第47話 魔法お披露目会

 重大ミッションを課せられた次の日の午後。


「えー、これが前期最後の実技授業だ。今日はそうだな……魔法お披露目会と行こうか」


 そう言ってサラン先生は1人ずつ指名し、魔法をみんなの前でお披露目することになった。

 これまでの授業では基本1人か2人組での授業が多かった。そのせいでイマイチみんなの得意魔法を知らなかった。この機会はかなりありがたい。


「じゃ、まず女子から行こうか。エアリス。初めを頼んだ」


「分かったわ! 私の魔法とくとご覧なさい!」


 トップバッターに指名されたエアリスはグラウンドの中央へと行き、右手を大きく突き上げた。すると……


「うわぁ! すっげぇ!!!」


 エアリスの魔法を見た瞬間トムが叫んだ。俺たちの目の前に拡がったのはエアリスの右手から天空に放たれた大きな火柱だった。

 その火柱はみるみるうちに大きく太くなり、辺りの気温はかなり上昇していた。


「か……かっけぇ……!」


 隣でそう呟くグルド。今は完全に好きとかそういう感情ではなく、まさに尊敬の眼差しであった。


「エアリス。そこまでだ」


「えー! ここからなのに!」


 拗ねた顔を見せるエアリスはため息をつきながら右手をおろし、伸びていた大きな火柱を消滅させた。


 俺はわかっていた。エアリスが優秀であることに。でも……ここまでとは思っていなかった。俺とエアリスには大きな差がある。それも測れないくらいの大きな差だ。


「次、シュナ。行けるか」


「エアリスほど凄いのはできないけど……」


 そう言ってシュナはエアリスと立ち位置を交代し、グラウンドの中央へと向かう。

 そして、シュナはエアリスは違い、両方の掌を下に向けた。


「と……飛んでる!!??」


 シュナが静かに魔法を使った瞬間みんなの目線が上に向く。確か彼女の得意魔法は風だったはずだ。


「さすがシュナね!」


「エアリス程じゃないでしょ……」


 謙虚なシュナとエアリスの会話を聞く。そして会話しながらもビュンビュン滑空するシュナを目で追うので精一杯だった。


 恐らく一定間隔で風魔法を起こし、その風圧で空を飛んでいるのだろう。しかし、これまた凄いのが魔法の威力だ。ただただ強く風を起こしてるわけじゃない。むしろ弱いと思うくらいだ。その繊細さが細かい移動を可能にしているのだろう。


「ありがとうシュナ。そこまでだ」


「はい。先生」


 そう言ってシュナは俺の目の前に着地した。


「シュナ……いつの間にそんなこと……」


「へへへ……凄かった?」


「凄かったよ!! てか凄いで表すのがもったいないくらいだよ!」


「私は魔法を強く出そうとすると上手く調節できなくて暴発しちゃうから先ずは弱めから練習しようと思ったら……なんか飛べた!」


 あはは……こりゃ参ったな。シュナとも差が開いちまったぁ……トホホ。


「次、ラミリエル。行けるか」


「はい。わたくしは本当に大したことないですけどもやってみせますわ」


 そう言ったラミリエルさんは俺たちの目の前で魔法を披露し始めた。俺は彼女の得意魔法を知らなかった。なんだろう……気になる気になる……うわっ!


「眩しっ!」


 ラミリエルさんが伸ばした手の先から目も開けられない程の光が放たれた。

 これが……ラミリエルさんの魔法……!


わたくしはまだこれくらいしか使えませんわ。後はちょっとした光線のようなものを出せるくらいですわ」


「光線!? かっけぇ〜!!」


「トム! 静かにしてくれ! 集中できないだろう!」


「みんなの魔法見るのに集中する必要ないだろ! ヒュームもまだまだ硬ぇなぁ」


 ヒュームの肩に手を絡めるトム。それを見て俺とグルドが笑う。


「よし。じゃ次は男子。グルド。行けるか」


「あぁ任せろよ」


 グルドは立ち上がりエアリスやシュナと同じようにグラウンドの中央へと向かった。

 グルドの得意魔法は爆発だけど……何を見せてくれるんだろう。楽しみだ。


「シュナはこうやってやってたよな……」


 何かボソボソ言いながらグルドは両方の掌を下に向けた。まさか……!


 その瞬間、ボンっ、と大きな音と共にグルドは空中へと吹き飛んだ。そして、その高さはシュナの飛んでいた高さを超えていた。


 ……やっぱりすげぇ! とんでもないパワーだ。グルドの魔力量あってのこの芸当だ。……? まだ何かやる顔してるけど……


 空にあがりきったグルドは落下しながら両腕を広げていた。そして彼は……回った。両手から細かい爆発を起こし続け、まるで花火が回転しているかのようにその爆発は俺たちを魅了した。


「す……凄い……」


 チラッとエアリスの方向を向く。うんうん、反応バッチリ凄い頂きました。良かったなグルドよ。


 ある程度高さも落ち着き、爆発も止まった。周りからは拍手が鳴り響く。自然と俺も拍手をしていた。……が、あれ? ちょっと待てよ? ……ん? グルドのやつ……まだ回ってない!?


「う、うわぁぁあ! た、助けてくれ! せ、先生ーーーー!!」


 ものすごいスピードで回りながら落下するグルドから情けない声が響く。そして、外野からは笑い声が上がった。


「はぁ……全く。後先考えて魔法は使うように」


 そう言ってグルドが地面にぶつかる直前、サラン先生は右手を伸ばし魔法を使った。


「あ、ありがとうございます……お、おぇぇ……」


 回りすぎて酔ったグルドは地面に突っ伏した。グルドここでリタイア。はぁ……持ったいねぇよ……!


「な、情けないわね……」


「あはは……でも魔法凄かったよね」


 女子からの哀れみの声が聞こえる。


「せっかくだからここで俺の得意魔法を少し教えとくとするか。俺の得意魔法は重力の操作だ」


「重力の……操作?」


「そうだ。ま、得意と言っても持って3秒ほどしか操作出来ない。とんでもなく戦闘には向いてない魔法だな。よし、次はじゃあ……ヒューム。よろしく」


 ちょいちょい早いって! とも思ったがなんかみんなもう切りかえていた。重力を操作する。一見とても強くてかっこいい魔法だ。でも確かに時間制限があるとなればそうでも無いのかもしれない。


 そしてもうひとつ。そんな魔法が得意魔法である先生は……只者では無い。一応は冒険者を目指すこの魔法科の先生だ。戦闘向きでない魔法なのにここの先生になるなんて……生い立ちが気になりすぎる! 強さも知りたすぎる!


 そんな気持ちに駆られているとヒュームの魔法発表はもう終わってしまっていた。大量の岩が降り注いでいたらしい。


「次、バッド。頼んだ」


「は、はい!」


 立ち上がり歩き始めた。でもどうしよう。俺の魔法は目に見えるわけでもパッと見でかっこいいともなれない。


 グルドに吹き飛ばされて以来、少しずつ魔法を使うコツを掴めていた。俺の得意魔法は波動だ。目に見えない波動を生み出し、破裂させる。

 俺はまだ顔の大きさほどのものしか作れないが、思ったより威力は高い。それをみんなに伝えるためには……


「ヒューム。俺の目の前に大きな岩を作ってくれないか? 俺の番が終わるまでは消さないでおいてくれ」


「あぁ。分かった」


 普段ペアを組んでいるヒュームに頼み、目の前に俺の倍くらいはあるだろう岩を作り出した。


 その岩に掌をくっつける。そして、身体の中にある魔力を手に集中させた。

 ……はぁぁぁぁあ!!!


 バギっ!!!


「あ……あれ?」


 その瞬間、岩は粉々に吹き飛ぶ予定だったのだが……ヒビが入っただけだった。

 くそぉ……失敗だ……前は上手くいったんだけどなぁ。やっぱ魔法はまだまだだ。


「ヒューム……消していいぞ……」


 恥ずかしくて顔もあげられない。トホホ……

 皆凄いのに俺はこんな岩ひとつ吹き飛ばせないなんて……


「す……すっげぇよバッド!!!」


 とぼとぼ歩く俺にそう言ってくれたのはトムだった。彼の顔を見る。哀れみでもお世辞でもなく、彼は本気だった。


「あ、ありがとね。最後はトムだね」


「おう! 任せとけ!」


 きっとこれから先、このトムの性格には何度も助けられるだろう。そんな気がした。

 そして、最後のお披露目はそのトムだ。


「皆……見とけよ俺の魔法!」


 そう言い放ってトムが両手から出したのは……


「なんだよそれトム! 噴水かよ!!」


「おいグルド! お前はいつも俺とペア組んでんだから知ってただろ!」


 水を生み出し操る魔法か。なんだか熱いトムらしくない魔法だな。いや、これはこれでなんか似合ってるな。


「ちなみに最近は温度調節もできるようになったんだぜ! 熱湯も生み出せる! 熱い俺にピッタリだ!」


 そんなこんなで前期最後の実技の授業は幕を閉じた。そして、俺のミッションも進んでいく事となる。


──────


あとがき

こちらの作品をここまで読んで頂きありがとうございます!

この度カクヨムコンへの参加のためにこちらの作品を再投稿しております!

https://kakuyomu.jp/works/16817330667797734138

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