結構ワンオペしてたのに「お前の席ねーからwww」と追放されたので悔しいしダンジョン攻略配信で見返してやろうと思う
ぬるめのにこごり
第1話 そんなんってあるか
「私達のパーティー、この四人で十分なんだよね」
「もうお前の席、ねーから」
「は?」
おいおい嘘だろ。だって、正気を疑う発言だと思う、これ。
普通に考えてみろ。俺結構貢献してんだぞ?パーティーの財布を管理してんのは俺だし、誰もやらないからわざわざダンジョンの通行許可取って攻略申請して、ギルドに予約入れて、あとついでに必要な道具買い回ったり、パーティーの活動資金が足りなくなったら時間外労働で工面したりしてやったのは俺だと思う。
あれ?俺大分貢献してない?というかそれでいて普通に生配信の機材のセットして、普通にパーティーの一員として魔法使ってる…あれ?え?めっちゃ俺頑張ってるじゃん?マジ?
馬鹿なの?死ぬの?こいつら?なんで?え、俺がいなくなったらパーティー続けられないと思うんだけど?マジでなんでそんな簡単なことが分からないの?頭大丈夫?
一周回ってギャグか何かかと思えてきた。嘘だろ?
「俺がいなくなったらこのパーティーの多大な損失だと思うんだけど……」
「は?テメェなんか最初っからいてもいなくても同じだよ」
「私もそう思う」
なんでこんな扱いができるの?人として大丈夫?あ、やべ、涙出てきた。
「さっさと行け。手切れ金だ」
そう言ってリーダーは薄めの札束を投げてきた。俺はそれを拾った。やばい泣ける。すごい泣ける。
結構愛着あったのに、というか、俺頑張ったのに、なんで?え、なんで?
安いアパートに帰ってきてからさんざん泣いた。いや、ぶっちゃけ今思ったんだけど、なんで俺あんなパーティーで働いてたんだ?あいつら俺に乗っかって労働搾取してただけでは?なんでそんな奴らのために俺頑張ったんだ?意味わからない。情けないわ悔しいわ悲しいわで。
あいつらが多分悪いのは分かって――いや俺も多分悪いな。だってやりようがあったわけだし。早く言い出しておけばどうにか…どうにか…?
「あー……」
涙がこめかみをつたった。ソファに寝転んで、スマホをいじる。パーティー募集掲示板、と書かれたリンクをタップした。
「どいつもこいつも…女目的ばっかりかよ。このサイトは出会い系か?下半身が脳味噌と直結してんのか?」
画面をスクロールしてもしても、パーティーやバディを求める投稿の記載には「女性限定」「女の子だけ」みたいな記述ばっかり。本当呆れる。とは思っても、別に悪いことしてるわけじゃあないんだよな。
「…?」
一つ、気になる記述があった。
『バディ募集。性別・年齢は問いません。最低限コミュニケーションが取れて、役割をしっかり分担してくれる人を探しています。』
なんとなく、というより、一番最後の文が引っかかった。
「分担…分担ねえ」
たぶん、俺にとって一番ホットな話題。それがきっかけだと思う。
『よろしければ応募しても?』
適当にコメントを打つ。気持ち悪いと思われないだろうか。
暫くスマホを眺めてはページを更新して、を繰り返していた。すると、返信が付いた。案外早かった。
『いいですよ。大丈夫です。じゃあ早速お会いしましょう、日程はいつが空いていますか?私はいつでも大丈夫です』
相手側から予定の提示がなされた。俺は無事無職になったので、いつでもがら空きだ。
『こちらもいつでも大丈夫です。でもなるべく早い方がいいですね。何日後ならお会いできますか?』
『そうですね…場所によります。令士ダンジョン前、または高月ダンジョン前でどうでしょうか?どちらでも明後日にでもお会いできますよ』
『分かりました。では高月ダンジョン前でよろしいでしょうか?』
『はい。大丈夫です』
あっという間に話は進んでいき、気づけば顔も声もプロフィールも知らない誰かと出会うことになってしまっていた。
今日は実に厄日だったが、明後日はどうなるだろう。
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