土産

ああああ

土産

人間誰しもお土産をもらったことはあるだろう

実際私も先日お土産を頂戴した

お土産はかなり好きだ、物をもらうという物的な満足感もあるだろうが

何より非日常感を味わえるから

「これディズニーのお土産やで」

そう言って無駄に30円もする高級な袋を渡される

中にはこれまた手の込んだ茶色い缶が入っている

「これ中何入ってんの?」

純粋な好奇心で聞いてみる、もちろんそこに悪意などが介入する余地は

微塵もないが

「いや…それは…うん…」

と神妙な面持ちで曖昧な返答をする、どこか悲しげな表情も窺える

「え?どうしたん?」

「あぁ…まぁ…うん…」

このような会話を2、3回繰り返したのち感謝の意を伝え

後味の悪いままその場を離れた

あの返答の真意は一体なんだったのか

それは彼にしかわからない、ただこのお土産が一般的なお土産でない

ということだけはなんとなく察しがついた

家に帰り、即自室に篭り、その怪しげな茶色の缶と対峙する

開けてみたいという本能的な衝動に駆られ、開けてみると

中からとてつもない量の煙が出てきた

おそらく煙の正体は毒ガスかそれに準ずる何かだろう

煙はたちまち部屋全体へと行き渡り一寸先も見えなくなった

すぐに部屋からの脱出すればいいものの混乱して

椅子に座ったまま動けなくなってしまった

だからあのときあんな曖昧な返答を…

死を悟ってゆっくりと目を瞑る

いや、まだ意識がある。恐る恐る目を開けると煙は晴れていた

そして缶の中に一枚の紙切れと本来入っているはずだった

一枚のクッキーが添えられていた

紙切れに目をやると

「ディズニー楽しかったで!」

そう書かれていた

それだけ伝えるためにわざわざこんな手の込んだことをしたのか

なかなか呆れたやつだ

一度は死を覚悟していたものなので改めて生を実感する

少し落ち着いたところで一枚のクッキーに手を伸ばす

キャラクターがデザインされた可愛らしいクッキーである

ただ、毒入りだったようでその後あっけなく死んだ

真意はここにあったようだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

土産 ああああ @mizoken

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ