傷心中に公園で幼馴染の妹を段ボールから拾ったら、めちゃくちゃ世話してくれるようになった

白メイ

この感情と手の繋がり

第一章 繋げたらいいな

第1話 段ボールに入った少女

 俺、高宮たかみや れんには二年間付き合っている彼女が存在する。その彼女の名前は小林こばやし 六花りっか。学校でも人気で誰とでも仲良く話しているような陽キャの部類に入る彼女。


 対して俺は、同じ学年に居る友達は二人で一つ下の後輩に一人程度の慎ましい感じの人間。冴えない顔をした俺と容姿端麗な六花はまさに月とスッポンで、幼馴染という立場が無ければ出会う事さえ出来なかったと思う。


 そんな彼女に今日は「放課後に学校の体育館裏で話があるから来て欲しい」と言われ向かっていた。六花とは幼稚園からの付き合いで両親ともに仲は良く、いつか同棲しようという話しをしていたほどだ。そのことを両親に話して俺が一人暮らしを始めた一年前に今の2LDKの部屋を借りさせてもらっている。


「そろそろ同棲の話かな?」


 同棲の話をしたのは二年ほど前の付き合って少しした頃に話していた事で最近はあまり部屋に来ていないが、春で時期的には悪くない。もうすぐでゴールデンウィークに入るからその時にでも荷物を持ってくるのかもしれないな。


 付き合い始めて二年の春、今日から心機一転楽しい生活が始まるのかなと浮足立った気持ちで体育館裏にたどり着く。が、そこには幼馴染の六花と知らない男子生徒が立っていた。


 誰だろう?ネクタイの色は青…同じネクタイの色なので二年生なのはわかるが、五クラスもある学年の全員を把握しているわけではないので分からない。


「お待たせ六花。話って何?」

「蓮君、私たち別れよう。私、好きな人が出来たの」


「え?もしかして、隣の…」

「そう、サッカー部のエースで凄く優しいんだ。だからごめんね」


 突然の事に頭が理解を拒んでいる。一年の時から六花はサッカー部のマネージャーをし始めて、二か月ほど経った時から部屋にあまり来なくなったがそう言う事だったのか。


 俺は六花が好きになったという男子生徒を見ると顔のいい男だった。やはりイケメンか、俺みたいな冴えない人間とは釣り合っていなかったんだ。そのことを改めて思い知らされる。


 でも、彼女の隣に居るのが俺ではないことにモヤモヤする気持ちがあるのも事実で、これから一人…どうしたものか。ずっと一緒に居れると思っていた彼女はもう存在しない、十年以上の付き合いが今日をもって絶たれる事になるのかもな。


 そう思いながらゆっくりとした足取りで自宅マンションへの道を歩いていた。


 一人で歩くものだいぶ慣れてきてはいるものの、彼女と別れた事の喪失感で胸にぽっかり穴が開いたような。この穴がいつか隙間なく埋まる日は来るのだろうか。そんな気持ちのまま歩いていると公園に差し掛かった。


 この公園は自宅マンションから徒歩五分程度の場所にあり、ブランコに鉄棒、遊具など小さい敷地にしては色々ある場所だ。少し公園内を見渡してみると、赤く浮いた自販機が見え何か飲んで心を落ち着けようと公園に入る。


 何があるのか一通り見て、ホットのカフェオレを買い近くのベンチに座ろうと歩き出す。


 だが、無人のベンチに近づきが視界に入り足を止める。誰も座っていないベンチの左隣に、段ボール箱に入った制服の少女。その子の手には『お世話します、拾ってください』と書かれた紙が。


 普通なら警察に通報したり、無視するのだけど俺には出来なかった。だってその子は見覚えがある少女だったからだ。


「真凛ちゃん何してるの?」

「あ、蓮兄さんですか。お久しぶりです」


 両目を長めの前髪で隠し、その中学生とは思えないほど実った胸。ホワイトに近いプラチナブロンドの髪の毛はショートボブであまり人と話すのが得意ではないのか大きく口を開けて話してはいない。


 そんな彼女は俺にとって今一番会いたくない人…ではなく、その妹なのだ。


 彼女は昔から男性が苦手で最初俺が出会った頃も中々話してはくれなかった。幼馴染の現在元カノである六花と付き合いだしてから心を開いたという感じだろうか、今では普通に話ができる程度には仲がいい。


「改めて聞くが真凛ちゃんは何してるの?」

「えっと、さっきうちに帰るとお姉ちゃんと知らない男の人が居て、鳥肌凄かったので逃げてきました」


「そうなんだ…」


 深いため息が出る。六花のやつ俺と別れてすぐ男を連れ込んだのか。


「蓮兄さんは何してるんですか?」

「ちょっとな、落ち込んでて休憩しようと立ち寄ったんだよ」


 真凛ちゃんに俺と六花が別れたことを言っていいのか分からないが、六花が家に招いたと言う事を見れば別れたことくらいは理解できるかもしれない。


「いや、そんな事より。何その紙『お世話します、拾ってください』って」

「あーこれですか、もうあの家に帰りたくないので、誰でもいいので拾ってくれる人を探してる最中なんです」


「なんか昔以上に症状悪化してないか?」

「そんなことないですよ?でも家に居たあの人の視線は気持ち悪かったですね…同級生にも私の胸を見る人はいますが、あの人は段違いでした」


「そこまでひどいのかよ、なんで六花はそんな奴と付き合ったんだろうな…」

「え!?蓮兄さん、お姉ちゃんと別れたんですか?」


「あ…」


 言うつもりはなかったが言葉が自然と出てしまっていたようだ。目は隠れて分からないが驚いているのは声色で感じとれる。昔からこの子の表情を読み取るのは難しかったが、流石に俺と六花が別れたことが衝撃的だったのだろう。


「そうなんだよ、だからこれからはその男と仲良くやってくれ」


 もう二度と関わる事のない真凛ちゃんとこれ以上話すことはない。男性が苦手だったとしても俺とは普通に話せるのだ、その男とも仲良くなれるだろう。

 だから突き放すように言ったのだけど。


「ますます、帰りたくなくなりました」

「いや、でもそのままだと補導されちゃうよ?素直に帰った方が良いと思うけど」


「いやです。あんな人が居る空間に戻りたくありません」


 断固たるその意志に俺もどうしたものかと頭を抱えたくなる。


「真凛ちゃんが帰りたくないのは分かるけど、中学生が夜遅くに公園で一人でいたら何かあるかもしれないだろ?」

「れ、蓮兄さんには関係ないじゃないですか、私帰りませんので」


「っ…」


 俺には関係のない…そう言われてしまえばそうだ、何を言ってもダメならもう帰るしかないな。そう思い公園の出口まで歩きだした。


 公園の出入り口にあるポールの横を通った所で、少し気になって真凛ちゃんを見るために振り返るがやはり段ボールから出ようとはしていない。


「はぁ…」


 俺は先程より長く深いため息を落とした。今からするのはお節介だ、迷惑だと思われるかもしれない。だってこれは単なる俺のエゴなのだから。


 踵を返してベンチの近く…真凛ちゃんの前に立つ。


 驚いているのか口をぽかんと開けている彼女にこう言った。


「俺が君を拾うよ」


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ここまで読んでいただきありがとうございます!


次回:シャワー貸して貰えませんか?


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『ブラコン妹の親友が、妹に隠れて部屋にいる話』こちらも現在連載中なので気になればどうぞ!


https://kakuyomu.jp/works/16817330660041626971

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