それでも想うから
鈴乱
第1話
なんとなく、分かっていた。
本当は、始めから分かっていたのかもしれない。
わかっていながら、見ないふりをしていたのかも。
自分が、そうされたから、こうするのが正しいんだって。
どこか違和感を覚えながら、その違和感を見ないふりしていた。
『そう』されたって、私はちっとも嬉しくなんてなかった。
むしろ窮屈で、寄るべなく、どんどん自分の世界が狭くなっていくように感じていた。
私は『そう』されることが、嫌だったはずだ。
それなのに、いつの間にか、自分の大事な人に『そう』してしまっていた。
あまりに大事で、盲目的になって、他の人が目に入らなかった。他者がかけてくれる言葉、忠告、耳に痛い言葉……それら全てを受け入れることが出来ず、足元が見えなくなった。
足元が見えないままに道を間違えていながら、間違えていることにすら気づかない。
あぁ、なんて愚かだったのか。
気づいて、呆然とし、立ち尽くす。
『自分は何をしてしまったのか』、と。
ショックと罪悪感と無力感が一気に襲う。
うなだれ、それらにされるがままに痛ぶられる。
それでも。
その痛みが去った後、顔を上げれば、そこには無数の光が見える。
光が、ある。
今までは「光」とも気づかなかっただろう。目が見えなかったから。
それでも、そこにあるのは、確かに光だ。光、なんだ。
光ではなく、乱暴な何かだと思っていた。
でもそれは、目を開けば確かに光だった。希望の、未来の、光だった。
少しばかり不器用で、荒々しくて、それでも、大切なものを守るために必死でそこに在った、光だった。逃げずに立ち向かう、強くてたくましい、光、だったんだ。
……キレイだった。とっても、キレイだった。
そして、きっと、自分の中にも、それのカケラが宿ってる。
気づかないだけ。気づけないだけ。
誰の心にも、必ずある。揺るがない、限りない、
何があろうと、輝きを放ち続ける、大切なものが。
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