最初から最後まで黙々と読んでいました。
とても質のいい失恋百合でした。
自分は「恋人に振られて〜」からはじまる恋愛ものが好きなのですが、殆どの作品では主人公の不憫さを際立たせる為に元恋人を所謂「クズ」もしくは「尻軽」として描かれる事が多く、元カノとの恋愛がとても軽いものになってしまう傾向があるんですよね。
勿論失恋から始まる新たな恋、と言う展開を求める読者は主人公が可哀想であればある程、その後報われる展開にキュンキュン来るものなのですが、その為だけにクズな行動、役回りを押し付けられた元カノキャラが逆に可哀想になるんですよね。
でもこの作品では、詩も、彩里も、同じだけの傷を負って、だけどそれぞれ違う答えを出していって、最後は前向きでもやっぱりどこか心が痛む…誰が悪いだの、誰が正しいだの、そんな幼稚な話ではなく、それぞれが心に恋心があって、それが混ざりあいすれ違う、そんな失恋劇を見せてくれました。
もう一度言うけど、とても質が高い！
むしろ、風香さんがちょいクズ（オブラート）なのがいいですね。
ほんの少しでも彩里ちゃんに感情移入すると結構タチの悪いNTRものに豹変するのよね。
それでも最後は詩ちゃんの幸せを応援する最善のムーブをした彩里ちゃんは、将来本当に幸せにして上げてください作者様。

一つ心残りなのは、ほんの少しでも、詩ちゃんの両親が己の行いを反省するシーン、もしくは痛い目を見るシーンが見たかった…！
大嫌いこの二人！！！