第10話 新たなる生 ー始まりー
一際まばゆい光に包まれた後、気が付くと私は何もない草原のような場所にふわふわと漂っていた。
ここはどこか、辺りを見回すように視界を振ると、それに呼応するように体全体がくるくると回る。
エリスの言うとおりであれば、今の自分は微精霊になっているはずなのでその影響だろうか。慣れないその感覚に早く適応するために、辺りを意味もなく、飛び回ってみる。
そうしてしばらく進んだ後、遠くの方で見覚えのある大きな大木が目に入った。
通常であれば、その大木の周りは栄えているとはいえないまでも、集落を築いているのが分かるくらいには栄えていたのだが、今はその片鱗もなくそれが、起きたことが現実だったのだと否が応にも気づかされた。
それでも、私は思ったよりも悲観していないことに気づいた。
目的ができて、それを叶えるために悲しんでいる時間などないと、思えるようになっていたからだろう。
(とりあえず、自分の体に戻らなくちゃ、)
そう思った私は、エリスが言っていた自分の死体があるはずの大木の根元に急いだ。
そうやって大木のもとまでやってきて、それを見上げるように視線を上げると、立派な存在感を放っていたよく村の人間の休憩場所に利用されていた大木は、上から下まで見事に斧で割ったかのように真っ二つに裂かれており、影を作り出していた涼し気な緑の葉は一枚もついてなく禿げあがっていた。
そのあまりの変わりように胸が苦しくなるのを感じつつ、私は目的のために先を急いだ。
大木の下で眠るように横になっている私を見つけた私は、(こうやって自分のことを見るなんて変な感じ)などとのんきに思いながら、せっかくならと観察するようにじっくり見てみる。
ちゃんとエリスの言った通り傷などの外傷は見当たらなく、死ぬ前に魔物の目に反射した所々破けていた服や、乱れていた髪もすべて整えられており、母譲りの黄色味の強い茶色に、父譲りの少しウェーブががった癖のある髪は、母が風呂上りによく梳いてくれた時のようにさらさらと風に揺れていた。
少し感傷に浸りそうになる気持ちをぐっとこらえ、私は観察をやめ、意を決して横になっている自分の体に飛び込んだ。
入る瞬間少しの抵抗を感じたが、そのあとは特に何もなく、何も語ることがないくらい順調に私は元の体に戻れた。
緊張していたのが馬鹿みたいだと思いながら、私は戻った自分の体を起こす。
先ほど浮いて移動していたからか、妙に体が重いことに眉をゆがませながら、手を握っては閉じを繰り返してみるが特に異常は感じられなかった。
そのことに安堵し、立ち上がった私はひとつ体をほぐすように伸びをし、一人ごちる。
「んんーーっと!さて、これからどうしようかな。」
目的は明確に決まっているのだが、今悩んでいるのはその過程だった。
魔物を倒して魔力を集めるのならば、一番いいのはやはり冒険者だろう。
だが、ここでいくつもの問題があった、まずは距離。
この大陸には五つの大国があり、私が住んでいるこの村はアマリウス王国に属する小村である。
大陸の西に構えるこの国の、さらに西寄りに構えられたこの村は単純に王都はおろか、一番近い町までの距離が遠い。
いまだ魔物を刈ったことも、野営の知識もない私では、一番近い町で歩いて一カ月はかかる道のりを無事に乗り切れるか怪しい、下手をすれば餓死してしまいそうである。
ではどうするか、月に数度来る商人に事情を話し、町まで乗せていってもらうか。いきさつを聞けば同情くらいしてくれるだろう。
もう一つあるとするならば、騎士が来るのを待ってそれに便乗する形で乗せていってもらうか、だ。
しかし、懸念があるとするならば、どちらもいつ来るのかわからないといったところか。
そうやって私がうんうんとうなっていると不意に視界の右上を見覚えのあるものが横切った。
そちらに視線を向け、横切ったものを確認する。それは私がよく知る体を借りた微精霊だった。
「あら、あなたまだこんなところにいたの?」
そう問いかけると微精霊は私の周りをくるくると二度ほど回った後、私の肩に着地した。
「あなた、私についてきてくれるの?」
ふるふると私の肩で震える微精霊は、私にはなぜか了承しているように見えた。
一度精神が交わったことで、考えが理解できるようになったのだろうか、そんなことを考えながら一人でいるよりも寂しくないだろうという思いから連れていくことにした。
「じゃよろしくね、ってあなたは名前とかあるの?ずっと微精霊じゃ長くて呼びずらいよ。」
そう聞くと微精霊は、なんとなく理解できる範囲で肯定するような感情が浮かんでいるのが見えた。
「名前がないの?じゃ私がつけてあげようか!」
妖精から肯定が返ってくる。
「んーじゃーねぇ、あなたは今日からアスラ!アスラよ!どう?いい名前だと思わない?」
そうやって問いかけると、微精霊は名前を与えられたことが嬉しいのか、私の周りをぐるぐると飛び回った。
「あは!気に入ってくれたのね!じゃこれからよろしくねアスラ!」
そうしてしばらくアスラと戯れていると、足に何かがぶつかる。
確認するとそれはエリスから預かった妖収の魔玉だった。
足元に転がっていたそれを慌てて拾いなおし、大事そうに持ちあげると私はあることを思い出した。
「そうだエリスの使っていた収納魔法、忘れないうちに練習しないと!」
そういって私はそれならばと、今後の活動方針を決める。
「それならやっぱり、ここで誰かが来るのを待つべきだよね、変に一人で行っちゃうと絶対生き残れないよ!」
そういって変なところで威張りながら、アスラに同意を求める。
アスラは私に意見することはないのか興味がないのか、相変わらずぐるぐると飛び回っていた。
幸い山の浅いところでキノコを採取したこともあるし、川に行けば水も運が良ければ魚だって手に入る。
そうやってここで魔法の修行をしながら、誰か人が来るのを待っているのが一番いい、そう思った。
急がなければいけない理由はあるが、まずは自分が強くならないと死んでは意味がないのだ。
何回も生き返れるとは限らない、慎重に行くのが一番いい、そう思いながらまずは今日のご飯を取りにいかなければと意気込み、私はアスラを連れ添い山を目指していくことにした。
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後書きでございます。
このような稚作をフォローしてくださった方にまずは感謝を。
本当に夢のようで、ありがたくて何回も何回も確認してしまいました。
これからも、面白いものが書けるように精進してまいりますので、どうかよろしくお願いします。
そしてまだフォローされてない方へ
稚作ではございますが、もし少しでも面白い、続きが気になる等と思っていただけましたらぜひフォロー、いいね等よろしくお願いいたします。
では、簡単にはなりますがこれにて失礼いたします。
ここまで読んでいただきありがとうございます、
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