素敵な言葉たち

黎明れいめいという

言葉がすきだ

静かな夜に終わりを告げる

でたらめに朱い日輪の高揚を

煌々と燃える

銀河団のひかりを

めいっぱいに湛えているから

そのうえ

美しいかも定かでない

終わりが匂うから



氷柱つららという

言葉がすきだ

晩秋の折

北国ではじめてみた氷柱を

よく覚えているから

冷たかった

指の温度に絆されるとぬるぬるすべった

手首をひねれば折れてしまいそうだった

つらら

これがつららか

たしかにつららだ

そう思わされたから



朴訥ぼくとつという

言葉がすきだ

話すのが苦手でも

気にしてないからね

たとえ拙くても

君の話を聞かせてね

そんな受容と肯定を

この二文字は

知っているから

コミュ障という

競合最大手の言葉には

真似することのかなわない

やわらかい色を

しているから



不意に

どうしようもなく

愛おしい言葉に出会うことがある

その度立ち止まり

抱きかかえている大きな辞書に

付箋を添えるのだ

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