第4話 対抗戦

「おはよー真くん、昨日はよく眠れたかな?」


 担任の柊が屈託のない笑顔を落合に向ける


「は、はいぃ」

「えへへ、よかったぁもしホームシックとかになっちゃったら先生に相談してね! なんとかするから!」


(……なんとかなるモノなのか?)


「よーし! じゃあみんなホームルーム始めるよー」


 どの生徒よりも元気のよい柊のかけ声でホームルームが始まり

 1限目の体育の授業が始まった。


「朝から体育だりぃ……やっぱサボればよかったぜ」

「こぉら、笠松ぅ、サボりなんてよくないぞ、先生とグラウンドを百周回ろう、そうすれば気持ちいい汗がかけるぞ!」


 体育の授業の先生の名は朝比奈(あさひな)小鞠(こまり)

 生徒との距離感が近くすぐにボディタッチをしてくることで有名


「それにいい汗をかいた後のビールは上手い!」

「なーに言ってんだこの人……やっぱサボれば良かった……きぃつけろよ落合、この先生ヤバイからな色々と」

「たはは……」

「落合そこは腹から大きな声で笑わんかーい! ナハハハハ!」

「う、うるせぇ! 朝比奈先生! とっとと授業進めろよ!」

「そうだナ、こんなことしてたらまーた柊せんせいに怒られちまうぜぇ……よぉし! 今日はドッジボールだ! みんな私についてこーい!」


 うおおおおおおおおおおおお!!!! という凄まじい気迫のかけ声を出しながら走り出す朝比奈を仕方なく追う生徒たち


「いつもこうなんですか?」

「あはは……今日は何時もより張り切ってるかも……」


 優等生の花梨も困り顔


「今日は高等部二年A組VS中等部三年B組の対抗試合をしてもらうぜ!」

「はぁ!?」

「中等部!?」

「朝比奈ちゃん! なに言ってんの!?」

「ふ。ふ。ふ、年下だと思って甘く見ると痛い目をみるぜ! いくぜぇ! 中等部諸君! 上級生に目に物見せてやれ!」


 それを聞いて呆れている中等部諸君


「せ、先生が言うならその対抗戦? をやらせて貰いますが……」

「マジかよ朝比奈先生……」

「わ、わたし! 足を引っ張らないように頑張るね!!」


 突如として高等部二年A組VS中等部三年B組の全面対抗戦が執り行われる事となった。


「よ、よろしくね、あとなんだかごめんね」


 とクラス代表として花梨が中等部の代表に右手を差し出す。


「よろしくお願いします。やるとなったら全力でやりますのでそちらも全力で来てください、負ける気ないんで私達」


 中等部側の代表はそうキッパリというとキリッとした目線で花梨を貫く


「ゲッ!? 委員長……上級生に喧嘩売ってるよ……」

「か、格好いい……黒夜ちゃん……」


「黒夜(くろよ)百蘭(びゃくらん)だ。中等部の首席、あんま舐めてると痛い目をみるぜ落合気を付けろよ」

「う、うん……」


 そんな百蘭より笠松の事が気になる落合


(気が付けば俺の隣に立ってるが……どうしたんだ? あの時の記憶を取り戻したって感じでもないが)


 そんな落合の疑問など気にすることなく朝比奈のホイッスルが鳴り試合は開始された。

 そして始まる怒濤の百蘭の攻撃により高等部の生徒たちは一瞬で三人になってしまう、残ったのは落合、笠松、花梨の三人


「な、なにをやっとるんだ! 情けないぞぉ! 高等部たち!!」


 朝比奈の渇が入る


「笠松先輩、今日のところは私が勝たせてもらいますよ」


 と言って百蘭は笠松に向かってボールを投げる

 それをおっとと躱す笠松


「……反射的に避けちまった……当たりゃよかったぜ」

「なに言ってんのよ! 葉!!」

「!? お、おいどうしたんだお前……」


 花梨の瞳は真っ赤に燃えていた。それを見て顔を青くする笠松


「落合君! 葉! こんなんじゃ先輩として情けないわ! ここから巻き返すわよ!」 

「ま、巻き返すってホンキで言ってんのかよ……」

「黒夜さんは一人で私達のクラスの大半を倒せたのよ? 先輩である私達なら一人でもっと多くの生徒を倒せる! 行くわよ!」


 外野にいた中等部の生徒が投げてきたボールを受け止める花梨

 そしてそのボールを中等部の生徒に向かって投げ込む

 ボールは直撃しその反動で再び花梨の手元に帰って来る


「ふ、これが私の必殺ボール、「月夜桜の世迷い言」よ」

「な、なんだその意味不明な名前の技は……」

「……なるほど、笠松先輩だけを心配してればいいと思って居ましたがそれは大きな間違いだった様です。では勝負しましょう大音寺先輩……私の「大火の罪」と先輩の「月夜桜の世迷い言」……どちらが”上”か勝負しましょう……!」


 嘗てはドッジボーラーとして名を馳せた二人の天才による戦いの幕が今、切って落とされようとしていたのだった……


「うおおおおぉいいぞぉかっこいいぞぉ!」


 はしゃぐ朝比奈


「落合……俺達は外野行ってようぜ」

「は、はいぃ……」


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