陰キャオタクの俺、朝起きたらダウナー系美少女JKにTS⇄していたので、ずっと前から好きだった高嶺の花と百合の花を咲かせたいと思います『高百合』

秋宮さジ

プロローグ TS


「ふわぁ……」


 気だるさと共に目が覚める。良い朝だ。日差しが眩しい。そして、心なしかいつもより体が――上半身が重い。どちらかと言えば、物理的にだ。


 布団でも引っかかっているのだろうと思い、右手で胸元をまさぐる。その勢いでへばり付いていた布団を――。


 ピュッ


っでッ!」


 布団を剥がすつもりが、胸元を思いっきり引っ掻いてしまった。直後――鋭い痛みが走り、脳が冴える。


「つぅ――――って……あれ」


 だが、何かがおかしい。俺は胸元を引っ掻いた。だが、普段ならそんなことはまず起きない。俺の寝間着は伸縮性こそあれど、俺の筋肉皆無の胸板では胸元まで露出することはまず無いからだ。


 寝ぼけ眼を擦り、恐る恐る胸元を見て――そこにあるのは、二つの大きな膨らみ。



「は――――はぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあッ!?」



 秋城あきしろ渚沙なぎさ

 十六年あまりを生きてきたが、未だかつてこんな事態に遭遇したことはない。


 黄金郷エルドラド。男のロマン。禁断の果実。いや――――「おっぱい」だ。そう俗称されるものが、俺の胸から下がっていた。F、いや……Gはあるだろう。


「えっ、えっ……これって、いや。そんなはずはっ」


 つまり、端的に言えば……俺の体は、女の子に――――なってしまったのだ。この二つの膨らみは間違いなく俺の胸元から下がっており、腕を伸ばすとそれにつられるように引っ張られ、腕を降ろすとぶるんと元の位置に戻る。


 それに、何だか股間もスースーとするのだ。いや、しかし。そんなはずはない。俺の自慢のせがれに限って、俺を裏切ってどこかに消えてしまうようなことは――。


 恐る恐るズボンに手を伸ばし。股間がダルダルになったボクサーパンツを引っ張り、中を覗き――。


「オ――ッノォ――ッ!」


 衝撃のあまりジョセフ・ジ〇ースター並の感嘆詞が口から飛び出る。


「う、うっそだろ……俺の、ああ、そんなっ……こんなのって」


 自慢のせがれは持ち主に嫌気がさしたのか、股間から見事に行方をくらましていた。この十六年間、見なかった日は無かったと言っていい男のシンボルは、俺の運命共同体は。今日、この日。突如として、姿を消したのだ。


 ボクサーパンツの中には、哀愁漂うように隙間と言う名の虚空が広がっていた。


 次の瞬間。


「なぎ、うるさい! 朝っぱらから大声出して――」


 まずい。ねーちゃんが来た。そう思った直後。バァンと部屋のドアが開き――。


「――――って、きゃぁぁあ!?」


 ◇◇◇ ◇◇◇


 学園内TS転生モノ、始まります。面白いと思ってくだされば、★★★評価をお願いします……!


 本作は「男だと思っていた五年来の付き合いのネッ友とオフ会したら、隣のクラスの「棘姫」だった」と同一の世界線であるため、そちらも履修済であれば……ひょっとしたらニヤニヤ出来るかもしれません。

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