第48話

最上の猛炎グランドファイア最上の猛炎グランドファイア最上の猛炎グランドファイア……ふぅ、これで結構片付きましたか」


「ありがとう、常葉。木山」


「いえ、私たちはご主人様の──」


「奴隷じゃないからね?」


 彼女らが次々と放った最上級の炎が魔獣の群れを焼き尽くした。


 魔獣達がそれに気づいた時は遅かった。


「GA!?」


「GAAAAA!?!?」


 群れ一帯を襲う火炎地獄。奴らの逃げ道は僕たちがいるほうだけになった。


 僕は彼女たちの誘導に感謝しながら拳を振るった。


「ふん!」


「GAAA!?」


 初めての実践……と言うわけではないのだが、まぁ初めて魔獣と戦った感想としたら、人間と戦う時とはやっぱり違うと言うものだった。


 まぁ最近まで仲間だったやつを殺したんだ。罪悪感はないわけでもない。が、それを僕は仕方ないで切り捨てた。


「うん、普通に戦えているね」


 僕は拳に伝わった感触を確かめる。手についた血を払ってから次の獲物を見定める。みんな理性を無くしたような虚な目をしながら僕らに向かってくる。悲しいものだ。あんな女に誑かされたばかりに。


 ん?待てよ?彼女が行ったのは120年前だったはずだ。その時にはこいつら生まれていないはず……遺伝?


 そんな考えに至った僕は思わず引いてしまった。スキルが遺伝子にまで影響を及ぼすとは思っていなかったからだ。


「……面倒な」


 魔獣は普通自然発生する。が、生き残ればもちろん子を生す事だってある。そうやって麗華の魅了を持った魔獣を増やしたのだろう。だるい。本当にだるい。


「……結局、魔獣を悪として狩らないといけないなんてね」


 一応こうならないように立ち回る事はできた。が、そうすると更に酷くなる可能性があった。麗華を殺せない上に魔獣の暴走を許してしまうという、最悪の結果が。


 それだけは駄目だった。


 もし魔獣らの暴走を止めることを優先して動いた場合、麗華を殺せなかった。そして、こいつらと同じような魔獣が量産されただろう。


 そして彼女はそれをどうするか。もちろん僕に仕掛けるだろう。


 そうなるとこの街が壊滅する。それはミリア王女が許さなかっただろう。麗華を殺せても、魔獣の暴走を止められても、僕と生き残った魔獣ら、そしてネヴァが王女の手によって殺される。


 結局、こうするしかなかったのだ。


「……めんどくさい」


 範囲攻撃が使えたら。そう思いながら僕は一体一体相手取る。体力の消費はまだ大丈夫だとしても、ネヴァから貰った魔力が底を着きそうだ。


 どうしよう。


「……ハルキ」


 と、その時僕のそばに僕の反対側で魔獣を対処していたネヴァがやってきた。


「ネヴァ、どうしたんだい?」


「ミリアからの伝言。終わらせる一掃する


「了解。常葉!木山!退散するよ!!」


「「はっ!!」」


 僕は彼女らを連れてミリア王女の元へと向かった。その道中アグライアとも合流して、戻りつつ一緒に魔獣をできるだけ片付けた。


 そしてミリア王女の元に戻った時には、すでに準備が終わっていたようで、


「それでは、放ちますよ。私の後ろにいてくださいね」


 と行ったのを最後に、僕たちから視線を逸らして、真っ直ぐ標的だけをその目に捉えた。

 

 その表情は真剣そのもの。きっとこれで全て終わらせるつもりなのだろう。


 責任を感じてるんだったら最初から異世界召喚なんてしなければ良かったのに。不用意に麗華のメモを信じるからそうなるんだよ。


 でも、これも定めだったのかな。


 僕たち以外が死ぬのは結局異世界転移しようがしまいが一緒だったし。


 

 ──そして、その時は来た。



風神ガブリエル



 神の名を冠した魔法は数少ない上に使えるものとなるとそれはいないも同然となる。


 が、他でもない神本人が使えば話は別である。



「私の領域に来るな。天使下僕は邪魔でしかないんですよ」



 そして放たれた、風の暴力。


 風は物を、人を後押しする小さな力だ。それがいくつも重なればそれは音速を超えた弾丸よりも早く、巨人が放つ本気のパンチよりの強く、そして、武器の中でも殺傷性が高いとされる刀よりも鋭くなる。


 初めは静かに。終わりは絶叫を彩りながら。


 それは向かってきた残りの魔獣全てを葬り、姿を消したのだった。









「これで、契約は満了されました。お疲れ様でした、ハルキ」


「はい。では、私たちはこれで。あ、常葉と木山のメイド起用、よろしくお願いしますね?」


「はぁ……分かりましたよ。勇者らと赤紅騎士団の処分をしてくれましたからね。それを使えば問題ないでしょう」


「それと──」


「跡地、ですよね。分かってます。そこは黙認しますよ。ですが、冒険者らがそこに行っても文句は言わないでくださいね?」


「分かってますよ。そこはクォーバルらも分かってるはずです」


 僕はそっと胸ポケットを触った。


「それでは、ミリア王女。僕らは戻ります」


「……後任せは良くないと思いますが?ねぇ?アグライア?ネヴァルガル?」


「……はぁ」


「分かった」


「と、言う事なのでハルキ?」


「えぇ……」


 それから僕たちは疲れた体に鞭打って、なんとか魔獣の死体を処理したのだった。



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