第39話 新たな仲間?

(もうしわけありませんでした、もうしません)




「はぁ、もういいや、次から魔法使うときは私に一言確認とってね。」




無事宿に帰ってきた私たちは、現在アスラにあの魔法の危険性を説いていた。


当の本人は聞いているのかいないのか、とりあえずといった感じで何の感情もない棒読みで謝罪してくる。




(わかった!ごめんね?)




「うん、反省しているならもういいよ!」




とりあえず言質が取れたことで、もうこれ以上は無意味だと思った私は、説教を切り上げた。




すると私の肩からベッドに移動した蛇が今日の魔法を振り返る。




(それにしても、あの数の魔物全てに状態異常をかけるなんて、はっきり言って精霊ができる許容をこえているぞ・・・)




「どういうこと?それってつまり、アスラが凄いってこと?」




(認めたくはないが・・・そういうことだな。)




そういった蛇は、渋々その事実を認めた。




「まぁ強いことはいいことだよね。実際魔物を混乱させることができるって使えそうだし・・」




(貴様は軽くとらえているぞ・・あの数に付与できることもそうだが、真に恐ろしいのはその度合いだ。おそらく今日そこの精霊が魔物にかけた状態異常は混乱だろうが、我や貴様がかけたとしてもあぁも狂乱することはないだろう。あそこまで自我をなくす状態異常をかけられる者など片手で数えられるほどいるかどうか・・・)




それを聞けば、今日起こったことの異常性が少しは理解できた。


確かに私が使った時はあんなにも魔物が狂うことはなかった。


というよりも、かかっているのかいないのかわからないくらいの変化しかなかったため、それが通常なのだとしたら、アスラの使った今日の魔法は異常なのだろう。




(考えられるとしたら・・愚娘から作られた存在であるため、よほど親和性が高いか、この精霊が特別なのか・・・加えて、月属性の精霊というのも厄介だな、この世界では珍しい属性の精霊だ・・他の精霊術師の前ではあまりその魔法は見せない方がいいだろうな・・厄介なことに巻き込まれる可能性がある)




「はぁまた面倒ごとが増えた・・・ただでさえ秘密が多いっていうのに、これ以上増えても覚えられないよ・・」




(我の知るところではないな。そも、精霊術師というのはあまり見かけないのだろう?なら特段気にすることでもあるまい。)




「まぁそうだね、それに今のところパーティー組む予定もないし、見られたらその時考えればいいか・・」




そう言って私たちはアスラの問題をいったん棚上げすることにした。




「そういえばさ、あなたの名前決めないと。」




(名前?昨日も言ったが我に名前などない・・その必要もない。)




「そうは言っても、ずっと蛇って呼ぶのもなんかおかしいでしょ?私がつけてあげるよ!」




そういった私に、蛇は訝し気な目を向けてくる。




(また惰蛇だとか抜かさないだろうな?)




「何よ、あれはあなたが突っかかってくるからそう言っただけじゃない!」




(ふんっ、まぁいい。どうせつけるならこの我にふさわしいものを考えよ!生半可なものでは満足せぬぞ。)




その生意気な態度にも慣れた私は、はいはいとあしらって名前を考える。


だが、実はもう森から帰る途中にずっと考えていたため、候補は何個かあった。


その中から絞っていき、決まった名前を口に出す。




「・・・・スイなんてどう?」




どうせ否定されるだろうなと若干の恥じらいを出しつつ告げた名前に、意外にも蛇はその名前を何度も反芻し飲み込んでいた。




(スイ・・・スイか。ふんっいいだろう!愚娘にしては悪くない、これからは我のことをそう呼ぶがいい!)




仕方なく認めたような雰囲気を出しているが、声にはほんの少しだけ喜色が浮かんでいるのが分かった。




「本当、生意気ね。」




そう言いながら私も頬が上がるのが自分でもわかった。


かくして、蛇改めスイが新たに仲間、と呼んでいいのかは不明だが、加わったことに満足しつつ、夜も更けてきたため、私たちは布団に入って休むことにした。




私が被っている布団の上で眠るスイは、ほんのり暖かかった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




今日はアスラの魔法を試しにいつもの森にいった。


アスラの魔法はどうやら精神操作らしくて、森にいた魔物の大群にそれをかけて危うく死ぬところだった。


何とか無事に切り抜けたけど、あの魔物が全部私たちに向かってきていたら危なかった。


帰ってアスラに説教をしたけど、伝わっているのかはわからない。


伝わってたらいいけど・・・




後、スイが仲間?になった。


名前を決めるときにどうせ断られるんだろうなって思ったけど、案外気に入ったみたいでよかった。


スイの名前の由来は、水魔法が凄いから。


私でも、あんなに多くの水を魔法で出すことはできない。




まだまだ修行が足らないな・・・あの魔物に勝つためにも、頑張らなくちゃ。




魔力も今日はいつもより多く稼げたし、冒険者になって報酬だって安定してきた。


群れを倒した時は、まだいっぱいそこに魔物がいたから魔力を回収することができなかったから。それだけは残念だったな・・・


この調子で、一日でも早く村のみんなが生き返れるように頑張らなくちゃ!


待っててね皆・・・私頑張るから。




                                ラルーナ




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




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後書き


やっと蛇に名前が付きました。

もっと早くつけたかったんですけど、初日に喧嘩してしまったのでつけられませんでした。笑


こうやって自分で書き始めてみて、最初にこういう展開でこうなってって決めていたとしても、いざ書き始めると登場人物が勝手に動き出して物語を変更してくるんですよね。その感覚が新鮮で、書いてて楽しいところでもあります。

例えばスイの名前なんかは、本当は初日の夜に付ける予定で、喧嘩なんかさせる予定じゃありませんでした。


なんですけど、この態度で話しかけられたらさすがのラルーナも切れるよな?って思って書いていると見事に脱線していきました。

こういうところが書き手の楽しみだと思っています。


長々と失礼しました。



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