第24話 ゴスイ魔法学校 魔法科 入学試験

 これは受験日の朝。


 お弁当をリュックにしまい、玄関へと向かった。


「じゃあ……行ってきます!」


「バッド。頑張れよ」


「バッド! これ……!」


 お母さんが届けてくれたのは手作りのお守りであった。

 そのお守りを受け取り、ポケットにしまった。


「……ありがとう。お母さん、お父さん」


 2度目の受験と言っても、今生きてる世界では初受験だ。頑張らなきゃ。お母さんたちのためにも。


 この数ヶ月間。かなり気を使わせ、心配かけてしまっていたと思う。

 だって、ほぼ勉強しないで毎日修行に行っていたのだから。


 大怪我して、命の危険にさらされて。そんな事ばっかしても、両親は俺の目標にケチなんて付けなかった。


 魔法使いになる。その目標は変わっていない。あの日、あの食卓で宣言したことはーー


「えー、只今よりゴスイ魔法学校、魔法科。入学試験を始める」


 俺とシュナは指定された教室へと入り、自分の受験番号の席へと座った。


 シュナは……2個隣の教室か。大丈夫かなぁ……


「1つ目の試験は筆記試験。チャイムがなってから時間は1時間だ。それまで静かに待つように」


 ……よし。とりあえず、俺が落ちたら元も子もない。頑張ろう。


 キーンコーンカーンコーン


「初め!」


 その合図と同時に、受験者は配られたプリントを開き、問題を解き始めた。

 俺も冊子を開く。


 分かる……! 分かるぞ! 全く同じだ!


 ゴスイの入試問題は、一度受けた時の問題と全く同じ問題であった。


 これならシュナも……!


 俺は30分足らずで全ての問題を解き終わり、シュナの心配を続けた。


 キーンコーンカーンコーン


「そこまで! 回収が終わり次第お昼休憩とする。キャンパス内であればどこで食べても良いが、あまり悪さをしないように」


 解答用紙が回収され、昼休憩の時間となった。

 シュナと合流し、外にある公園のベンチで昼を食べることにした。


「……解けたか?」


 正直、この質問をするかかなり迷った。なぜなら、シュナと合流してから彼女は一言も話さず、暗い表情をしていたからだ。


 ……もしかしてやばい? しっかり対策もしたし、彼女も力は付いていたはずだ。

 でも、やっぱり緊張して……


「バッド……」


「……」


 俺は息をのみ、彼女の返答を待った。


「……行けた」


「はえ?」


「バッドのおかげでめちゃくちゃ解けたよ!」


 彼女の表情はさっきとは打って変わって、とても明るい顔つきに変わった。


「良かった……」


 大きくため息をつき、安堵する俺にシュナは顔を近付け、「びっくりした?」と、目の前で言い放った。


 シュナもこんな事するようになったなんて……お兄ちゃん嬉しいのか悲しいのかわからない!あ


「そりゃびっくりするよ! あんな暗い顔してたら……でも、良かった。午後はあんまり緊張することも無いからな」


「うん!」


 こうして、俺とシュナはご飯を食べ、午後の試験へと向かった。


「2つ目の試験は実技だ。この試験は剣士科の併願をする者を対象としているが、原則皆受けてもらう」


 会場には大きなアスレチックのようなものが準備され、所々に魔法で仕掛けがある。


 その仕掛けを上手く避けながらゴールを目指すものだ。もちろん、魔法は禁止。

 コースアウトしてしまったらそこで試験終了。まぁ、運動神経を求める入試って訳だ。


 早ければ早いほど評価は高いし、コースアウトしてしまえば評価は低い。


「次、番号0203」


「はい!」


 そして番が回ってくる。別室から会場へと向かい、試験が始まった。


 ……俺これめっちゃ苦手だったんだよなぁ。

 でも、今なら行ける!


 アスレチックへと走り出した。

 魔法を使うのはルール違反。でも、これなら……!


 俺は足に魔力を集めた。この2ヶ月で得た力だ。

 以前の俺は身体中に魔力を流すことしか出来なかった。


 全身に流し、一部に集めることは出来たが、足だけや手だけと言ったことは出来なかった。


 しかし、今ならできる。俺は剣に魔力を流すセンスはなかった。

 でも、身体に流すことに関してはセンスがあったらしい。


 ストローグさん……ありがとう!


 アスレチックの岩場をぴょんぴょんと進んで行き、魔法トラップを置き去りにする位のスピードで攻略して行った。


 これが出来るのも一度やってるからな。経験って素晴らしいな。


 俺は難なくゴールまで辿り着き、試験を終えた。

 そしてシュナ。彼女は運動神経は悪くは無い。むしろ女の子の中では良い方だ。


 男子と女子で会場は違うが、きっと乗り越えているだろう。


 次がラスト。全ての受験者が2つ目の試験を終えると、すぐに場所を移動し、魔力試験が始まった。


「はい、次。0203」


「お願いします」


 俺は試験官の前に置いてある丸い石を触った。

 身体から魔力が動き出す感じがする。


 前はこんなこと感じなかったよな……魔力を使うようになったから、多少は感じれるようになったのだろうか。


 そんな事考えていると、試験官から「も、もういいぞ」と、急かしたような声で言われ、手を離した。


 前もこんなに急かされたっけ? まぁ……いいか。


 全ての試験が終わり、門の前で待ち合わせをしたシュナと合流をした。


「お疲れ様、シュナ」


「うん! お疲れ様、バッド」


 2人で歩き出し、シュナを村まで送って行くことにした。シュナから聞いた話によると、午後の試験も手応えありと言っていた。


 きっと、大丈夫かな。彼女の努力はきっと無駄にはならない。


 合否は1週間後。手紙が届く。


「じゃあ、1週間後、また」


「うん。またね」


 俺はストローグさんに挨拶だけし、家へと向かい歩き出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る