい身体に何も考えられなくなっている。


 少しでも落ち着こうと、冷水シャワーを頭にかぶるアルトだが、未だ火照った身体を持て余したブレーキが壊れている美女が1人。



「……いい事を思いつきました」



 唐突な言葉に「……なんだ?」と振り向いたアルトはまたもゴクリと息を呑む。



 タラァ……


 身体を洗うとろみのある液体を自らの身体に垂らしながら、レイラリーゼは妖艶に微笑んだ。



「身体同士で洗えば、無駄がありません……」



 ガタッ!!



 アルトはレイラリーゼを押し倒す。



「レイラ。あまり煽るな……。“初めて”が酒の勢いなんて、俺は認めてやらない……」


「……ご主人様。でも、身体が熱くて……レイラ、もう、ダメでムズムズして、」



 アルトはレイラリーゼの口を塞ぎ、柔らかな胸に手を伸ばした。問答無用で舌を差し込み掻き乱した後、ゆっくりと顔を離す。



「はぁ、はぁ……ご褒美は充分だろ? どうなんだ、レイラ? この酒に酔った状況でこれ以上を求めるか……?」


「……ご主人様……」


「レイラ……。いつか抱いてやる。俺が覚悟を決め、お前を娶ると決めたその時に……」


「うぅっ……」


「“邪魔者”がいないところで、じっくりとな……」



 アルトはそう呟き、風呂場の入り口へと視線を向ける。「ひゃっ……」と小さく悲鳴をあげたサーシャは、慌てて自慰の手を離し、顔を引き攣らせる。



「……サーシャ」


「ア、アル様が悪いのです! わ、私はもう吸血衝動が抑えられなくなり、少しでも紛らわせようと、」



 ズボッ!!



 アルトはサーシャの口に指を2本突っ込み、ニヤリと笑みを浮かべる。


「……ほら、血だ。飲んでみろ……」



 ズワァア……



 アルトは呟きながら指先に魔力を集めると、サーシャは「んんっ、あっあっああ!!」と悶絶し、ガクガクと足を震わせペタリと座り込んだ。



「はぁ、はぁ……レイラ。風邪を引くなよ」



 アルトは未だポーっとする頭を押さえながら吐き捨てて風呂場を後にする。



 風呂場に残ったのは……、



「うぅうっ、うぅ!! ご主人様ぁあ……! 心臓が壊れてしまいますぅう……!!」



 性欲は歓喜に打ち消され、感動のままに涙を垂れ流す全裸の美女と、「アッ、ルゥ様ぁっ!」なんてビクンビクンと身体を震わせ、絶頂に置き去りにされた吸血鬼だけだった。



(……サ、サーシャがいなければヤバかった! クソッ!! アイツ、クソ、クソッ!)



 理性との頂上決戦に勝利したアルトは、まだ濡れたままベッドに倒れ込み、レイラリーゼの柔肌と唇を思い返す。


 翌朝、(お、俺は何を口走っていた……!?)と顔面蒼白になる事など知る由もなかった。








  ※※※※※【あとがき】※※※※※



SSまで読んで下さり感謝!

次話から2章となります! 頑張ります!

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