親愛なる友へ 今日も僕は、鞭に打たれています。
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1:唯一の友
親愛なる、ケイン。
懺悔。
いつもこんな話ばかり聞かせてごめんよ。でも、これは僕がとても酷い王子であった事を忘れずにいる為のモノだから、許してね。
でも、今日の記録はもうさっき書いただろうって?
ケイン。
僕が日に二度も日記を書くのが、そんなに気になるの?じゃあ、教えてあげる。何故かというとね、ついさっき、また鞭で打たれたからだよ。
昼間も受けていたじゃないかって?鞭打ちが一日に一回って決まりは無いんだ。
だから、ちょっと辛くなってまた君に話しかけに来た。
腕や背中が酷く痛いんだ。きっと、今の僕は、とてもじゃないけれど他者に肌を晒す事など出来ない程に、酷く見苦しい状態になっていると思う。
ねぇ、ケイン。
背中が、ヒリヒリするよ。叩かれた所が、とても熱く、服が擦れるだけで全身に稲妻のような衝撃が走るんだ。
とても、いたい。
でも、大丈夫。僕はどんなに痛くとも耐えられるよ。だって、キミが一緒に居てくれるからね。こうして、キミに話しかけるだけで、僕の心はとても軽くなるんだ。不思議だね。キミを一緒に連れて来て正解だった。
それに……。それにね?
こんな酷い痛みを、何年もの間ずっと大切な友達に与えてしまっていたんだ。そう思うと、肌よりも心の方がずっと痛むよ。
僕が不出来な王太子だったせいで「痛い、痛い」と悲鳴を上げる彼に、「ごめんね」と謝る事しか出来ず、最後の最後まで彼を手放してあげる事が出来なかった。その罰がコレだ。
そうだ、ケイン。少しだけキミを通じてお手紙を書かせてね。
え、日記の自分に書いても、彼には届かないぞって?分かってるよ。ケイン、“君”だからこそ伝えられるんだ。さぁ、お手紙を書くよ。
出来損ないの僕の代わりに、長い間痛みを受けてくれた大切な友達へ。
今、僕は開戦状態にある敵国バーグの王宮で、この手記を書いています。まぁ、王宮と言っても、僕が居るのは離宮の物置だから、あんまり王宮に居るって感じはしないんだけどね。
ねぇ、ソッチはどう?戦争は回避できそう?戦争なんかしたらダメだよ。そんな事になったら、キミが怪我をするかもしれないからね。そうしたら、僕はきっと死んだ方がマシというくらい苦しい気持ちになると思うんだ。
キミが怪我をするところを、僕は一生分見たからね。もうたくさんだよ。
あぁ、僕の感じている「痛み」が、キミの感じてきた痛みに、少しでも「報いる」事が出来ればと心から願うばかりです。
……待って、ケイン。
ちょっと外が騒がしい。もしかすると、さっきの鞭打ちじゃ腹の虫が納まらなかったスティーブ殿下が、また僕に鞭を振るいに来たのかも。
ケイン。キミの存在がバレたら、一体何をされるか分からないので今日はここまでにしよう。君が奪われてしまったら、僕はこの敵国バーグで本当に一人ぼっちになってしまう。
あぁ、僕の愛するこの世で唯一の友、ケイン。
とても、あいたい。
ラティ
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