俺の想い
「はー、はー、はー」
今俺は授業を抜け出して夜桜を探していた。
学校中は一通り探したが、夜桜の姿はなかった。
「ということは家か?」
ここから夜桜の家に行くには電車に乗らなければならない。
授業を抜け出して電車に乗るという罪悪感を拭い、急いで改札口を通る。
「...まさかとは思うけど」
電車を待っている途中俺は最悪の状況を想像する。
自室で夜桜が...
「いや、これ以上考えるのはやめよう」
ちょうどいいタイミングで電車が来た。
東南駅に向かう途中俺はずっと貧乏ゆすりをしていた。
電車が東南駅に到着すると、急いで改札口を通り夜桜の家に向かった。
前に来たことがあるから道はよく覚えている。
「確かここだな」
夜桜の家まで着き、インターホンを押す。
だが、出てくる気配はない。
そもそも誰かがいる気配もしない。
「夜桜!」
夜桜の名前を叫び、インターホンを連打する。
「クソ!」
だめだ、いくら押しても出てこない。
これは家にいないことが確定しただろう。
「夜桜!夜桜!」
ひたすら叫び続け、周辺を探す。
多分近所の人に危ない人認定されたが、そんなことはどうでもいい。
しばらく走っていると公園が見えた。
公園のブランコに明善高校の制服を着ている女子を見つけた。
「夜桜!夜桜!」
「え?」
夜桜は驚いたように俺の方を向く。
「夜桜!」
俺は夜桜のもとに駆け寄り、気づいたら抱きしめていた。
「ちょ、ちょっと月城君!?」
「夜桜、よかった」
ますます強く抱きしめる。
「ちょっと痛い!」
「あ、悪い」
ようやく俺が凄い力で夜桜を抱きしめることに気づいた。
「...なんで来たの」
「......」
「あなたには響ちゃんがいるでしょ!?」
「......」
「...私みたいな冷酷な女にかまわないでよ」
「...だから」
「...え?」
「だからなんで自分のことを冷酷な女だなんて言うんだ!」
思わず怒鳴ってしまった。
でもこれぐらい強く言わないとこいつには伝わらない!
「冷酷な女とか言って厨二病をこじらせるのはいい加減にやめろ!」
「!ちゅ、厨二病って!」
夜桜が何か抗議したいみたいだがかまわず続ける。
「いいか、何回でも言うぞ!もしお前が本当に冷酷だったら泣いたりなんかしない。お前は今も泣いてるじゃねぇか!」
「な、泣いてなんか」
「今のお前の顔は鼻水と涙でぐちゃぐちゃだ」
「は、鼻水!?」
夜桜が慌てて鼻を隠す。
「そんなだらしない顔を晒せるお前は冷酷なんかじゃない」
「...なんか褒めてるか馬鹿にしてるかわかんないね」
クソ、前みたいにうまく言えない。
「と、とにかくそうやって自分をいつまでも冷たいと決めつけるのはよせ!少しは周りの人間が言うことを信用しろ」
「...信用?」
「ああ、お前は俺がお前のことを捨てたと考えているようだがな」
「す、捨てられたなんて思ってない」
「思ってるから昼休みあんな悲しそうな眼をして出て行ったんだろ?」
「!?」
まぁ俺が実際に見たわけじゃないが。
「いいか、俺と響がそういう関係だという事実は一切ない」
「で、でも今日はあんなイチャイチャして」
「あれは響が勝手にやっていたことだ。俺から響にアプローチなんかしなかっただろう?」
「い、言われてみれば」
「だから俺と響は断じて恋人関係じゃないし、お前を見捨てたりなんかもしてない」
「......」
そう言い切ると長い間夜桜が沈黙する。
「...ごめんなさい。私のはやとちりだった」
「ああ」
「...やっぱり月城君は”あの人”とは違うね」
”あの人”というのは幼馴染のことだろう。
「ねぇ月城君」
「ん?」
「...今日は私の家に泊まっていかない?」
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