みんなくそ
@jmd56
第1話
高校三年生、バカ暑い夏。
文化祭の劇の脚本に誘われた。誘ってくれたのはジェンコちゃん。私とジェンコは仲がいいし、私はジェンコと話す時は猫を被らない。いつもほにゃほにゃキャラ設定でいってるけど。ジェンコの前だったらテンション低めでいく。そのくらいいい感じの仲。
脚本に誘ってくれて嬉しかった。何かを創作するのってすき。好きだけど頭の中でいつも留めてたから。でも劇の脚本ってちゃんと実現する。楽しい響き。心臓から脳ミソにかけてゾクゾクする気持ちで、私は「いいね、楽しみ」って言った。
テーマは桃太郎をアレンジした黄桃太郎。体育祭で決まった団は黄団。だから黄桃太郎ってジェンコは提案した。劇っていっても体育祭と紐付けされてるから、適当じゃだめ。ちゃんと面白い劇にして黄団の勝利に貢献しなきゃいけない。
最初は黄桃太郎については、黄桃の桃太郎。だから何?って感じであんまりいい案だと思ってなかった。でもなんだかんだで黄団は黄桃太郎をすることになった。
黄桃太郎をすることに決まった夜。私はいつの間にか脚本を書いてた。ジェンコと一緒に考えるっていう話は頭の右端ら辺に自然に追いやってた。故意じゃなかった。
話題の時事ネタとか、面白いキャラ設定とか、伏線とか、起承転結とか、私が30分で書いた脚本はそれを全部取り込んだ。私は自分が書いた脚本のことが大好きになった。面白い、これなら青団にも赤団にも負けるわけない。ジェンコにも見せてやろ。
LINEで送った。
なんだか急に自信満々でこの脚本を送るのが恥ずかしくなって、謙虚に
「ちょっと考えてみた。」って送った。
ちょっと所じゃない。もう完成してるのに。
私は浮かれてた。だってこんなに完璧な脚本は私じゃなきゃ作れない。天才か、私。きっとこれを送ったらジェンコは
「いいじゃん」やらグッドスタンプを送るんだろうな。
でもかえってきたのは4行にもなる反論だった。
オリジナリティが強すぎるやら、桃太郎にもう少し話をよせろやら。
私は胃の中が熱くなる感じとか、目がちょっとギュッて熱くなる感じがした。
その次に私はこう考えた。私の脚本が完璧だから反論してるんだな。だって、オリジナリティが強すぎるとダメな理由がわからない。桃太郎に寄せて面白くなるの?ならないだろ?って思ってさ、あー、頑張って私の悪い所を粗探ししてるんだな。
だから私は寛容になって、なるほどって言ってるスタンプを送った。それだけ。
「一緒に考えようよー」ってきた。
正直いって嫌だった。誰かの考えがこの脚本に混ざったら、改善されるんじゃなくて悪化する気がしたから。でも、そういう条件だったなって思いなおして、
「うんうん」ってとりあえず送ったけど、ついでにジェンコの反論に抵抗して
「でも、赤団って創作恋愛するらしいし、別にオリジナリティあったって良くない?桃太郎じゃ創作恋愛とかにインパクトで負ける」とも送ってやった。
「キャラ設定で十分勝ってるよ。」
なにそれ、
キャラ設定で勝ってるから別の部分は負けてもいいんだ。
頑張って私の悪いとこ探してる。
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