ざまぁを果たした美少女が転校してきたが、どうやら過去のことを悔いているようなので励ましたらその子と周りが病んだ
北宮冬馬
裏切りと復讐
異性の幼馴染がいる人なら一回はその幼馴染に対して恋心を抱いたことがあると思う。
私―
長年家族同然の付き合いをしてきた幼馴染の
小さい頃友達が全然いなかった私にタツ君だけは優しく接してくれた。
私がいじめられていた時も幼馴染という理由でいじめから庇ってくれたりもした。
コミュニケーション能力が低い私のために仲の良い女友達を紹介してくれたりもした。
家族や友人関係の相談にも真剣に乗ってくれた。
はっきり言って私はタツ君に依存してたんだと思う。
どこに行ったって何をしたってそばにはいつもタツ君がいてくれる。
タツ君だけはずっと私の味方だと思い込んでいた。
高校受験の時期になって、私は当然タツ君と同じ学校に行こうと決めていた。
だが、その高校は県の中でも比較的レベルが高い方で、誰が見ても私の学力で合格するのはほぼ不可能に近かった。
現に担任の先生に「お前じゃ受からないからレベルを下げろ」と言われた。
でも私は諦めなかった。
タツ君と学校が離れ離れになるなんて考えられなかった。
そんな私の努力を見てタツ君が自分の勉強時間を削ってまで勉強を教えてくれた。
平日は放課後にタツ君の家に行って付きっきりで私の勉強を見てもらっていた。
休日は朝早くに二人で地元の図書館に行き夜になるまで勉強してた。
こんな生活が一年続き、見事二人そろって志望校に合格できた。
合格したときは凄く嬉しかったし、何よりまだタツ君と一緒にいられるという安心感に包まれた。
だが、そんな安心感は入学早々に消し飛んだ。
私もずっと思っていたことだが、タツ君は疑いようもない美少年だ。
高身長でスタイルもよくて顔もいい。
おまけに勉強もできてスポーツ万能ときたら女子グループの人気は凄いだろう。
焦った私は入学した4月の下旬にタツ君に告白した。
「ずっとタツ君のことが好きでした。私と付き合ってください」
よくあるつまらない告白の言葉だが私にはこれぐらいの語彙力しかなかった。
「実は俺もずっと衣珠季のことが好きだったんだ。これからよろしくな」
そう笑顔で言われた時には、もう人生のゴールの8割は達成したと思った。
それから私はますますタツ君に依存するようになった。
タツ君と一緒に登校して一緒に授業中にお喋りをして一緒にお昼休みを過ごして一緒に下校してタツ君の家でイチャイチャする。
そんな生活を6月に入る前まで送っていた。
私とタツ君の間にゆがみが生じたと言えば6月に入ってからだろう。
それまで休日はほぼ毎日デートをしていたのに、タツ君が「用事がある」と言って断ることが多くなった。
最初の方は耐えられたが、それが何日も続くとだんだん不安になってきた。
ある日私が母に頼まれてスーパーで買い物をして帰る途中にタツ君と知らない女子が仲良く肩を組んで歩いていた。
二人の行き先はタツ君の家だった。
私は目の前が真っ暗になった。
家に戻ると二階の自室に飛び込みひたすら泣いて泣いて泣き続けた。
それから何日かは学校を休んだ。
おそらく私はこの休んでいる間にタツ君が心配して家に訪ねてきてくれるんじゃないかと期待をしていた。
だがどれだけ待ってもタツ君は来なかった。
数日後に学校に登校すると、学校の前で見たのはタツ君と同じクラスの女子がが仲良く手をつなぎながら登校している光景だった。
私は怒りで頭が沸騰しそうになり走って二人に追いつく。
その時目に映ったのはあからさまに迷惑そうな顔をしているタツ君と敵意むき出しの目をしていた同じクラスの女子だった。
それを見た瞬間私は怒りよりも冷めた気持ちになっていることに気が付いた。
「...タツ君。なんでその子と登校してるの?いつも私と登校してたのに何で?」
わざと怒っているような口調で喋ったが、気持ち的には冷めている。
「...衣珠季。この際だから言うけどもうお前にはうんざりしてるんだ。小さいころから俺につきまとわりついて、ずっと迷惑してたんだ。前にお前の告白をOKしたのだってホントはちょっとした遊びだったんだ」
その言葉は長年タツ君に依存していた私の存在そのものを否定する言葉だった。
「...ほら、もう行こ」
女子がタツ君の手を引っ張って後者に消えて行く。
私はとりあえず冷めた気持ちのままこのままでは終わらせないと思い二人への復讐を考えた。
方法はすぐに思いついた。
”タツ君に乱暴された挙句浮気されて捨てられた”
という情報を広めることだった。
幸いにもタツ君がたくさん女友達を紹介してくれたおかげで情報は一気に広まった。
情報を流した翌日から私は学校を休んだ。
転校する準備を進めるためだ。
親は私の様子を見ていじめに遭ったのでは心配し、すぐに転校の手続きを進めてくれた。
情報を流してから数日後にタツ君から着信があった。
内容は予想した通りだった。
「おい衣珠季!あの噂はなんだ!お前に暴力をした覚えはないぞ!」
確かに乱暴したというのは真っ赤な嘘だ。ただ私を捨てたという事実は同じなのだから少し誇張をしただけだ。
「黙ってないで何とか言ったらどうだ!」
こんなにかつて恋心を抱いていた幼馴染から怒鳴られているのに私の気持ちは冷める一方だ。
次第に私が無言のことに気づいたのか
「なぁ、浮気したのは悪かった、謝る。だからあの噂はデマだってお前から言ってくれねぇか」
今度は懇願するような口調になった。
このまま電話を切ってやってもよかったが私は最後に何か言ってやりたいと思った。
「タツ君、前にタツ君とあの子が登校しているときに私が後ろから追いついたことあったでしょ?あの時にタツ君が少しでも私に申し訳なさそうな目をしてくれたら我慢できたかもしれないけど今更だよ。
それじゃバイバイ」
そう言って電話を切った。
そのあとは順調にことが進んで、一か月もたたないうちに転校することができた。
結局学校には一度もいかなかったためあの後タツ君たちがどうなったかは分からない。
転校初日、私は今新しい学校の前にいる。
もう誰かを好きになったりなんて絶対しないと思いながら教室まで足を運ぶ。
そして、この後初めて"彼"に出会うのだ。
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