世界救済のすすめ

雑音

1回目 1

もぞりと身動きする。

相変わらず窓の外では蝉が煩く鳴いている。

真っ白なシーツはぐしゃぐしゃで体はじっとりと嫌な汗をかいている。

わずらわしい目眩と頭痛。

気怠さを呑み込んだような気温と湿度に舌打ちをした。

「おはよう、お寝坊さん。よく眠れた?」

隣のベッドと隔てるカーテンがあいて、彼が顔を出した。

何故この状況で上機嫌でいられるのだろう。

「暑い」

「嗚呼、俺が冷房を切ったからだね」

理解不能だ。何故真夏に冷房を切るという結論に行き着いたのだろうか。

面倒だから質問するのはやめた。

緩慢な動作で立ち上がり、部屋を出た。

病的に無機質な白色はどこも同じ。

廊下は冷房が効いていて涼しい。

「こら、一人で部屋を出たら危ないよ」

「何故」

「君が俺でも発見できないような処で倒れたらどうする?」

有り得ない。心配のしすぎだ。

無視して歩き続けた。

後ろから足音と車輪を転がす音が聞こえる。

「相変わらず無関心だね」

歩き続ける。

「この世界には俺達しかいないかもしれないんだよ?」

「どうでもいい」

ナースステーションが、直前まで人がいたように、人々が忽然と消えたように横にある。

『世界救済』、世界に興味のない彼の言いそうなことだ。

肩に置かれた手を振り払う。

「俺もしかして嫌われてる?」

「口を開けるのも耳を使うのも面倒臭いからもうお前は喋るな」

非道いなー、と傷ついたように言う。

「俺は君の唯一の友達だよ?」

「違う」

病棟から出た。

中庭では鮮やかな花が咲き誇っている。

向日葵は夏の花。

「そろそろ真相究明と行こうよ」

「何の」

「俺達は一週間ほど前から病院にいて、ここには僕達以外の人間が誰もいない。でも電気は使える。食べ物もある。それが何故か」


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《病院》

主人公達の暮らす病院。

二人以外の人間は発見されていない

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