第6話 流れるプール

  私が乗っていると一孝さんが身じろぎをした。


「そろそろ、いいか? 満足したか?」

「ふふん、まだ」


こんな事言ってるとザブザブと波をたてながらミッチがやってきた。


「なあに、いちゃついているのよ。波に飲み込まれたと思って助けに来れば、こんなんだもんなあ」

「ありがとう。私は大丈夫。でも暫くは、このままでいさせて、お願い。お兄ぃの成分を充填しないと」

「なあに、ふざけた抜かしてるのよ。もう」


なんでミッチには悪態をつかれてたんだけど、


「わたしも、その成分欲しいよ」


なんて言ってカンナが私の上に乗ってきたの。


「おうっ」


一孝さんが短くうめき声をあげる。


ちょっと、おもっ、重いよお。


「あうん、ちょっとカンナ。苦しいよ」


私も、うめき声が出てしまう。でも、カンナは降りてくれない。


「私は、美鳥の幸せ成分が欲しいのね。えへ」


尚更に私に抱きついてきてしまう。


「2人ともぉ、風見さんが苦しそうだよ。いい加減にしないとだね」


見かねたミッチがカンナを押して、横にずらして落としてしまう。私も、しがみついたカンナに引きづられて落ちてしまった。

私たちが退いたところで一孝さんは起き上がって、ミッチの後ろに逃げ隠れた。彼女を盾にして、わたしとカンナを覗き見てるの。

わたしってそんなに怖いものに見えるのかしら。


そんな様子を見てたミッチがフッと嘆息して提案してくれる。


「このプールの波って次まで時間あるから、他にも行ってみない? 私は流れるプールに行ってみたいよ」


その話、のったよ。


「いいよ、行ってみようよ。カンナもいいよね」

「そうね、浮き輪にプカプカと流されるのもいいかも」

「決まりね。じゃあ浮き輪借りに行かないと」


波のあるプールのビーチを出ると、横になれるチェアが並んでいる。そこを抜けた先で浮き輪を貸し出している。プール入場料を払うと、バーコードのついたリストバンドをくれる。リーダーで各個人のバーコードを読み取って、後でまとめて払うようになっていてプールにいる間は現金を持たなくていいようになっていの。ミッチとカンナは浮き輪を借りた。でもね、私は借りなかったの。だって泳げないって抱きつくのは一孝さんがいるもん。なんちゃって。そうしながら、私たちは階段を降りる。このアクアリゾートは、なんと3階建になっているのです。1階が流れるプールになっている。建物の構造をぐるりと巡るように作られているからかな、トンネルを潜るみたいで洞窟探検みたいな雰囲気を出しています。2階に波のあるプールと催しものコーナーで3階には、なんとスパまであるんだよ。泳いで、冷えて疲れた体を温泉で癒やす。なかなかですね。一孝さんも温泉が楽しみって言ってます。もちろん私も。流れるプールは幅が4メートルほどある。それが一階をぐるりと取り巻くようにコースが作られているのね。コース自体が薄蒼色になっていて、水中からライトアップもされているせいか、幻想的でもあるの。半円形の階段を降りて水面に浸かっていく。流れは、そんなに早くない。浮き輪に乗ったミッチとカンナには追いついていけた。


「美鳥、水中のウォーキングって良いんだよ。体も浮いているから、膝とか関節に負担かからないし」

「へえー、そうなんだ」


でも彼の次の言葉に、目つきが鋭くなる。


「全身に水圧かかるし、抵抗も多い。カロリーの消費もする。有酸素運動で脂肪の燃焼効率も高いんだ。ダイエットにはもってこいかな」

「えっ」


思わずに聞いてしまう。心臓はドキドキ、呼吸も荒くなる。


「一孝さん、知ってたんですか? 私が………」


最後まで言い切れずに、口を濁してしまう。


「んっ? 何が? よく女の子の間の話題に出るだろ。ダイエットの話題って」

「そうなんですね。気を遣ってもらってありがとうございます」


よかったあ、お腹ぽっかりがバレての話かと思っちゃいました。暴露までするところでした。

「ふぅ」


私は心臓の辺りに手を当てて、ドキドキしている鼓動と過呼吸になろうとする胸を落ち着かせた。


「じゃあ、お言葉に甘えて、歩きますよう」


と言いつつ、ミッチの浮き輪を押していく。流れに任せてだけじゃない。横にスライドさせたり、前に回って流れに逆らって浮き輪を止めたりしたの。


「ちょっと美鳥。私の浮き輪で遊ばないでくれる」


ミッチが抗議してくる。


「ごめんミッチ。私の必須のエクササイズなの、手伝ってほしい」

「いやぁ。私は流れに任せてゆったりとした気分を味わいたかったの」

「ごめんなさい。邪魔しちゃって」


すると


「私ならぁ良いよぉ」


カンナから嬉しい、お誘いが来ました。早速、ミッチの浮き輪から離れてカンナの浮き輪に取り憑く。


ミッチの浮き輪でしたと同じように、スライドさせたりしていた。一孝さんがミッチの浮き輪に付いて、カンナとの浮き輪と重なって通路が狭くなるとかしないように調整してくれた。

そうこうして流れるプールを歩いて、もう時期一周するかと思われたいたとこで………








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