第13話 ある能力
「茜、あれは何だ」「葵、あなたもようやく見えるようになったのね。普通の人には見えないものが」「こっちに来る」「怖がらないで。あれは実体の無い霊魂のようなもの。見た目は怖いけど人に危害を加えることはないわ」茜が言う通り、おぞましい姿の男女は葵の身体をすり抜けると何事も無かったように去って行った。
「今、ようやく見えるようになってきたと言ったけど、どういう意味なんだ」
「最初は私の声が聞こえるようになった。姿も見えるようになった。そして、今は霊魂が見えるようになった。次は・・・」「次は何が見えるようになるんだ」「本当に怖しいものよ。それが現れる前に私たちにはやることがある」
「向日葵を助け出すことか」「そのとおり。先を急がないと」葵が向日葵の入院している自衛隊横須賀病院に到着する頃には大雨になり、全身びしょ濡れになっていた。自転車を病院敷地内の駐輪場に停めると葵は受付に向かった。
「すいません。入院している母に面会したいのですが」受付の女性事務員は額にかかる髪の毛から流れ落ちる水滴を見て言った。
「この雨の中、傘もささずに来たの」「急いで来たので傘を持っていないんです」
「これを使いなさい」女性事務員は真っ白なタオルを手渡した。
「まずこの面会用紙に記入して。受付をしておくから、その間にこの廊下の先にある更衣室の乾燥機で服を乾かしなさい。そのままでは風邪をひくわよ」
「葵、急いで。向日葵は4階にいる」茜が囁いた。葵は更衣室に入ると鍵のかかっていないロッカーを開けて回った。サイズの合う服を見つけると濡れた服を脱ぎ捨てた。そして、怪しまれずに病室に入るために白衣を着た。
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