True Prologue

ラム

第0章 1回目の世界 -世界の終わりに誓った復讐-

False Prologue

 燃え盛る硝煙が空を覆い尽くし、地面は不規則に割れ、瓦礫が舞い散っている。

 建物は今や燃え尽き、真っ黒な焦げた痕がその骸骨のような姿を一層強調していた。

 空は気が滅入るほど漆黒に染まり、まるで天が嘆き悲しむよう。

 目に飛び込むのは、壊滅的な風景のみ。

 その一方で、たった1人の少女が、腹部から流れる血を抑えながら、仰向けに倒れている男の手を握りしめ、涙を流していた。


「お願い、死なないで!」

「はは、やはり……狙われたか……ここまでみたいだ……」

「そんなこと言わないで! こうなったのは全部あの男のせいなのに…」

「〝あれ〟は、完璧に機能する……頼む、代わりに……世界を……」

「しっかりして! ねえ!」

「すまない……な……」


 男の目はもはや力を失い、意識は遠ざかっていくばかりで、そして、男の手がゆるむように、彼はその最後の息を引き取った。


 荒廃の中に、ただ1人取り残された少女は、涙を浮かべつつもその表情に憎しみを宿らせる。男の死を前にして、彼女の心には燃え盛る怒りと憎悪が湧き上がる。


「……私は、絶対に許さない」


 その声は風に吹かれて届き、荒廃の世界に響き渡った。

 苦しみ、悲しみ、怒り、絶望。

 これらが交錯する中で復讐への執念が形成された。


 平和を奪ったあの男が憎い。友達を奪ったあの男が憎い。家族を奪ったあの男が憎い。何もかも奪ったあの男が、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い……!


「あの男に必ず地獄を味わわせてやるっ!!」


 ここに、1人の復讐鬼が生まれた。


 は、それを観測していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る