貧乏で虐げられて死んでしまった私、転生したらお嬢様でした~異世界をチート能力と銃、財力と爆破で完全に制圧いたします~

@kurekyurio

断章 どんなに偉くても、爆発すればどうにでもなる!

「うっ……」


 薄っすらとした意識の中、私は目を覚ました。

 体を縛られて、何者かに運ばれていた。

 ぼやけた視界が鮮明になる前に、私は先ほどまでの状況を思い出す。

 そうだ。今日は新しい主様が来るから、屋敷に向かっていたはず……。


 森を駆け足で進んでいると、突然何者かに背後から襲われた。

 薬でもかがされたのか、口を塞がれ私は直ぐに意識を失った。

 

「ここ何処……?」


 私はベッドの上に、放り投げられた。

 カーテンは閉められて、昼夜が分からない。

 ただ1つ確かな事は……。身の危険が迫った居ると言う事だ。


「ああ……」


 目の前には貴族なのだろうか?

 豪勢な服を着た、ロン毛の男性が立っていた。

 ニヤニヤと縛られた私を鑑賞しながら、ゆっくり近づいて来る。

 私は怖くなって必死で暴れた。


 男性は私が必死で動く度に、口角が上がる。

 そのまま私の髪の毛を掴み、グイッと顔を近づける。


「そんな怯えた顔をするな。美少女が台無しだぞ」


 私の顎に手を当て始める貴族の男。

 私は咄嗟に体を倒して、貴族から離れた。

 

「やめてください……」

「おいおい。売られていたお前を買ったのは、私だぞ」

「売られ……」


 どうやら私は、悪徳商人に囚われたようだ。

 眠らされている間に取引が進み、この男に買われたのだろう。

 最悪だ……。見るからに私に危害を加える気満々。


 貴族はベッドに倒れた私に、馬乗りになった。

 なんとか立ち上がろうとするが、手足が縛られて動けない。


「大丈夫……。直ぐに終わるから」

「そこまでよ!」


 貴族が私の服に手を伸ばした瞬間。

 突如窓が割れて、謎の人影が入って来た。

 怪しい男女が部屋に入り、見た事のない武器を構えている。


 女性の方はお嬢様だろうか。奇麗な赤いドレスに金色髪を垂らしている。

 奇麗な顔にサングラス越しに見える、青い瞳。

 まだ子供の様に見える小柄な体系だった。


 もう1人の男性は、執事なのかスーツを着ている。

 黒髪の短髪であり、こちらもサングラスを付けている。

 見た事のないL字型の武器を構えて、貴族に向かい合う。


「これはこれは。2等貴族のお嬢様ではありませんか?」


 2等貴族とは、かなりの上級貴族だ。

 数字が低いほど、貴族としての階級が上がっていく。


「失礼ではありませんか。ちゃんと玄関から入って来てほしいものです」


 この貴族は口ぶりから、お嬢様と同格以上なのだろう。

 それにしても急展開過ぎて、私の理解が追い付かない……。


「ドアあるの? 豪邸だから?」

「ん、建物。建物には全部入口があるから」

「まあ良いわ。その子を離しなさい!」


 お嬢様は大きな武器を構えながら、腐敗貴族に詰め寄った。

 腐敗貴族は私の体に触れながら、ニヤニヤしている。


「これは正当に購入したものです。誰の権利でこんな事を?」


 私を『これ』扱いする。この悪徳貴族め……。


「こんな事して、タダで済むとでも思っているのですか?」

「何ですって?」

「私の手に掛かれば、貴方の御父上などいくらでも、失脚出来るのですよ」


 どうやらこの腐敗貴族は、相当な権力の持ち主のようだ。

 お嬢様に権力を盾にして、下がるように命じる。


「これの所有権は私になる。いかなる理由で、この様な事を?」

「くっ……」


 大きな破裂音と共に、お嬢様の武器から何かが発射された。

 発射されたものは、腐敗貴族の手の甲を貫通した。


「痛ぁい! き、貴様! こんな事して……」


 お嬢様は武器を、腐敗貴族の頭に突きつけた。


「殺せば無問題でしょ?」

「違う問題が発生するわ!」


 再び別方向から、破裂音が聞こえてきた。

 執事と思わしき男性が、武器を発射したのだ。

 腐敗貴族はもう片方の手も、撃ち抜かれた。


「お嬢様に色目を使うな」

「誰がこんな子供に……」


 再びお嬢様の方から破裂音が、聞こえてきた。

 どうやらあの武器は、弾を発射するもののようだ。

 男性貴族は膝まで、貫通された。


「ムカついたから」

! 衛兵! 衛兵早く来い!」

「ハイ。火」


 スーツの男性は、マッチに火をつけた。

 火のついたマッチを、腐敗貴族に投げつける。

 腐敗貴族は頭に火がついて、慌て始めた。


「熱ちち! 私の髪の毛がぁ!」

「安心しろ。1時間後にはアフロになる」


 どんな理屈!? 私は理解不能なまま、執事の人のロープを外された。

 長い事眠らされていた影響か、私は立ち上がる事が出来なかった。


「確保。これより撤退する」


 大きな音が、窓から聞こえてきた。

 2人がカーテンを開けると、空に不思議な物体が飛んでいる。

 頭と尻尾に回転する者が付いた、機龍なのだろうか?

 その物体の一部が空いて、梯子がかかけられて。


「貴様ら……。ここまで私を愚弄して、タダで済むと思うなよ」

「いくら払えば良い?」


 執事が懐をに手を入れながら、腐敗貴族に近づいた。


「金で解決するものかぁ!」


 執事は懐から何かを取り出した。

 それを思いっきり腐敗貴族に叩きつける。


「じゃあ鐘で解決してやろうか?」


 あの小さな懐に、どうやってか大きな鐘が!?

 

「そして『お金様』と、言わんかいボケェ!」


 何処からかお酒を取り出した、執事の男性。

 瓶ごと叩きつけて、腐敗貴族にぶっかける。


「ギャアア! バーボン! バーボンヘッド!」


 アルコールが炎に引火して、体が炎で包まれる腐敗貴族。

 彼は服を脱いで、炎から離れた。


「衛兵! さっさと来い!」


 足音と共に、部屋の中に数名の騎士が入る。

 騎士は槍と剣を構えて、腐敗貴族の前に立った。


「ハハハ! これで貴様らは終わりだ!」

「仕方ありませんね。お嬢様、ちょっと剣を」


 お嬢様は指を鳴らした。すると空中に剣が出現する。

 執事は剣を受け取り、衛兵の前に立ち塞がる。


「我はオリジン家、最強の剣士である! 騎士長と一騎打ちを申し出る!」


 剣を構えて、執事の男性は叫んだ。

 剣を持つ彼の姿は、全く様になっていなかった。


「この私と一騎打ちだと? 面白い」


 騎士長と思わしき男性が、前に出た。

 剣を構えて部下を下がらせる。


「オリジン家の剣の腕前、見せてもらおうか?」

「ああ。こちらが売った喧嘩だ。受けて立つ」


 剣を構えた両者に、緊張感が走っている。

 私はお嬢様に抱きかかえられて、息を呑んだ。


「隙ありぃ!」


 ええ!? 執事は背後で背伸びしていた、兵士に剣を投げつけた!

 油断していた兵士は頭に剣が直撃。その場で倒れた。


「貴様! 卑怯だぞ!」

「背伸びをしていた、アイツが悪い!」


 執事の指パッチンと共に、何故か剣が爆発。

 背後に居た兵士は、皆吹き飛ばされた。

 執事は再びL字型の武器に、持ち帰る。


「早打ち勝負じゃ!」


 執事は騎士長に、容赦のない弾を発射した。

 煙でゴホゴホ言っていた騎士長は、剣を弾かれる。


「貴様ら何処まで、卑怯なんだ!?」

「卑怯? 最高の誉め言葉ですわ!」


 どうしよう……。助けに来てくれたのに、悪人にしか見えない。

 私は戸惑いながら、お嬢様に抱きかかえられた。


「もう大丈夫よ。もう終わるから」


 急に優しい声色になる、お嬢様。

 彼女は私を抱きかかえたまま、機龍に飛び乗った。


「貴様ら、これで終わったと思うなよ……。この襲撃は、貴様の父上に……」


 髪の毛が完全に焦げた、腐敗貴族の負け惜しみ。

 お嬢様は知った事かと言わぬばかりに、空中に武器を作り出した。


「好きな武器を精製できる。私の7つの異能力の1つよ」


 お嬢様はなにやら、先端の尖ったもの8つついた物を召喚した。

 

「リボルバー式ロケットランチャー。その名も、ロケットランチャー8!」

「お嬢様、誰も名前は聞いておりません」


 内部で戦う執事が、冷静にツッコミを入れる。

 それよりこの人は、これをぶち込む気なのだろう?

 執事さんがまだ中で戦っているのだが。


「ケイ、5分後に脱出しなさい!」

「了解しました。2分で片付けます」


 どうやら敵の増援が来たようだ。

 執事の人は内部の兵士と、戦っている。

 お嬢様は執事の人を信じて、巨大兵器を構えていた。

 30秒。1分……。死闘は続いている。


「う……。うぅ……」


 お嬢様も焦っているのか、額に汗を浮かべていた。

 もう4分しか時間がない。私も息を呑んだ。


「はよ倒せぇ!」

「ええ!?」


 お嬢様は引き金を引いて、針の様なものを発射した。

 8発連続で放たれて、それぞれ屋敷の別々の所に当たる。

 どうやら火薬物が詰まっていたようで、次々と爆発を発生させている。

 

「これはミサイルと言うものよ。覚えていきなさい」

「え? はい。いや……」


 執事の人がまだ居たのだが……。

 屋敷は無残にも崩れ去っていた。

 きっとあの執事さんは、あの瓦礫の下に……。


「ふぅ。危なかった。危うく剣が刺さる所だったぜ」

「ええ!? 何でこっち側に!?」


 いつの間にか執事の人は、梯子に掴まっていた。

 

「何でって。僕は瞬間移動出来ますし」


 親指を立てながら、機龍に登っていく執事。

 そこで瓦礫が僅かに動いたのが、見えた。

 悪徳貴族がしぶとく生き残っていたのだ。


「貴様ら私の屋敷を……。父上に言いつけてやるからな!」

「マズい! こうなったら……」


 お嬢様は武器精製で、次のミサイルを装填した。

 そのまま再び8発のミサイルを、発射する。


「証拠隠滅」


 明らかに殺りに行っている!

 お嬢様は躊躇なく、瓦礫すら残さず屋敷を粉砕した。

 さっきまで屋敷が立っていた場所には、もう焼野原しかない。


「これで万事解決ね」

「ええっと……。ありがとうございます……」


 私は頭を下げて、お礼を言った。

 少しやり過ぎな気がするが、この2人が居なければどうなっていたやら……。

 でもやり過ぎはやり過ぎだと思う。

 

「メイ。気にしないで。これからたっぷり返してもらうから」

「え? どうして私の名前を?」


 お嬢様はなにやら、カードの様なものを私に手渡した。

 そこにはニーナ・オリジンと、名前が記載されている。


「え? ええ!?」

「私が貴方の雇い主よ。3日経っても来ないんだもの。心配したわ」


 どうやら私は……。とんでもない所に来てしまった様だ。

 これからこの2人と共に、凄い事に巻き込まれる。

 そんな予感が私の脳裏に、流れていた。

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