第六章 君は邪神という名の希望に微笑む2

「寝たか……」


 シズナは一通り暴れた後、ベンチで寝ている。一応実体で海浜公園に移動し、私の膝で寝かしている。


「歪だな、お前は」


 罪悪感を薄める為、亡き両親の為にモテたいなど、贅沢なのか真面目なのかと、一人海辺で思考に耽る。

 知っている。知っていたよ、シズナ。だから、ここに来たんだ。


「久しぶりですねぇ。タコ人間」


 声がした方を向くと、地面にピンクの星形のぬいぐるみが立っていた。


「ヒトデか。久しぶりだな」

「ホント、数億年ぶりじゃないんですかぁ?」

「お前に人間の単位は似合わんぞ。私達からすると一星辰だろ」

「君と違って忙しかったんですよぉ。君と違って、ねぇ」

「ご苦労」

「……まぁ、いいですぅ。それよりも、何でその子に肩入れしているんですかぁ?」

「顔だ」

「はぁ~。珍しいですねぇ。君が戦い以外に興味を示すなんてぇ」

「私は欲しいものの為に、戦っていたにすぎないからな」

「結果は私に負けましたけどねぇ~」

「別にいいさ。そのおかげで今があるからな。この星をヒトデに任せて正解だった」

「チッ。ツマンネ」

「用はそれだけか?」

「そんなはずないでしょぉ。一応警告しておこうと思って来たんですぅ」

「警告?」

「来るんですよぉ~。もう一度、神話の時代がぁ~」

「……そうか」

「うふふふ。あなたが目覚めたのは、星の導きですぅ」


 楽しそうに、体をクネクネさせながら、ステップを踏んでいる。


「お前は今どこにいるんだ?」

「秘密ですぅ。それに、もう一人もそろそろ出てきますよぉ?」

「……それはまずいな」

「審判の日はそんなに遠くないですよぉ。人間換算でねぇ」


 ぬいぐるみの向こうから、ニタニタという音が聞こえてきそうだ。


「じゃあ、私はもう帰りますねぇ。……それと最後に」

「なんだ?」

「その子を気に入ってるのは、顔だけじゃありませんよねぇ~」

「……」

「何でしたっけ? ベネートの血……とかでしたっけ? 特殊な血というか細胞なんでしたっけ?」

「……」

「いい加減諦めたらどうですぅ? 『家族』が欲しいなんてぇ~」


 気付いたら、ぬいぐるみを破壊していた。

 わかってるよ。諦めた方がいいなんて。でも、手が届きそうなんだ。だから生きてるんだよ。

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