メガソーラー山の中

畳01

2XXX年秋

 一人の男がその地域で一番大きいメガソーラー山にメガソーラーババアが出る、という噂を聞き動画やSNSのネタにする為にその山に入った。

 メガソーラー山というのは何百年も前に作られた、山を丸ごと強力な台風でも飛ばない巨大なソーラーパネルで覆ったどこの地域にも地名になる程いくつかある山の事である。

 そのメガソーラー山はその地域の不法なゴミ捨て場のような役割をしているらしく、男が巨大なパネルの下を少し奥へ進むと、ところどころにゴミ山があり得体の知れないゴミ山の中からは人間の白骨が見えていたり拳くらいの大きさのゴキブリやドブネズミが男が来た事にも臆さずのんびりと何かを食べており、秋にも拘わらずパネルの持つ熱で茹だる様な暑さとゴミ山の異臭で男はうんざりした表情で足早に先へと進んだ。


 男は昔、恋人を寝取られそのショックのあまり遺伝子組み換え虹色猫カフェチェーン店の店長の仕事を失い、十何年か業務委託契約の何でも屋と配信者として働いていたが、より安定した収入になりそうな養殖ザリガニの唐揚げ屋の架空店舗ゴーストレストランを起ち上げる為に、手っ取り早くSNS等でバズってまとまった収益を得る為に休日にこうしてネタ探しに勤しんでいた。

 何でも屋というのは元々、業務委託契約のフードデリバリーサービスだったが何十年も前に起こった人手不足につけ込んで色々な業務も請け負うようになったモノである。


 男がメガソーラー山の中を進んで行くとゴミ山と異臭が少なくなっていき、ソーラーパネルの人が住めそうなほど太い柱が等間隔で並んでいる空間に辿り着き男はそこで休憩する事にした。

 男が柱を背に座ってドギついカフェインで爽やかに!がキャッチフレーズのエナジー電子タバコを吸っていると柱の後ろから物音がした。

 男がエナジー電子タバコのカフェインでハイになった人間特有の跳ぶような動きで、柱の後ろを覗くとそこにはボサボサの長髪で痩せて乾いた皮膚をしているボロボロの格好をした男女二人が血走った目でこちらを見ていた。

 男が突然の事に驚いていると血走った目でこちらを見ていた二人の顔が急に狼狽えたような顔になったかと思うと、女が妙に親しげにしわがれた声で男の名を呼びながら近寄って来て「あの時はごめんなさい」とか「助けて」と言ってきた。

 男は近寄って来た女をよく見ると元恋人と同じ場所に同じタトゥーやホクロが入っているのに気づき、そこでようやく男は二人が昔寝取られた恋人と寝取った間男だという事に気が付いた。

 男は昔話の山姥のような外見で中身は昔のままのような女を見て複雑な感情になり、気付けばカフェインでハイになっていたのもあり女を蹴り倒し、間男に何でも屋の警察業務で使う拳銃を取り出し突き付けると、間男は驚いて男から転げる様に逃げだし女もそれを追うように走りだした。

 その様子を呆然と見ていた男は思い出した様にカメラを取り出して写真を撮った後、動画を二人が見えなくなるまで撮り続けた。


 動画を撮り終えた男は踵を返しメガソーラー山から出るまでメガソーラーババアと二人の事を考えていたがメガソーラー山から出ると自分の今後の事を考えはじめていた。

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