第2話 歩きました。お喋りしました。

 ミッチとカンナと私、3人揃ったので、ここの駅から、2つ先にある大規模商業施設に行くことにしました。


「オーナー、鼎さん。ご馳走様でした。今度は食べにきますね」


 このレストランを待ち合わせ場所させてもらって、コーヒーまでサービスまでしてくれた。感謝しかありません。


「どういたしまして、あいつにもよろしく伝えておいてくれ」

「どういたしまして、意見参考にするね。、例の件もよろしく」


 お二方からにっこりと笑顔で送り出してもらいました。


 お店を出た瞬間、熱波と湿気に纏わりついてきたの。お店に戻ろうかしら。

すると、レストランの看板を見たミッチが、


「この店って、この前からネットで話題になってない?」


  ぎくっ


「三つ子のメイドさんがダンスして宣伝してるって」

「私も見たよ。そのコンテンツ。楽しそうだったねえ」


 駅があるフロアまで行く階段を登っていく。


「美鳥は見てないの? オーナーとかと知り合いみたいだし」


 やっぱりふられてしまった


「うん、見たよ。3人のうち、1人だけダンスずれてんの。'笑'だったよ」


 自虐であったりする。


「あの、緑色のブラウス着てる子でしょ。ずれてたね」


  ぎくぎくっ


「なに、びくついてるのかなあ。美鳥?」

「いえ、あのね」

「ちょっと待って。思い出すと美鳥によく似てなかったぁ?」


   ぎくっぎくっぎくっ、


 ミッチが私の顔を覗き込んで来る。


「ちょっと、なんか近いヨォ」


 私たちは階段を登っている。そんな体勢で見てくると階段踏み外すよ。


「あの画像だと、赤いブラウスの娘、青いブラウスの娘。そして緑の…」


 ミッチがふむふむと顎にL字にした指を当てて、考えてる。

そして、ビシッと私を指さして、


「お前が緑のブラウスの子だよ。み、ど、り」

「はい、私がライムです。…キャ」


 指さされ、宣告を受けたんです。思わず返事してしまった。そして少し仰け反ったのでバランスを崩して、階段 一段踏み外してしまう。


「もう、こんなとこで変なことしないでよ。もう」


 すぐに階段に手をついたんで、転んで下までってことにならなかった。

ミッチとそんな話をしながら、切符を買って改札は通過した。


「へえー、あの娘、ライムっていうんだ。他の娘は?」

「シアンにマゼンタ」

「でっ、青と赤なんだ。キャハッ、インクみたいだねー」


ピンポン。心の中でチャイムが鳴る。


 名付け親のパパもそんなこと言ってましたね。


「あれっ美鳥って三つ子だっけ。お姉さんはいるのよね」

「そう、マゼンタが姉の美華です」

「じゃあ、青は…」


 私は自分の口に指を当て、ミッチの口にも指を当てて、喋るのをやめさせたの。にっこりと笑って、


「世の中には知らない方がいいこともあるのよ」


   コクコク


 ミッチは素直に首肯してくれました。後で聞いたら、殺されるかもって思ったって。失礼しちゃう。

 ホームを上がってすぐに電車が来たので乗り込んでいく。


「私なら、シアンは誰かわかるよ」

「「えっ」」


 横並びの席に3人並んで座ると、さっきまで静かに微笑んでいたカンナが話してくるものだから、余計に驚いてしまう。


「わかるよ。美鳥の処は、何度か行ってるしね」

「教えてってカンナ」


 ミッチがカンナに詰め寄って、問い詰めようとする。

でも、カンナは、'あ'の口を開けて人差し指で押さえてしまった。一度口を閉じてもう一度開ける。


「正解よ。なんでぇ」

「カンナ、なんて言ったの? 教えてぇ」

「ふふっ、言わないでおくわ。謎は謎のままで良いでしょ。ねえ美鳥」

「えー、教えてよー」


 ミッチはカンナに張り付いていくが、カンナはふふっと笑って、相手にしていない。

とうとう、ミッチがカンナの肩を揺さぶり始めた。


『教えて、教えテェー、ねぇねぇ」

「ちよ、ちょっと、ちっ、ちよっ、そんなに…揺らされると」


 このままではーカンナが危ない。仕方なく、


「私のママよ」


「えー」



 そりゃ驚くよねえ。私も初めてシアンを見た時は驚いたんだから。


「確かに、そっくりだと思ってたけどなぁ。ウチの母さんが聞いたら飛んで来るよ。どうやるのって」


 そうこうしてると、電車のアナウンスがあった。次で降りるの。


「今度、美鳥のウチ、いっていい?」

「別にいいけど、このことで聞かないでね」

「なんで」

「ママが調子に乗っちゃう」


 改札を抜けて、大規模ショッピングセンターへ行く渡通路を3人並んで歩いていった。目指すは大規模ショッピングセンターにあるスポーツショップ。特設で水着コーナーを開設してるんだって。ショップに到着すると、

 早速、ネックホルダーのワンピースを着たカラフルな水着マヌキンが、私たちを会場入り口で迎えて来れる。


「これって極端に布地の面積が少なくない?」

「こっちのトルソーのなんて、動いたら外れて見えそう」


 こんなの着る人の気が知れないよぉ。

他のなら、どうだろう。3人で回っていく。


「そうそう、これなら普段着って言ってもいいかも」


「美鳥、スタイルいいんだから、このセパレートで迫ってみたら、どう」

「遠慮しときます」


ぐすん、私の気持ちを察して欲しいよ。




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