01810307
「ふー……ここも、これくらいでいいよね」
場所を移しながら、森を作り続ける。
これで何回目になるんだったかな?
あまり覚えていないけれど。
1回や2回じゃあなかったと思うなあ。
あれ、そもそも何に対しての何回目だっけ?
……まあ、いいか。
数十m以上の樹木を中心に、木々が生い茂り、草や花が繁茂する場所を見る。
森が広がっている様子を見て、自然と笑みが浮かんできた。
さて、ここも、今日でお世話するのは、終わり。
次の場所に向かわなくちゃ。
うーん、と背を伸ばす。
自宅を掃除して……持っていく荷物を選別しないと。
色々と作ったから、どれを持っていくのか選ぶのも一苦労。
森を作る以外は、それなりに時間があって、いろいろとアレコレ、モノづくりに挑戦していたことも理由だけれど。
えーと。
石の斧に、石のナイフ。
草を編んだり、山羊や羊に分けてもらった毛を編んで作った服と帽子。
うん、我ながら会心の出来だし、これは持っていこう。
……なんだっけ?この草の名前。
えーと、えーと。
……あ、そうそう。
亜麻だ。
何着も作ったから、一番出来のいいものを。
全部は持っていけないものね。
いやー、この麻ってすごく便利。
布にもできるし、紙にもできるし。
ロープを作るのには蔦とかを使っていたけど、今後はこれでいいかも。
時間はかかったけど織器も作ったし。
持っていけないものは、この小屋に置いていこう。
もしかしたら、此処に誰か来て住むかもしれないから。
……誰が?
……えーと?
えーと。
あ、そうそう、
人間っていうんだよね、たしか。
そうだ、この織器の使い方はメモしておいてあげよう。
確か文字を使うからね。人間って。
本当に珍しいよね、文字を使う動物って人間くらいじゃあないかな?
文字くらい複雑になっちゃうと。
あー、でも久しぶりに文字を書くなあ。
……これであってるかな?
自信ない。
そういえば、人間見てないなあ。
動物は、沼地の方から時折来たりもしたけど。
もう居なくなっちゃったのかな?
まあ、見てない土地に上陸していたりするのかもしれないけれど。
「気にはなるんだけれどねぇ」
かといって、積極的に会いたいとは思わないんだよね。
人間って怖いし。
まーでも、もし出会っちゃったら無視したりはしないよ。
ひどい目にあったりしたけど、この土地に住む動物の一つだし。
平等がモットーだから。
ま、そういうこともあるある。
あ、そうだ。
人間のことを考えてたら思い出した。
ずいぶん昔に人間と一緒に暮らしていたけれど。
あの時に随分と懐いていた人間の子供。
元気かなあ?
多分もう、大きくなってるよね?
背丈とかきっと、随分伸びているだろうし。
もしかしたら、背を抜かされているかも。
「どうしよっかな~?」
鳴き声を上げながら、肩に留まってくる雲雀に話しかけながら思いを馳せる。
でも、あの人間の子供なら、まあ大丈夫でしょう。
やっぱり懐いていくれたというのは大きいし。
このあたりをぐるっと回って。
納得できる森を作ったら久しぶりに会いに行くのもいいかもしれない。
そうだ、次は遠くに見えた山にいくつもりだった。
山の植林を終えたら向かうことにしよう。
ふふ、ちょっとだけでも顔を出したら、驚いてくれるかな?
喜んでくれるといいな。
「ねーんねん、ころーりーよー……」
ふっと思い出して、子どもたちを抱っこするように、服を抱いて。
思い起こした優しい記憶に身を任せて。
いつのころか、その子供に歌ってあげていた、子守歌を口ずさんでいた。
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