ケジメに向けての準備
今日はテスト最終日だ。
あれだけ衣珠季や響にたくさん教えてもらったため手ごたえはあった。
「どうだった都斗?」
「衣珠季が俺に勉強をたくさん教えてくれたおかげで全科目軽く70点は超えそうだ。衣珠季は」
「わ、私は自慢じゃないけどもともと正徳生だったからそれなりに勉強はできるよ」
衣珠季が俺と付き合い始めて変わったところの一つとして自分の転校前の高校である正徳高校のことを話してくれるようになった。
もちろん幼馴染云々のところは話題には出さないが、この様子だともう自分の中で清算したと思う。
「よし、お前ら席につけ。帰りのホームルームを始める」
先生が適当に連絡事項を話す。
「来週は知っての通り月曜日が祝日で休みだ」
ちなみにその月曜日が響と二人で遊ぶ日だ。
「そして火曜日からはテスト返しのため午前中で授業が終わる」
だったら休みにしてくれとは言えない。
「それでは以上で帰りのホームルームを終わりにする」
終わりの挨拶をし、各々が帰る準備をする。
「じゃあ都斗君、私たちも帰ろうか」
「悪い。今日はちょっと先に校門で待っといてくれるか?ちょっと先生に用事があるんだ」
「そっか。それじゃあ仕方ないね。じゃあ昇降口で待ってるね」
「ああ」
衣珠季が教室から去っていく。
当然用があるのは先生じゃない。
俺は目的の人物を見つけ、一緒に屋上に来るよう手招きをする。
屋上に出ると
「それで、私に頼み事って何?」
湖三が開口一番に訊いてきた。
「ああ、ちょっと来週の祝日に衣珠季と二人でどこかで遊んでくれねぇか」
「は?」
湖三がそう反応するのも仕方ない。
「どういうこと?なんで私がアンタの彼氏であるあの転校生と一緒に遊ばなくちゃいけないわけ?」
「...実は響が休学し始めた日に俺に響から電話がかかってきたんだ」
「え、響から」
湖三の表情が変わる。
「内容は来週の祝日の日に二人でどこかに遊びに行かないかということだった」
「ちょっと待って。響だってアンタとあの転校生が付き合っているということを知っているはず」
「俺の予想だと、響は気づいていながらも現実逃避してたんだと思う」
「......」
これに関しては湖三も反論できない。
「響が俺に特別な気持ちを抱いていたということは知ってたんだ。なのに俺はそれに真剣に答えを出すことができなかった。だから月曜日に響と遊ぶことは俺の中のケジメだ」
「...何をする気?」
「俺が響に面と向かって衣珠季と付き合っていると言う」
「......」
「それぐらいしなくちゃ響にあまりにも失礼だからな」
「...どうなっても知らないよ」
「分かってる」
「はぁ~。そこまで本気なら私が手を貸さないわけにはいかないか」
「本当か!?」
「だけどアンタ、絶対に響を選ぶんじゃないよ。多分あの子はその日アンタに告る。その告白に流されて響と付き合い始めるなんてことは許さないよ。アンタはあの転校生を選んだ、その責任は最後まで取れ」
「...ああ、言われなくてもそうする予定だ」
「...そうと決まれば私は帰らせてもらうよ」
「え?いや待て」
「ん?まだ何かあんの?」
「お前、衣珠季とはしたしいのか?」
「...あ、そっか」
流石にほとんど話したことがないクラスメイトに行きあり二人だけで遊びに誘われたら誰だって不振がるだろう。
「今、校門に衣珠季が待っている。一緒に帰って何となくそれっぽい空気を作る必要がある」
「...なんかアンタが言うといやらしい意味に聞こえるんだけど」
失礼な。俺をエロガキとでも思っているのか。
結局、衣珠季と湖三だけで帰らせるのは危険だと判断し、俺も合わせて三人で帰ることにした。
「...なんで都斗と湖三さんが一緒に出てきたの?」
当然問い詰めてくる衣珠季。
「それは、ほら、湖三っていかにも素行が悪そうじゃん?だから俺と一緒に生徒指導室に呼ばれたんだ」
湖三が何か抗議したそうな顔で睨みつけてきたが、うまくかわす。
「と、ところでさ衣珠季」
「うん?」
いきなり下の名前で呼ぶ湖三。
やはり女子同士の子のコミュニケーションの高さは謎だ。
「今度の月曜日に二人でどっか遊びに行かない?」
「え?湖三さんと私が?」
「そうそう。ほら、まだ私たち一回も話したことなかったでしょ?だから親しくなりたいなぁーって」
湖三が俺の方を見る。
あれは助けろというサインなので俺も衣珠季を説得する。
「た、たまにはいいんじゃないか衣珠季。女友達を作っておくと後々学校生活も楽だぞ」
自分でも下手な説得だと理解している。
「私はいいけど、都斗は?」
「そ、そこは女の子だけで楽しむべきだから俺は遠慮しておくよ」
「......」
衣珠季は俺が来ないと言った瞬間顔を曇らせたが
「ま、確かに私も友達は作りたいからさ。いいよ、月曜日どこかで遊ぼっか」
よし。
湖三はあまり乗り気じゃなさそうが、ここまで来たのだから仕方ない。
早速俺はこの瞬間からどう響に俺たちの関係性を切り出すか考え始めていた。
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